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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0239.また無理して

「ああ、火事があってね。一時的に家へ避難中」

「出直した方がよろしいですか?」

「構わないよ。でも、本当に地下の花畑でいいの?」


「はい。自分の村の環境に似ている方が助かります。土の匂いがしないと何だか落ち着かなくて」


「そっか。取り敢えず、皆でおやつにしよう。ビャッコちゃん、荷物は壁際に置いておけばいいから。ニコちゃん、井戸へ案内してあげて」


「はーい」


 使い方を教えてあげて、洗い終わりを待つ。


「魔石を――あっ」

「えっ?」


「すみません。乾燥用の魔石をと思ったんですけど、今は狐さんじゃないですもんね」


「はい。ハンカチで大丈夫です」


 毛があると乾かすのが大変ですよね、と笑い合う。室内に戻ると、カハルちゃんがハイハイして周り、ボーロに癒しの光を纏わせている。


「たべていいよー。こわいのとんでくよぉ」


 成程。火事の恐怖心とか、これからの不安を軽減させる為か。カハルちゃんは、また魔力が無くなってしまったのか、モモ様の膝にベタッとくっつく。


「まりょくを、くーだーしゃーいー。う~、もうだめにゃ~」


 自分にあまり余裕が無い状態でも、カハルちゃんて見過ごす事が出来ないんだろうな。優しいのと身を削るのは違うけど、分かった上でやっている気がする。何故、あそこまで自己犠牲的なのだろう? 過去に何かがあったのか、性格や考え方の癖なのか。でも、こういう時に注意するのは僕の役割では無い。


 膝の上で伸びてしまったカハルちゃんを、何とか抱っこしようとしているモモ様の膝から、シン様がひょいっと抱っこしている。


「あ~、そんな簡単に? はぁ……」

「慣れれば出来るようになるよ。こら、カハル、また無理して。駄目でしょう」


 クマグマちゃん達に聞こえないように結界を張ったシン様に、おでこをごっつんこされている。


「うぅ、ごめんにゃしゃい~」

「そうやって謝るのは何度目かな? 全然、分かっていないでしょう。モモの時はまだ少しだけ余裕が残っていたけど、今は無理しているね。反省しなさい~」


 今度は、おでこをグリグリと押し付けられている。


「うぎゅ~」


 ハラハラしながら見守っていると、更にお説教が続いていく。


「周りが見え過ぎて、心が敏感だから気付いてしまうのは分かるよ。でもね、その全てに手を差し出すのが正しい事とは限らないんだよ。本来、自分に起きた問題は自分で解決しなくちゃいけない。その人自身に解決する力が備わっているし、無いなら身に付けなければならない。その前段階でカハルが力を貸してしまったら、大した問題じゃないなと勘違いされる可能性が大きいし、いつまで経っても解決する力が身に付かないかもしれない。分かるね?」


 耳が痛い! とカハルちゃんの顔に書いてある。でも、口を挟むことは出来ない。その加減を覚えて自分を大事にしていくという行為は、本人にしか出来ない事だからだ。自分の限界を本当に分かってあげられるのは自分だ。もどかしくて辛いのを、拳を握ってグッと堪える。


「それにね、ああやって心配して心を痛めたり、堪えたりしている子が居るという事も忘れないで」


 カハルちゃんがハッとしたように僕を見る。


「にこちゃ……。ごめんね……」

「いいんですよ。誰にでも乗り越えるべき課題がありますし、僕だってまだまだ未熟な部分だらけです。でも、これだけは覚えておいて下さいね。僕達はいつでも見守り応援しています。相談も随時受付中ですよ」


 カハルちゃんの顔がくしゃっと歪む。大粒の涙をボロボロ零しながら、「ごめんね」と「ありがとう」を繰り返している。クマちゃんもそうだったけど、カハルちゃんも人の優しさに物凄く弱い。きっと、気を張り過ぎて心が悲鳴を上げている状態だから、たった一言がこんなにも影響を及ぼすのではないだろうか?


 優しくて心が深い主様を僕はギュッと抱き締める。どうか、もう少しでいいから、心を緩めて楽しく過ごせますようにと祈りながら。



 泣き疲れて眠ってしまったカハルちゃんを、シン様が複雑そうな顔で見ている。無理をし過ぎるカハルちゃんをずっと見ているのは、さぞかし辛かったのではないだろうか。


「カハルにしか出来ない事があるのは分かっているんだけどね……。はぁ……」


 シン様の落ち込む背中にヴァンちゃんがベタッと抱き付く。


「……相談受付中。ただいま無料です」


 クスッとシン様が笑うと、肩の上にひょこっと顔を出す。


「また今度よろしくね。クマグマちゃん達は落ち着いたかな?」

「ん。今後の相談がしたいそうです」

「了解。モモはどうする? 帰る?」

「私も何かアイデアを出せるかもしれないし、このままでは気になってしょうがないから居させて」


 頷いたシン様と共に移動し、顔の強ばりが少し取れたクマグマちゃん達の前に座る。


「それじゃあ、今後の事などを話そうか。まずは、出火原因なんだけど――。そろそろ戻って来るかな?」


 その言葉通りに、セイさんがタイミングよく戻って来た。


つい手を差し伸べてしまいたくなりますが、困っている時が学ぶ時なのだそうです。学びの邪魔はしちゃいけないし、自分も常に幸せでいるようにする。一緒に困ったら、いざという時に何も出来なくなってしまいますもんね。見守るって結構難しい……。こういうカハルを見守るシン達は、もどかしくて心の中でジタバタしています。


次話は、今後の暮らしについてです。


お読み頂きありがとうございました。

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