表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
227/390

0226.聞き込み

「もう一つ追いたい気配があります。よろしいですか?」

「うん。どっちに向かう?」

「城の方へお願いします」

「了解」


 今度はそれほど迷う事なく辿り着いた。気配の濃さとかが関係しているのだろうか?


「また花屋さんだね。クマちゃんのお店に注目している人が多いのかもね」

「そうですね。取り敢えず話を聞いてみましょうか」


 ビャッコちゃんが声を掛けると、元気一杯のふくよかなおじさんが出て来る。


「いらっしゃいませ。本日は何をお求めですか? んっ⁉ もしや、クマちゃん⁉」


 慌てて近寄って来たおじさんにびっくりして後退る。


「ちょいと、あんた、興奮し過ぎだよ。ごめんなさいね~、この人、クマちゃんの大ファンでね。初めて見た時から、もう、うるさくて、うるさくて敵わないのよ」


「ああ、近くで見られるなんて! あ~、可愛い……」


 どう見ても、緩み切った顔をしたこの人が犯人とは思えない。引き気味のシン様が質問する。


「今朝、クマちゃんのお店の近くに来ませんでしたか?」


「おや、私を見掛けましたか? ダイエットの為に歩いていましてね。クマちゃんの店の所まで行って引き返すのが最近の習慣なんですよ。防水の布に包まれた物があったので、近々オープンするのだと嬉しくて嬉しくて」


 おっと、有力情報だ。質問せねば。


「今日は何時頃、行かれたのですか?」

「えーと、今朝は何時だったかね?」

「帰って来たのが五時頃だったわね。四時半頃にクマちゃんの所じゃないかしら」

「ありがとうございます! 良い情報が聞けました」

「えっ、何かあったのかい?」

「オーニングテントも棚も壊されしまってね」


 クマちゃんを気にしながらシン様が告げる。


「なっ⁉ 誰がそんな酷い事を! 私も捜査に協力致しますぞ!」


「ふふっ、ありがとう。今の情報だけで随分と助かったよ。他にも早朝に店の辺りを散歩している人って居るかな?」


「えーと、犬の散歩をお隣さんがしていますね。後は……」

「文房具屋さんも散歩しているわね。後は、服屋のおじいちゃんかしらね」

「ありがとう。話を聞きに行きたいから場所を教えて貰える?」


「私がご案内しますよ。その方が話しも聞き出しやすいでしょうしね。店番を頼むよ」


「あいよ!」


 おじさんと連れ立って、まずはお隣へ行く。


「あれ、どうしたんだい?」


 おじさんがあらましを伝えると、ひとしきり犯人に怒ってから話してくれる。


「俺が行ったのが五時前だったかな。その時は何も壊されていなかったよ」

「教えてくれてありがとう。次の所へお願い出来るかな」


 文房具屋さんにも話を聞いた所、六時頃に行ったが何も壊されていなかったそうだ。後は服屋のおじいちゃんだな。


「ごめんくださいよ」


「はーい、今行きます。――お待たせしました。あら、花屋のおじさんじゃない」


「忙しいところ悪いね。おじいちゃんは居るかな?」

「ええ、呼んできますね。――おじいちゃーん、お客さんよー」


 杖を突いたおじいちゃんが、ゆっくりと奥から出て来る。


「お待たせ致しました。どうされましたか?」

「話を聞きたくてね。今朝の事なんだけど――」


 花屋さんに話を聞いたおじいちゃんが首を傾げる。


「私は六時半頃に行きましたが、何もありませんでしたよ」

「何も無かった? オーニングテントも?」


 シン様が訝し気に聞いている。


「はい。宿屋さんの壁があっただけですよ」


 という事は六時から六時半の間に行われていた可能性が高いのか。そして、僕達が宿に行った八時半位に目隠しの魔法が解けた、と。


「その頃って、どれくらいの人が出歩いているの?」

「ほとんど居ませんねぇ。私はいつも二、三人に会うだけですよ」


 目撃情報は期待出来ないようだ。でも、犯行時間が分かっただけでも一歩前進だ。


「教えてくれてありがとう。花屋さんもありがとうね」

「いえ、お役に立てましたかな?」

「とーってもでキュ。ありがとキュ」

「どういたしまして。オープンしたら行くからね」

「お待ちしていまキュ。おじいちゃんもありがとキュ」

「いえいえ。私も行かせて貰いますよ」


 自分を望んでくれている人が居るという事が、クマちゃんを元気にしてくれたようで、少し明るい顔になって宿へ戻る事が出来た。


「ただいまキュ」

「おかえり。ご飯の準備は出来ているよ」


 宿に着くと既にお客さんが沢山居た。女将さんが取っておいてくれた席に座ると次々に話し掛けられる。


「大変だったねぇ。大丈夫かい?」

「花屋を開くのを止めないでおくれよ」

「いじめる奴が居たら俺が追っ払ってやるからな!」


 温かい言葉にクマちゃんが涙目になって頷いていると、人間の姿になったビャッコちゃんがお料理を持って来てくれた。


クマちゃんは知らない間にファンが出来ていました。注目している人が多いですね。

聞き込みの成果が出ました。花屋のおじさん達のお蔭ですね。

温かい言葉でクマちゃんの心が慰められました。ニコちゃんも一安心です。


次話は、ご飯を食べながら情報をまとめます。


お読み頂きありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ