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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0233.珍しいお茶

「モモが手に入れてくれたお茶を飲もうか。ヴァンちゃん、お手伝いしてくれる?」


「了解」


 おぼんに載せられたガラスの器をヴァンちゃんが慎重に運ぶ。最初は僕も頼まれていたけど、ひやひやして他の事が手に付かないと皆に言われてしまった。それ以来、ああいう物を運ぶ時はヴァンちゃんが選ばれるようになった。


 僕だって出来るのに……と考えかけて、躓いて器を空にバラまいた記憶が蘇る。セイさんが素早く全てをキャッチしてくれたので割らずに済んだ。……大人しく座っていよう。ぐすん……。


「みんな、面白いからポットを見ていてね」


 ガラスのポットにお湯を注ぎ、緑の丸い物を入れて蓋をする。僕、ヴァンちゃん、クマちゃん、カハルちゃんは腹這いになって見つめる。


「モキュ⁉ 開いてきたキュ」


 蕾のようだった物が上の方から開いていく。ポコポコと泡を出しながら、ゆっくりと大きく広がり始め、中に違う色を見付ける。


「黄色いものが見えますね」

「そうねぇ。にゃにかな?」


 そう言っている内にぶわっと広がり、黄色と赤い色が現れる。


「おぉ。……花?」

「ヴァンちゃん、そうキュ、お花っキュよ!」


 凄い! ポットの中でお花が咲いた。プカプカと浮いているお花を見ていると、透明だったお湯が茶色に変わってきた。


「まだ、何のお花か分からないキュね」

「そうですね。もうちょっと待ったら、もっと開くかもしれませんよ」


 お湯を吸って重くなったのか、ポットの底に沈んでいく。それと同時に赤色がポーンと上に飛び出した。


「おおっ、飛び出た。クマちゃん、これ何の花?」

「これは千日紅せんにちこうでキュね。下の黄色い花はキンセンカでキュかね」


 お湯の色がだいぶ茶色くなり、動きが無くなってきた。


「もういいかな。飲んでみよう」


 器に注ぐとジャスミンのいい匂いが広がり、他のお花の匂いもふんわりと感じる。


「渋みが無くて飲みやすいな」

「そうだね。モモ、ありがとうね」

「どういたしまして。クマちゃん達が楽しんでくれて私も嬉しいよ」


 へんにゃりとした花をカハルちゃんが見ている。お楽しみが終わって寂しいのだろう。「元気になーれ」というようにポットを小さな手で撫でている。


「――おぉ、綺麗」

「おや、本当だ。お水の中だとさっきよりも綺麗に見えるね。カハル、偉いねぇ」


 目をポットに戻すとお花が咲き誇っている。ヴァンちゃんとシン様に撫でられているカハルちゃんが、嬉しそうに笑い声をあげる。


「綺麗でキュね。モモしゃん、他にも種類はあるでキュか?」

「うん。そんなに気に入ったなら私がまた買って来てあげるよ」

「やったキュ! お願いしまキュ」


 皆でまた腹這いになって眺める。飲んだ後も楽しめるなんて素晴らしい。ぼーっと眺めていると、疲れとお腹がいっぱいになった所為か、眠気がやってくる。うーん、目が開けていられない……。


「…………」

「みんな寝ちゃったね。セイ、タオルケット取って」

「ああ」


 ふんわりと体を覆われる感覚がある。意識が半分残っていたが、本格的に寝てしまおう。だが、聞こえて来た話し声に耳が反応する。


「モモ、そろそろ本当の事を言って貰おうか」

「なんの事?」


「とぼけても無駄だよ。いくら増幅させたからと言って、カハルでも追えない微弱な魔力を人間が追える訳がないでしょう」


「……簡単にばれちゃったね。全部が嘘ではなくて、魔力を追う事が出来るのは本当だよ。私の一族が特に優れているのは、人間の感情を感じ取る事だね。あの場には濃い負の感情のエネルギーが残っていた。それを増幅させる事で、私は何が行われたかを映像として見る事が出来る。感情を残した人の視点でね」


 それは、かなり辛い能力なのではないだろうか? 強くて嫌な感情に包まれて、凄惨な現場を見る事だってあるかもしれない。僕にはとても耐えられないだろう。


「それで、どういう映像が見えたの?」


「左利きの男だったよ。憎しみや嫉妬なんかの感情を込めて、魔法粉を掛けたバールで棚を滅茶苦茶に叩き壊していたよ。あれは、皆がクマちゃんの為に作ったものなのにね……。そして、フローリストナイフにも風の魔法粉を纏わせて、オーニングテントに風の刃を飛ばしていたね」


「フローリストナイフとは何だ?」


 セイさん、ナイス! 僕も何か気になっていたのだ。


「花屋さんで使うナイフだね。茎の切り口が斜めになって、水揚げが良くなるらしいよ。クマちゃんも多分持っているのではないかな。自分の大事な商売道具を犯行に使うなんて、クマちゃんには信じられないだろうね」


 暫し沈黙が落ちる。目を瞑っている所為か、三人から立ち昇る怒りをより強く感じる。特にモモ様は冷静な口調とのギャップが凄い。あれは既に殺意と言えるレベルだ。


シンがモモに買って来て貰ったのはお花のお茶でした。

飲むタイミングが丁度良かったですね。悲しい事があったクマちゃんに楽しんで貰う事が出来ました。

事件を早く解決できたのは、モモの能力のお蔭です。黙っておこうと思ったモモですが、シンに隠し事は出来ませんね。


次話は、事件解決の舞台裏です。


お読み頂きありがとうございました。

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