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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0242.俺は悪い男

「変化の術なのですよ。驚いたりした時などに、耳や尻尾がピョンと一瞬出てしまう事があります。以前、セイさんには見られてしまいました。まだまだ修行が必要ですね」


「十分に見事な変化だと思うよ。私にも狐さんの姿を見せてくれる?」

「はい。クマグマちゃん、離れていて下さいね」


 後方宙返りをしたビャッコちゃんが真っ白な狐さんに変わると、一斉にモフモフ好きが近付いて来た。


「にゃ~、もふもふ!」

「ん? 狐? 触っていいか?」

「グマーーー!」


 完全にモモ様が出遅れた。シッポにはカハルちゃんが抱き付き、ダーク様は前足をニギニギしている。クマグマちゃん達は目をキラキラさせながら取り囲んでいる。


「私が頼んだのに……」


 ガックリと項垂れた哀愁漂うモモ様の前に、再度、ヴァンちゃんがバンザイして立つ。


「俺、空いてます」

「ヴァンちゃん!」


 物凄く感激しております。僕もヴァンちゃんに抱き付いちゃおう。


「とりゃっ」

「出たな、ひっつきニコ。飴玉を一つ要求する」

「えっ、僕は有料なの⁉」


 ガーンとしている僕の言葉に頷いたヴァンちゃんが、少ししてからニヤリと笑う。


「――――冗談」

「ふふっ。ニコちゃん、騙されちゃったね」

「本当ですよ! ヴァンちゃん、ひどい~」

「フッフッフッ。俺は悪い男」


 そう言って、ビャッコちゃんにガバッと抱き付いている。


「うわっ、ヴァンちゃん⁉」

「素晴らしい毛並み……スリスリスリ」


 止まる事の無い頬ずりに、ビャッコちゃんが助けを求めるようにこちらを見る。モモ様は笑いながら撮影に夢中だ。ここは僕が助けるしかないか。


「寂しいなぁ……。ヴァンちゃんが行っちゃって寂しいな……」


 そう言って、チラッと目線をヴァンちゃんに投げると、頬擦りが止まってこちらを見ている。よし、後一押し。


「僕にはもう飽きちゃったんだ。はぁ、悲しい……」

「――ニコ、飽きて無い。一生大事。安心する」


 ヴァンちゃんが急いでやって来て、僕の肩に手を置き真摯に言ってくれる。嬉し過ぎる言葉に罪悪感が生まれる。


「――僕もヴァンちゃんを一生大事にするからね!」


 謝罪の気持ちも込めてガバッと抱き付くと、背中をポンポンと叩いてくれる。気付くと全員が温かな目で僕達を見ている。


「ラブラブでキュ~」

「そうだねぇ。愛だよ」

「あ~い~ちてる~♪」

「カハル、それを俺にも言ってくれ」

「おい、ダーク、何を言っているんだ!」

「グ~マ~♪ (あ~い~♪)」


 クマグマちゃん達まで! 誰か、穴を用意して下さい……。


「最高傑作が撮れたよ! 永久保存版だね!」


 モモ様が欲望に忠実過ぎる。ビャッコちゃんは良い笑顔で一緒になって映像を再生している。


「俺にも頂戴。ニコが良いこと言った」


 ガクッと項垂れる。味方は居ないのか、味方は! こういう時は食べるに限る。丁度良い温度になったシュウマイに齧り付く。


「はぐはぐはぐ……。あー、おいしいなー」


 取って付けた様な言葉に全員が笑って、シュウマイを食べ始める。棒読みになっちゃったけど、本当においしい。あ~、恥ずかしさよ、早く去れ~。


「モモ、からし要る?」

「うん。頂戴」


 シン様とモモ様の辛い物好きコンビが黄色い物を付けている。黄色は危険。僕は学習しましたよ!


「俺にもくれ」

「ダーク様も辛い物が好きなんですか?」

「それ程でもないぞ。シンみたいな超激辛好きと一緒にされては困る」

「失礼だね。無理やり勧めたりはしてないでしょう。ねぇ?」


 急に振られたヴァンちゃんが、パンパンなほっぺで目をぱちくりさせている。


「ふうぉ?」

「ほら、ヴァンちゃんも同意しているよ」

「嘘つけ」


 苦笑しながら食べるダーク様をモモ様が不思議そうに見ている。


「シンとダーク様はどうのような関係なのですか?」

「腐れ縁だ。カハルが居なかったらとっくに切れている」

「セイ、聞いた? 酷いよね。反論していいよ」

「あー、まぁ、ダークはいつも苦労しているからな。気持ちは分かる……」


 声がどんどん小さくなっていく。明らかにダーク様の味方だ。


「お前達の暴走を止めるこっちの身にもなれ。セイと俺はいつも苦労しっぱなしだ。なぁ?」


「……」


 シン様が居るので無言を貫いたようだ。ヒョウキ様、ホノオ様、シン様を止めるだなんて考えたくもない。僕だったら精神があっという間に擦り切れてしまうだろう。


ニコちゃんが一番悪い男な気が(笑)。結局、罪悪感を感じてしまう良い子です。

いつもラブラブな二人です。恥ずかしいのはニコちゃんだけで、ヴァンちゃんは堂々としています。恥じる所は無しなのです。

セイは懸命に無言を貫きました。でも、心の中でダークに激しく同意です。


次話は、ニコちゃんが秘儀を使います。


お読み頂きありがとうございました。

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