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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0231.人類最強のタラシ

「クマちゃん、大丈夫?」


 モモ様の綺麗な白い指が、そっとクマちゃんの頬に触れる。驚いたのか、小さく肩を揺らしたクマちゃんが、僕の腕の中でべしゃーっと前のめりになる。


「……まだ気持ちの整理がつかないのキュ。…………でも、誰かにこうやって影響を与える事になっても、クマは花屋さんという夢を諦められないのキュ。……答えはもう出ているのキュ。だから、進むのを止めないのキュ」


 クマちゃんが顔を上げて言い切り、答えを聞いたモモ様が破顔する。この先、一生忘れられない程の慈愛に満ちた神々しいまでの笑みだった。


「私が一生支えてあげる。クマちゃん自身とお花の大ファンだからね」


 クマちゃんは笑顔を間近で見て頭が真っ白になったのか、ピクリとも動かない。


「……クマちゃん? 聞こえている? クマちゃーん?」


 駄目だ、刺激が強すぎたようだ。モモ様が目の前で手を振って声を掛けているが無駄なようだ。


「ただいみゃ」


 カハルちゃんが帰って来た。クマちゃんの様子を見て首を傾げると、シン様の腕の中から手を伸ばして、両耳をみょーんと優しく引っ張る。


「しっかりー、くまちん」

「――キュッ⁉ な、何があったキュ⁉」


 記憶が飛んだのだろうか? 愕然とモモ様を見上げた後、顔を両手で覆って恥ずかしがっている。人間だったら顔が真っ赤になっている事だろう。そして、小さな声で呟き始める。


「タ、タラシが居るキュ。人類最強のタラシキュ。勝てるっキュか? キュ~ミ~、無理に決まっているのキュ……」


 勝つ必要があるのか? とセイさんが小さな声でツッコミを入れ、ヴァンちゃんが側でウンウンと頷いている。頼るのが苦手なクマちゃんには、これくらい押しが強い人の方が合っている気がする。


「甘えちゃえばいいんですよ。モモ様なら丸ごと受け入れてくれますから。ですよね?」


「うん、いっぱい頼ってね。取り敢えず、新しい棚を作ってあげる。私はこれで失礼しても宜しいですか?」


「えっ、あ、ああ。お疲れさん」


 驚いたような顔でやり取りを見ていたヒョウキ様が許可をくれた。


「ミナモ様、また何かありましたらご連絡頂けますか? いつでも参ります」

「お願いしますね。クマちゃん、私もいつでも力になりますから、頼って下さいね」

「ありがとキュ。ヒョウキしゃんもありがとキュ」

「おう、またな。飯食って、よく寝て元気になれよ。ニコ達も休みを満喫してこい」



 モモ様と共にお家に戻り、棚を作る。


「この前と同じデザインで良い?」

「モキュ。可愛いって宿の女将さんにも好評だったのキュ」

「ふふっ、嬉しいな。腕によりを掛けて作るからね」

「ありがとキュ。クマもヤスリ掛け頑張るのキュ」


 森で木を切っていたセイさんと共にアケビちゃんも来てくれた。


「ガウガウ、ガウーガウ(大変でしたね。私も力になります)」

「ありがとキュ。お願いしまキュ」


 大きな熊さんと小さな熊さんが話す姿は非常に和む。ただ、クマちゃんは見上げるのが大変なのか、時々、「キュヘ~」と言いながら頭を下に向けて休めている。


 僕が抱き上げても似た様なものだしなぁと思っていると、アケビちゃんがそーっと抱っこしている。潰さないように細心の注意を払っているのか、直立不動だ。シッポまでピンとしている姿に思わず口元がにやけてしまう。


「クマ達、ヤスリ掛けを頼む」

「はーい」

「うぉーおーおー」


 至極冷静に叫びを上げながら、高速でヤスリ掛けをするヴァンちゃんの姿に、セイさんが木材を落としそうになっている。僕とクマちゃんもニマニマとしながら「うぉー!」とやってみる。声を上げた方が意外と捗るかも?


「うりゃりゃりゃー!」

「モキュモキュキュー!」


 塗料を手に戻って来たモモ様が何事かと見ている。だが、しかーし! 僕達の作業が終わらないとモモ様の作業が出来ないので、シッポをピコピコと動かしてみせて手は止めないのだ。


「セイ、あの叫びは何?」

「いや、俺もよく分からない。ヴァンが一番初めにやり始めたんだが、気合か?」

「その割には声に熱がこもっていないよね」

「そうだな。ほぼ棒読みだな」


 ゼーハーしながらやっていたクマちゃんが動きを止める。


「きゅ、休憩キュ……」

「じゃあ、私が変わるね。何て叫べばいいの?」

「心のままに叫ぶがよい」


「えっ⁉ ヴァンちゃん、その台詞カッコイイ! 僕も言いたいっ。心のままに叫ぶがよい!」


「カッコよさが消えたな」

「そうだね。渋くてカッコイイのが抜け落ちたね」


 セイさんとモモ様が酷い……。声? 声の違いなの? 悩んでいるとポンと肩を叩かれる。


「ニコには、うひょひょさんの高笑いの真似があるじゃないか」

「ハッ⁉ そうだった! うひょひょひょひょ!」

「「――っ⁉」」


 ふっふっふ。二人沈めてやったぜ! と悦に入りながらヤスリ掛けに戻る。それから暫くしても、セイさんとモモ様は作業が手に付かなかった。


「ふっかーつでキュ! 頑張るキュー」


 今度はマイペースに「キュ~キュ~♪」とやっているので酷い息切れにはならないだろう。その後ろでは唇を引き結んだセイさんが釘を打ち始める。時々、まだ笑いの発作が来るのか、あらぬ所を叩いているのは見て見ぬ振りだ。やはり、うひょひょさんの高笑いは偉大だ。もう一度、生で聞きたい。


 全員で力を合わせ、その後は順調に作業を終える事が出来た。


クマちゃんが、再度決意です。本気で叶えたい事は諦めません。何があっても自分の望んだ方へ進みます。

そうすると、モモのように本気で応援してくれる人が出て来てくれるのかもしれないですね。

モモの笑顔は威力が凄いです。クマちゃん、軽く意識が飛んでます。魔性の男め~(笑)。

そして、うひょひょさんも凄いですね。少ししか登場していないのに存在感がありすぎです。


次話は、何が入っているかはお楽しみのご飯です。


お読み頂きありがとうございました。

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