表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
245/390

0244.ヒョウキ、命拾いしたね

「あっ、ダーク様、おはようございます」

「おはよう。クマグマ達はシンが連れて行ったのか?」

「はい。みんな張り切ってましたよ」

「そうか」


 微笑んで僕を撫でてくれるダーク様にヒョウキ様が声を掛ける。


「給料はダークの自腹だろ?」


「全部ではないがな。インフィオラータの予算からも出すし、城の者達に話したら早速、募金箱を設置していた」


「ふーん。じゃあ、俺も募金するわ。――ほい」

「では、有り難く貰っておこう」

「あ、俺も出す! こういう時って幾らぐらいがいいんだ?」


「お気持ちでいいのですよ。ホノオ様が気持ちよくお渡し出来る金額が一番だと思います。私もお願いします」


「ミナモ、すまんな」


 ホノオ様はご自分の財布を覗き込んで、「う~」と悩んでいる。僕達と同じでお小遣いが少ないのかな?


「いつまでグダグダしてんだよ。全部渡しちゃえばいいだろ」

「ああ、それいい、――な訳あるかっ!」


 ノリツッコミですか? ヒョウキ様がなんでこんなに構うのか分かった気がする。


「親父に小遣い減らされたんだよ。お前が王なんだからしっかり稼げってさ~」


「いや、未だに貰えている事が凄いからな。お前もいい加減、政務頑張れよ。親父さん、病気なんだから」


 ヒョウキ様が珍しく真面目な顔で言うと、胸にグサッと刺さったのか、ホノオ様が泣きそうな顔になっている。


「おはよう。ん? ホノオ、どうしたの?」

「正論にぐうの音も出ない……」


 シン様が苦笑してホノオ様の頭をポンポンと撫でている。ヴァンちゃんはその様子を見ながら、自分のお財布から五百圓を取り出してダーク様に渡す。一週間分のお小遣いだ。


「ダーク様、お願いします。――ミナモ様、配達行って来ます」

「はい、お願いしますね」


 僕も慌てて五百圓を渡し、書類の準備をする。


「ホノオ、見たか? これは、あいつらの一週間分の小遣いだ。躊躇いもなく俺に渡しただろう? お前はどうする?」


「……よく考えてからにする」


「そうするといい。その金は国民が一生懸命働いて、親父さんが必死に国を治めて得た成果だ。重さをよく感じろ」


 小さく頷いたホノオ様をヒョウキ様が少し厳しい目で見ている。統治者としてのホノオ様はまだまだ認められていないのだろう。


 それを横目に見つつ、最後にカハルちゃんをナデナデしてから、ミナモ様に小さな声で「行って来ます」を伝える。微笑んで頷いてくれたミナモ様に見送られながら書類配達に向かった。



 お昼に戻って来ると、カハルちゃんがヒョウキ様の背中で元気にバタバタしている。


「ちょ、カハル、元気良すぎ! いた、いてっ」

「ひょうきのばかー!」

「いたっ、悪かったって! 料理長に持って来て貰うからさ、な?」


 ミナモ様につーっと近寄って小声で尋ねる。


「どうしたんですか?」


「ヒョウキ様がカハルさんのお昼のバナナを間違って食べてしまったみたいで……」


「あちゃ~」

「えっ、ヴァンちゃん⁉」


 ヴァンちゃんがいつの間にか帰って来て一緒に聞いている。


「集中しながら適当に手を伸ばしてお菓子を食べるので、気を配っていたのですが、今日は失敗してしまいましたね」


 カハルちゃんが嬉しそうに手に持って寝ていたので、そっと取って見える位置に置いてあげたらしい。それをヒョウキ様が無意識に食べてしまったと。


「いてっ、髪を引っ張るな!」

「きーっ!」

「よし、カハル頑張れ。ヒョウキ、はげろ」

「誰だ、カハルを励ました奴⁉」


 ダーク様がニヤニヤしながら見ている。という事は神様ご降臨⁉


「――ヒョウキ、何をしたのかな?」

「ひぃっ! 何でこんなに早く帰って来てんだよ⁉」

「終わったからに決まっているじゃない。カハル、ブチっと抜いちゃっていいよ」


 良い笑顔で酷い事を言っている。カハルちゃんがやらなかったら、確実にシン様がやる気だ。


「うんしょー」


 束にして握ったカハルちゃんが引っ張るが、抜く程の力は無いらしい。束だと痛くないのかヒョウキ様も様子を窺っている。ほっとしていると、業を煮やしたシン様が歩き始める。ギョッとして慌てて足に抱き付き、円形脱毛は悲しすぎるとフルフル首を振ると、「でもね、あいつが」と目で訴えられる。


「ヴァンちゃ~ん、ヘルプ~」

「よし、任せろ」


 もう片方の足にヴァンちゃんが抱き付き、シン様をじっと見つめる。


「はぁ~、分かったよ。ヒョウキ、命拾いしたね」


 えっ、髪じゃなくて命を奪う気だったの⁉ 危なかった……。


「ニコ、冗談だからな」


 額の汗を拭う仕草をしていると、セイさんが僕の頭を撫でながら教えてくれる。本気にしか聞こえなかったですよ?


皆で募金です。クマグマちゃんも受け取らない訳にはいきませんね~。その分、準備を頑張って貰いましょう。

髪の毛なんてレベルではありませんでした。丸ごと消滅させる気満々なシンです。あ、冗談ですよ。1本は確実に抜こうと思ってましたけど(笑)。


次話は、ヒョウキがメイド長さんに冷たくされます。


お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ