0023.太古の歴史4
こんな会話を、もう何度もしている。何故なら、俺達は千年以上の間、何度も転生し続けているからだ。先程の様な戦いを幾度となく繰り返し、幹部連中を叩きのめし、ペルソナに辿り着く。そこで必ず負け、俺達の眼前でカハルは死に至り、全滅。
だが、不思議な事に、どの死の記憶も苦しまずに逝っている。止めを刺すのは必ずペルソナだ。幹部連中が生き残って居たとしてもだ。
慈悲のような物を感じているのは俺だけだろうか? カハルに手を下す時も無表情を装いながら、痛ましそうに見やっている気がしてならない。奴が神の片割れだから、そう思うのだろうか。
神は俺達の仲間であり、カハルの父親だ。俺達は『シン』と呼んでいた。だが、今世の前の戦いの途中に姿を消す。
裏切り、逃亡、死亡説と様々な憶測が飛び交ったが、カハルは沈黙を保ち、庇う事もしなかった。その為、裏切り者と見なされたが、あの男の人となりを長く見てきた俺は信じなかった。
大嫌いな『世界』に懇願して、やっと手に入れた娘だ。あんなに慈しんでいたのに見放すとは到底思えない。だが、未だに今世で会えず、気配すら感じ取れない。まだ転生していないか、既に今世で亡くなっている可能性もある。
いずれにしろ今世ではイレギュラーが多く発生している。カハルが特に顕著だ。別の世界に生まれ、魂の大部分もそちらにある。これを本体と呼んでいる。
こちらの世界にも体は存在しているが非常に脆弱だ。魂を分け合っているので、別の世界から意識を飛ばして動かす事が可能だが、本体での生活が優先される為、こちらの世界では眠っている事が多い。魔力も以前より落ちている。
その為、今世での勝利は絶望的だ。更に最悪な事に、幹部クラスの魔物の封印が次々と脆弱になってきている。復活するのも時間の問題だろう。このまま行けば『世界』によって早々に、この世界は『リセット』される事となる。
カハルが居なくなり魔力が全世界を巡らなくなると、土地は枯れ、水は濁り、倒して黒い塵となった魔物が復活する。そして、大量の魔物が放つ瘴気により空気は毒と化す。そうなれば、全ての生物は生きていけない。
そこで『世界』は速やかに全てを白紙に戻す。生きている者達の記憶を消して輪廻の輪に戻し、世界を元の正常な状態に復活させる。これが『リセット』だ。
だが、例外もある。その一つが俺のようにペルソナとの戦いに関わっている者達だ。記憶・能力・名前・容姿などが保たれたまま輪廻の輪に戻り、赤子になって生まれる。そして、成長して新たに能力を身に着ければ、それも次へと持ち越される。
次に魔物だが、カハルが亡くなった時点のまま『世界』が眠らせて保存し、カハルが転生すると眠りが解けるようになっている。
『世界』には魔物を排除して欲しいのだが、未だに願いは叶わない。唯一の救いは、カハルが亡くなった時の状態が保存されるという事だ。その時に魔物が全滅していれば、二度と現れる事はない。以前、『世界』に問い質したので間違いないだろう。
会話が無いお話となりました。
カハル達はペルソナを倒すのが絶望的ですね。頑張るんだよ~。
ダークが語る太古の歴史はここで終了です。
次話は、カハルの正体を知ってしまった皆の反応です。
区切りが良いので、明日は外伝をUPする予定です。
フワフワな二匹とツイていない宰相様のドタバタな休日をお楽しみ頂ければと思います。
お読み頂きありがとうございました。
 




