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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0224.事情聴取

「みなさん、どうされ……」


 僕達があまりにも遅いので、ビャッコちゃんが見に来たようだ。そのまま言葉を失い、次にクマちゃんを見る。お断りの言葉が出るのだろうか?


「――女将さん達、宿に入りましょう。このまま人目に晒され続けるのは良くありません」


「えっ、あ、そうだね。クマちゃん、宿に入ろうね。温かい飲み物と美味しいお菓子を出してあげるからね。兵士さん、中に居るからいつでも声を掛けとくれ」


「はい、了解です」


 ゴンさん、ココさんも付いて来る。静かな宿に入ると体から自然と力が抜け、大きく息を吐く。クマちゃんが持って来た優しい花の香りも心を慰めてくれた。


「綺麗なお花……」


 ココさんが花にそっと触れる。ようやく顔を上げた、涙でぐしゃぐしゃのクマちゃんが「キュ」と小さく頷く。


「さぁ、みんな座っとくれ。ハチミツたっぷりの紅茶だよ。クマちゃんの好きなクッキーもあるからね」


 シン様に涙を拭いて貰い、テーブルの上をじっと見ている。あぁ、また涙が出て来てしまった……。


「女将さん、ごめんなさいキュ。……フ、フキュ……。テント駄目にしちゃったキュ。キュミー……」


「な、何言ってんだい、クマちゃんの所為じゃないよ。ほら、そんなに泣くと目が溶けちまうよ。クッキー食べな、ね?」


 焦った女将さんに大きなクッキーを持たされると、それで顔を隠してしまった。


「……あんなに酷く壊すなら、もっと大きな音がしないとおかしいですよね?」


 考え込んでいたココさんが皆を見やる。


「確かにそうだな。でも、俺は全然気付かなったぜ。女将はどうだい?」


「あたしもだよ。と言っても、熟睡している時間なら――でも、気付きそうなもんだよねぇ」


「行われたのは人が少なくて寝ている時間という事ですよね。それと魔法が使われたのではないでしょうか?」


 ビャッコちゃんの発言にカハルちゃんが反応する。


「せいかーい。まりょくのぉ、ざんしがあったよぉ。けっかいねぇ。あとぉ、めかくしのまほーと、かぜのまほーもなのぉ」


 女将さん達がギョッとしてカハルちゃんを見つめる。こんな小さな子が言う事じゃないもんね。でも、さっきの行動の意味が分かった。魔力を探っていたんだ。


「えっ? えーーーっ⁉」


 そんな女将さんの反応にクマちゃんが小さく笑う。


「モキュキュ。にゃんちん、びっくりしちゃってるキュよ」

「だってー、だいじなことよぉ」

「カハル、他に気付いた事は?」


 シン様は驚く皆にチラッと目をやり、お構いなく話を進める。


「うーんとねぇ、そのひとのぉ、まりょくじゃないのよぉ。かったのだとおもうー。だからね、うすしゅぎて、おえにゃいのぉ」


「そう……」

「ね、ねぇ、どういう事だい?」


「ああ、ごめん、分からないよね。犯人は多分、結界の札を使ったんだと思うよ。本人の魔力を使った訳じゃないから、薄すぎて後を追えないのだって」


 ビャッコちゃんだけはポカーンとせずに指を組んで考えている。この人は随分と冷静な人なのだなと見ていると、決心したように顔を上げる。


「私がお役に立てるかもしれません」


 鋭い目で見たシン様に、カハルちゃんがこしょこしょと耳打ちする。


「……成程。じゃあ、お願いしようかな」


 どんどん進んでいく話に付いて行けずに戸惑っていると、兵士さんが入って来た。


「すみません、被害に合った物品を教えて下さい」

「モキュ。オーニングテントと防水の布と棚が三つでキュ」


 メモを取った兵士さんが更に質問する。


「このような事をする者に心当たりはありますか?」


 すぐに浮かぶのは、うひょひょさん一味だろうか? でも、全員捕まった筈だよね……。


「……思い浮かばないのキュ。でも、ニコちゃんが視線を向けて来る人が多いって言っていたキュ」


 兵士さんが気まずそうな顔をする。何か知っているのだろうか?


「そ、それはですね、クマちゃんが珍しいのではないかと……」

「それででキュか。ニコちゃん、危険じゃなかったのキュ」

「理由が分かって良かったですね。来るたびに気になっていたんですよ」

「すみません……」


 何故、兵士さんが謝るのだろうか?


「こういう被害は他にもあるの?」


「いえ、この様な事はありませんでした。……目撃情報を集めるにも明け方だと難しいかもしれませんね。ここに集まっている皆さんが、最も現場の近くに居た方々なのです。どんなに小さな事でも構いません。思い出して頂けませんか?」


「あのね、その子、いえ、人がね、結界の札を使ったんじゃないかって言うんだよ」


 カハルちゃんを示そうとした女将さんが、ハッとしたようにシン様を示す。僕もその方が良いと思います。


「すみません、あなたは?」


「クマちゃんの保護者で少し魔法に詳しくてね。あれだけ破壊されているのに気付かないなんておかしいでしょう? 結界を張ったと思うのが自然だよね。でも、結界を作りだせる者は少ないから、札を使ったのではと思ってね」


「成程。他に何かお気付きになられましたか?」

「ごめんね、これ以上は分からないよ」


「いえ、ご協力ありがとうございました。表はもう片付けても大丈夫です。皆さん、またお話を聞く事があると思いますが、よろしくお願いしますね」


 頭を下げ合って別れる。ココさんとゴンさんもお店があるのでと申し訳なさそうに帰って行く。


女将さんが良い反応ですね。ただの赤ちゃんじゃありませんよ~。

そのお蔭でクマちゃんが笑う事が出来ました。カハル、お手柄です。


次話は、ビャッコちゃんが活躍します。


お読み頂きありがとうございました。

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