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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0245.開店日のお知らせ

「失礼致します。ご昼食をお持ち致しました」


 メイド長さんが来たー! 空気に清涼感が出ましたよぉ。ありがたや、ありがたや……。


「ヒョウキ様、皆様のご昼食もご用意致しますか?」

「ああ、頼む。それと、バナナをくれ」

「デザートはバナナがよろしいのですか?」

「あ、いや、俺が間違ってカハルのバナナを食べて――」

「ヒョウキ様のご昼食は抜きですね。了解致しました」


 黙って聞いていたメイド長さんが片眉をピクッと上げると、冷たい声でヒョウキ様の言葉に被せる。


「えっ、ちょ、なんでだよ!」


「幼子の大事なご飯を取るだなんて、見損ないました。夜も抜きましょう。それがいいですね」


「わざとじゃないんだぞ? ご飯くれよ~」


 騒ぐヒョウキ様からカハルちゃんを取り上げたメイド長さんが、聞こえない素振りでスタスタと歩き、他のメイドさん達に指示を出している。


「すぐにバナナを用意しますからね」

「うんっ。りりーちゃん、しゅきー」

「まぁ、嬉しい。あんな酷い方とは離れていましょうね」


 ペタッと抱き付いたカハルちゃんを優しい顔で見ている。


「うぉー、かはるー、許してくれよー」


 こっちは、そろそろ本気で泣きそうだ。ヴァンちゃん、地味に足をゲシゲシ蹴るのは止めてあげて。


「そろそろ許してやるか? カハル」


 ダーク様がカハルちゃんの顔を覗き込み尋ねる。


「むー、しょうがにゃいから、りりーちゃんにめんじて、ゆるちてあげるのぉ」

「いやったーーー!」


 歓喜してバンザイしている。ヴァンちゃん、細めた目で見ないであげて。


「カハル、優し過ぎだよ。僕なら全て毟り取っても許してあげないよ」


 ひぃーっ、と僕とヒョウキ様が内心で悲鳴を上げ、思わず自分の頭をガードする。


「何でニコまで頭をガードしているんだ? シンはお前に酷い事はしないぞ」

「セイさん、反射ですよ!」


 足に抱き付いて頭をグリグリと押し付ける。あ~、怖かったよぉ。苦笑したセイさんに抱っこして貰いながら席に着く。


 その後は何とか和やかに昼食を終える事が出来た。ビバ、平和!


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「支配人さん、居まキュか?」

「はい、すぐに呼んで参ります」


 少し待つとユタさんがすぐに来てくれた。


「クマ様、いらっしゃいませ。あちらのお部屋へどうぞ」


 この前と同じ部屋に通される。


「今日はお知らせに来ましたキュ。十月十五日に開店する事になりましたキュ。それと、これを貼らせて下さいキュ」


「おや、とうとう開店ですか。――これは可愛らしいチラシですね。押し花でしょうか?」


「そうなのキュ。押し花の商品も置くので見に来て下さいキュ」


「ええ、是非伺います。この前は大変でしたね。ですが、すぐに犯人が捕まって安心致しました。あの後は大丈夫でしたか?」


「モキュ。心配してくれてありがとうキュ。皆がまた棚を作ってくれたのでキュ。この後、新しいオーニングテントも頼みに行きまキュし、ビャッコちゃんという頼もしい店員さんも来てくれたのキュ」


「よろしくお願いします」


 頼りになりそうなビャッコちゃんに安心したのか、良かったですと大きく頷いている。


「うちの行員たちも心配していたのですが、クマ様の明るいお顔を拝見する事が出来て一安心です。話は変わりますが、釣銭は何時頃――」


 お店の細かい話になったので、出して貰ったクッキーを齧る。はぁ、今日もおいしいですな。はむはむはむ……。


「では、そのように手配致します。――ははは、お気に召しましたか?」


 おっと、僕ですか⁉ 慌てて飲み込んで返事をする。


「――ごっくし。とってもおいしいです。この前、クマちゃんも買ってきてくれたんですよ」


「そうでしたか。他の品もおいしい物ばかりなのですよ。リンゴジャムをサンドしたクッキーもお薦めですよ」


「買って帰るか?」

「わーい! お願いします! あっ、お小遣いは寄付しちゃったんだった……」

「俺が買ってやる。家への土産だしな」


 セイさん、良い人だ~。指を組んで見つめていると、気まずげに目を逸らされる。本当、恥ずかしがり屋さんだな~。


「ははは、仲が良いですね。そうだ、お待ち下さいね。割引券を貰ったんですよ」


 上着のポケットから取り出してくれる。


「一番大きな箱の割引券だったので、なかなか使う機会が無かったのですよ。よかったら、お使い下さい」


「悪いな、有り難く使わせて貰う」


 クマグマちゃん達も居るから大所帯だもんね。お茶を飲み干して席を立つ。


「今日はありがとうございました。また、いつでもいらしてくださいね」

「ありがとでキュ。お店でお待ちしてまキュ」

「はい。必ず伺いますよ」


 ぺこぺこと頭を下げ合い銀行を出る。無事にクッキーの大箱も手に入れ、次々と中央通りの店や知り合いに挨拶をしてチラシを配る。どの人達も好意的で安堵する。クマちゃんの悲しそうな顔はもう見たくないもんね。


ヴァンちゃんも静かに怒ってます。ヒョウキは気付かないふりをしていますが、確実にダメージを受けてます。

ユタさんは常連さんなので割引券を貰ってました。大箱はさすがに体に悪いな、でも、折角あるんだしで揺れていたので、丁度良かった感じです。


次話は、宿屋の女将さんに開店日をお知らせします。


お読み頂きありがとうございました。

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