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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0240.これからの暮らし

「セイ、どうだった?」

「やはり、工場の辺りが一番燃えていたな。原因は綿の種を取るための機械を動かしていた魔石だろうな。バラバラに砕け散っていた」


 セイさんが手の平を広げると、所々が黒くなっている黄色の石が載っている。


「これはシンが作った物ではないだろう?」

「うん。外で買って来た物だよ。不良品だったのかな?」


 シン様が翳して見ている。目を覚ましたカハルちゃんがじーっと見た後、申し訳なさそうに言う。


「……あのねぇ、ちゅかいしゅぎなのぉ。まりょくがぼうしょうしたよ」

「使い過ぎで魔力が暴走したの? クマグマちゃん達、覚えはある?」

「グマ、グマグマ、――――グマー」


「一昨日、大量注文があった時に、一日中使った日があったそうです。その時に大分熱を持っていて心配だったので、昨日は使わずにおいたそうです」


「で、今日使ったら火事が起きたという事かな?」


 リーダーが頷いている。もっと自分が気を付けていればと落ち込んでいる。


「起きてしまったものはしょうがないよ。次に繋げていこう。ほら、これからの暮らしを皆で考えよう」


 後ろを振り返っていても元には戻らないと思ったのだろう。リーダーがキリッとした顔で背筋を伸ばす。


「まずは寝起きする場所を確保しないとね」

「桃の国の城に来る? 大きな客室があるよ」

「うーん、それも一つの手かな。クマグマちゃん達はどうしたい?」


 皆で顔を見合わせている。住み慣れた所から離れたくないのだろう。


「地下は広大だと聞いています。私と一緒に地下で暮らせばいいのでは?」


 ビャッコちゃんの意見に、クマグマちゃん達が賛成という様に手を挙げる。


「そうだね。クマちゃん、いいかな?」


「モキュ。まだ何も植えていない場所があるでキュ。そこに干し草ベッドを作ってあげるでキュ」


 モモ様が残念そうにしている。モフモフまみれになって寝てみたかったのかな?


「ご飯は僕が用意してあげるから良いとして……。建物の修復とかは少しずつやっていくしかないかな。綿の種は無事?」


「グマ、グマー」


 背負って逃げて来た分があるらしい。でも、少ないな。五十個くらいかな? 心配になってしまって、思わずシン様を見る。


「それに関してはフォレストに相談してみようか。精霊の力を借りれば成長を助けて貰えると思うしね。後は……その間の収入源かな。今までの儲けが貯金してあるけど、建物の修繕とかで結構掛かるだろうし……」


 クマグマちゃん達からは溜息しか出てこない。他の収入源が全く無いのだろう。こういう時、いつものシン様なら、僕が面倒を見てあげるって真っ先に言う筈なのに。何だが意外だ。


「私が支援してあげようか?」


 モモ様の提案にシン様が苦笑している。


「モモは寄付しようと思っているでしょう。でもね、この子達は何年掛かろうがお金を返そうとするからね。僕だって、返さなくていいって言っているのに、未だに綿をくれるんだから。この、頑固者め」


 ツンと優しくつつかれたリーダーが、まだまだ、こんなものでは受けた恩は返せていないと抗議している。そういえば、どうやって知り合って此処に住んでいるのか知らないなぁ。森の皆も恩返しだーって、よく言っているし。皆とは大分仲良くなったけど、知らない事ばかりだ。


 それまで黙って考え込んでいたクマちゃんが手を挙げる。


「はい、クマちゃん、どうぞ」


「モキュ。あのでキュね、内職しないでキュか? クマの花屋さんで押し花を使った商品を売るのキュ。クマだけだと、いくら頑張ってもたかが知れているのキュ。良かったら手伝って欲しいのキュ。どうでキュか?」


 大きいクマグマちゃん達が集まって相談している。


「グマ、グママグママ、グママー?」


「報酬でキュね。店舗と店員さんと材料はクマが用意するでキュけど、押し花の商品作りはクマグマちゃんが主体でやって欲しいのキュ。なので、材料代と売上の二パーセントをクマに下さいキュ」


「グマー! グママ、グママグマ――――グママ」


 二パーセントではクマちゃんの取り分が少な過ぎる。十パーセントにしてくれと言っている。


「キュー……。それじゃあ、五パーセントでどうでキュか? これ以上は譲らないのキュ」


 クマグマちゃん達は百人居ても、食費などの生活費はあまり掛からなそうに思える。シン様にコソッと尋ねてみよう。


「シン様は家賃を貰っているんですか?」

「うん? 貰ってないよ。あの子達は払うと言って聞かなかったけどね」


「クマグマちゃん達は服を着てないから、そのお金も要らないですよね。食事はどうしているんですか?」


「森と畑で採れるものをあげているよ。僕が綿を代わりに売ってあげているんだけど、そのお金で足りない諸々を買って渡してあげる感じだね。工場関係が一番お金を使う所かな」


「シン様が作ったんですか?」


「テラケル族や大地の精霊に頼んでやって貰っているんだよ。奥の方に行き来できる扉を設置してあるよ」


 テラケル族ってどんな一族だっけ? 聞いた事はあるんだけどなぁ。


「連れて来てあげようか? 補修を頼まなきゃならないし」

「はい、是非!」


 待っている間に、ヴァンちゃんが寄って来る。


「シン様、どこに行った?」

「テラケル族を連れて来てくれるんだって」

「えっ、本当に⁉」


 モモ様が強い興味を示したという事は、モフモフかな?


寝る場所なども一応確保出来ましたね。

毎日クマグマちゃん達をモフモフ出来る生活は断念したモモでした。


次話は、テラケル族とご対面です。


お読み頂きありがとうございました。

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