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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0243.カリポリ

「そんな事を言うんだ? シュウマイを没収するよ?」

「ケチくさい事を言うな。むしろ足りないから、もう少しくれ」


 ダーク様のお皿から、クマグマちゃん達が食べている。凄いな、もう仲良しになったのか。


 口ではあれこれ言いつつ、シン様が沢山お皿に置いてあげている。じゃれていただけかと安心してご飯を食べていると、ヴァンちゃんが何かを探している。


「お醤油?」

「違う。沢庵ない……」

「ごめんね、ヴァンちゃん。出すのを忘れていたよ。すぐに持ってくるからね」


 ヴァンちゃんの頭を撫でて立ち上がったシン様が、大きな器で持って来てくれた。


「はい、お食べ」

「ありがとうございます」


 ちびっと齧ったヴァンちゃんが、ニンマリしてからご飯を頬張っている。その嬉しそうな姿につられたのか、クマグマちゃん達が次々と手を伸ばす。


 カリカリ、ポリポリと良い音がそこら中からする。百一人の齧る音に、何事かとカハルちゃんが起き上がる。


「かりぽりなのぉ」

「ねぇ。みんなお漬物が好きだよね」


 気に入ったのか、クマグマちゃん達の食べる勢いが止まらない。新たな沢庵好きが此処に誕生してしまったようだ。


「この勢いだと、一本すぐに食べ終わっちゃうね。足りるかな?」


 シン様が呟いて物置の方を見ている。在庫が無くなってしまったら、ヴァンちゃんが泣いてしまいそうだ。シン様もそう思ったのか、「しばらくは違うお漬物にしよう」と頷いている。これで暫くは持ちそうかな?



「クマの元気な顔も見られたから帰るとするか。クマグマ達は、これから暫く頼むな」


「クマちゃん、クマグマちゃん、何かあったら言ってね。いつでも助けに来るから」


 タラシなお二人が帰ろうとすると、クマグマちゃん達が次々と足に抱き付く。


「帰っちゃ駄目だってさ。どうする?」


 シン様が面白そうにしている。


「どうすると言われてもな。連れて帰ってもいいのか?」

「お城に来る?」


 その言葉に、リーダー達が慌てて引き剥がしている。


「ふふっ。二人共、じゃあね」

「ああ。じゃあな」

「またね、皆」


 ダーク様がモモ様を送って行くようだ。背を向けたモモ様に、シン様が言葉を投げる。


「モモはもう一つ嘘を吐いているでしょう?」


 少し目を瞠ったモモ様が綺麗な笑みを浮かべて、手を振って帰って行く。完全に姿が消えた所で聞いてみる。


「嘘って何ですか?」


「う~ん、ニコちゃんならいいかな? あの一族は確かに人間の感情を感じ取る事が得意なのだと思うよ。でもね、それを増幅させて映像として見る事が出来るのはモモだけだと思うよ」


「何で隠したんでしょうか? 特別な能力だからですかね?」


「嫌われるのを恐れて無意識に発言を変えたのだろうね。それだけ、ニコちゃん達を大事に想っているんだと思うよ。自覚はあまり無いのかもしれないけどね」


 それに気付くシン様は、人の事を全て見通せてしまうのだろうか? だとしたら、モモ様と同じように辛いんじゃ……。


「シン様、しゃがんで下さい」

「どうしたの?」


 怪訝そうにしながらも膝を折ってくれたシン様の頭を、気持ちを込めて両手で撫でる。どうか、この優しい人が少しでも救われますように……。


「――全く、この子は……」


 呟いたシン様にぎゅーっと抱き締められる。怒ってはいないよね? ちょっとドキドキしてしまう。


「……ありがとう、ニコちゃん」


 良かった、怒っていない。大胆な事をしてしまったと、今更ながらにワタワタしてしまう。


「え、えへ。つい、ですね、こう、やってしまいまして……」

「ふふふ。頭を撫でられるなんて久し振りだよ。カハル以外に、そんな事をする人は、そうそう居ないからね」


 おぅ、大事だ。秘儀! 笑って誤魔化し!


「えへへ、へへ……(汗)」

「ふふふ」


 ヴァンちゃんが訝し気な顔で来てくれるまで、僕の乾いた笑いが夜空に吸い込まれていった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 早起きななクマちゃんは、もうチラシ作りをしている。今後の予定を聞いておこう。


「――ふんふん。じゃあ、開店は十月半ばですか?」

「そうキュ。これから皆にお知らせするのキュ。今日は宣伝のチラシ作りをクマグマちゃん達とビャッコちゃんと一緒に頑張るのキュ」


 クマグマちゃん達がムキッと力こぶを作る仕草をしている。……残念ながら、出ていないけど。あれ? と自分の腕を見ているクマグマちゃん達をシン様が良い笑顔で見ている。


「じゃあ、明日はチラシを配りに行きますか?」

「そうでキュね。誰か一緒に行って貰えまキュか?」


 セイさんがその前に、と質問している。


「ビャッコは戦う事が出来るのか?」

「そうですね。一般の兵士ぐらいの強さの方なら倒せます」

「そうか……。シンが行くか?」

「セイが行きたいなら行っておいで。気になって魔物退治で怪我でもしたら大変だからね」


 安心した様に頷いたセイさんと僕が付いて行く事になった。


「僕はクマグマちゃん達を闇の国に連れて行くから先に出るね。セイ、後をお願いね」


「ああ。カハルはどうするんだ?」

「ヒョウキに魔力供給して貰ってね。そろそろ残党の確認をして貰わないと」


 頷いたセイさんに手を振って、大きな箱に入った五十人のクマグマちゃん達と共に行ってしまった。


「さて、皿洗いするぞ」


 残ったみんなで手分けして片付け終わった所で、三十五人は復旧作業に行き、残りはクマちゃんのお手伝いだ。


「昼はサンドイッチが用意してあるからとシンが言っていた。冷蔵庫にオレンジジュースなどもあるから飲んでくれ。それじゃあ、行って来るな」


「行ってらっしゃいキュー」


沢庵好きが増えてます。百一人が一斉に沢庵を齧るって凄い光景ですよね~。

シンはとても喜んでいますが、ニコちゃんは焦って気付いていませんね。

クマグマちゃん、力こぶが出来るものと信じ切っていました。まさかの、出ない(笑)。可愛い子達です。


次話は、募金します。


お読み頂きありがとうございました。


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