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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0238.救出作業

「――地下は煙が凄いな。しょうがない、破壊するしかないか……」


 バキバキと地下の天井にあたる部分をセイさんが剥がしていく。


「――お待たせキュ。この中でキュね!」

「クマ、待て。煙を先に出さないと何も見えないぞ」


 セイさんが一時的に鏡を仕舞ってしまったらしく、声だけしか聞こえない。


「――クマ、届いたか?」


「あと少しキュ。――もうちょいキュ。床に着いたキュ。――――あっ、居たキュ! しっかりするキュ! クマの声が聞こえまキュか⁉ セイしゃん、意識が無いキュ……」


「クマ、二人にしっかり触れていろ。――出来たか?」

「いいでキュ!」

「居間に飛ばすぞ」


 戸口に二人を抱きかかえているクマちゃんが飛ばされてくる。急いでハイハイして近付いたカハルちゃんが癒しの光を与える。


「――グ……マ?」

「――グマ?」


 良かった、目が覚めた……。全員無事だった事に胸を撫で下ろしていると、消火を終えたセイさんが戻って来る。


「全員居るか?」


 ヴァンちゃんがクマグマちゃん達のリーダーに確認している。


「居る」


「そうか。火は消したが、火の回りが早くて綿はほとんど駄目だと思う。残っている物も煙の匂いが染みついてしまっているだろうな……。寝起きしている家はそれ程でもないが、綿の工場は被害が大きいな」


 悄然として俯くクマグマちゃん達に、何と声を掛けてあげればいいのだろう? 撫でてあげる事しか出来ず、無力感に襲われる。


「――グマ、グマグマグマ、グマー」


 リーダーが、全員の命が助かって良かったと言っている。確かに命があればやり直す事が出来る。でも、失くした物の大きさに心が打ちのめされてしまっているのが、よく分かる。


「グマー、グマグマグマ……(これから、どうやって暮らしていけば……)」


「グマ、グマグマ、グマグマグマ……(ただでさえ、今年は収穫量が減っていたのに……)」


 暗い言葉が、その場を支配していく。


「はい、今は考えるのはヤメ。お風呂に入るよ。さぁ、みんな立って」


 シン様に急き立てられて思わず立ち上がり、その勢いのままタライに入れられてしまった。


「お風呂は深すぎて無理だから、これで我慢してね。ニコちゃん、お風呂場から石鹸を取って来て」


「はい!」


 急いで戻ると、びしょ濡れになったクマグマちゃん達が待っていた。


「ニコちゃん、ありがとう。みんなも手伝って洗ってあげてくれるかな」


 泡を手に付けて、潰さないように優しく洗ってあげる。洗い終わった子はセイさんへ。泡を流し終わったらシン様が乾燥させている。流れ作業で効率よく終える事が出来た。


「流石に百人だと時間が掛かったね。セイ、この子達にお茶とおやつをあげてね。僕とクマちゃんはビャッコちゃんを迎えに行って来るから」


「ああ。俺がクマグマ達とコップを持って来るから、ニコ達はお菓子を先に配っていてくれ」


「はい。ボーロでいいですかね?」

「それで頼む。クマグマ、何人か一緒に来てくれ」


 比較的、背の大きい子達が一緒に行くようだ。


 居間では狭いので、寝る時に使っている部屋に移動して貰う。十人ずつで車座になって貰い、中心に紙を敷いてボーロを置いて行く。モモ様がその間にお茶の準備をしてくれた。


「紅茶は甘い方がいいかな?」


 クマグマちゃん達が一斉に頷く。


「甘い物が好きなんですか?」

「グマ。グママグマ」

「あー、僕と同じで、お子ちゃま舌なんですね。ヴァンちゃん、仲間が増えたよ」

「フッ。俺はストレートで飲める!」

「えっ、いつの間にっ⁉ じゃ、じゃあ、コーヒーは飲めるようになった?」

「無理!」


 速攻で答えが返って来た。「ですよね~」と全員で頷いていると、コップを各家から回収してきたセイさん達が戻って来る。


「お待たせ。モモ、頼むな」

「うん、任せて」


 モモ様が注ぐと、バケツリレーのように、クマグマちゃんがコップを渡し合っていく。


「見事」

「そうだね。ヴァンちゃん、混ざりたいんでしょう?」

「うむ。混ざって来る」


 モモ様から受け取り、次の子へ。身長差があるから途中に入るとお互いが大変だもんね。


 お茶が全て行き渡った所で、シン様達が帰って来た。


「ただいまキュー」

「お帰りなさい」

「失礼します。皆さん、今日からよろしくお願いしますね。この熊さん達も住人ですか?」


 まだ、何も説明を受けていないのか目を丸くしている。百人の白いモコモコ達、壮観です。


全員無事でしたが、被害が大きかったですね。

落ち込むと良い事がないですからね。さっさと気分を変えましょうという事で、お風呂とお茶とお菓子です。

ヴァンちゃんがいつの間にかストレートで飲めるように! ヴァンちゃんが大人になっていく(笑)。

でも、コーヒーは無理なので、ニコちゃんは置いて行かれずに済みそうです。


次話は、相談受付中です。


お読み頂きありがとうございました。

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