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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0223.悲痛な泣き声

「それじゃあ、行こうか。セイ、ヴァンちゃん、先に行くね」

「ああ。気を付けてな」

「いってらっしゃい」


 今日はクマちゃんの花屋さんの面接準備がある為、早めに家を出る。宿屋に着くと、ビャッコちゃんが迎えてくれた。


「おはようございます。準備のお手伝いは必要ですか?」


「おはようキュ。お花を包む場所が欲しいでキュ。机をくっつけて貰ってもいいでキュか?」


「はい」

「僕も手伝うよ」

「すみません。では、そちらを持って頂けますか?」

「うん」


 くっつけて貰ったテーブルの上に良い香りの花を載せていく。面接の際に花の名前を答えて貰うのと、やり方を教えて包んで貰い、器用さを見るらしい。


「これは綺麗ですね。ガーベラにバラにトルコキキョウ、キンギョソウ。これはクマちゃんの顔の形のようですね。――うん、香りも素晴らしい」


「気に入って貰えて良かったキュ。熊の形のはオリジナルなのキュ」


 ビャッコちゃんは、よっぽど気に入ったのか頬が緩みっぱなしだ。本当にお花が好きなんだなぁ。


「これで準備は完了かな?」

「モキュ。ビャッコちゃん、女将さんはどこに行ったのキュ?」

「先程、掃き掃除をする為に表に行きましたよ」

「じゃあ、挨拶してくるキュ」

「はい。また何かありましたら、遠慮なく仰って下さい」

「ありがとキュ」


 全員でぞろぞろとお肉屋さんの方へ向かう。すると、通り沿いがザワザワしている事に気付く。


「一体、誰がこんな事したんだい⁉ 許せない!」


 女将さんの大きな声がしたので急いで向かう。


「どうされ、た……」


 あまりの衝撃に声が出なくなる。オーニングテントと防水の布は切り裂かれ、棚は最初の姿も分からなくなる程バラバラに砕け散っている。急いでシン様がクマちゃんの目を隠そうとするが遅かった。


「――キュ……キュ?」


 意味が分からないという様に、言葉にならない声がクマちゃんの口から漏れる。


「クマちゃん⁉ 見ちゃ駄目だよ!」


 気付いた女将さんが慌てて自分の体で視界を遮るが、目を見開いたままのクマちゃんの目から涙が溢れていく。声も無くボロボロとこぼれる涙を、通りに居た人たちが痛ましげに見ている。


「――詳しく教えてくれないかな?」


 シン様が固い声で質問すると、女将さんがクマちゃんの様子にオロオロしながら口を開く。


「あ、あのねぇ、夜までは何とも無かったんだよ。ゴンさん、そうだよね?」


「ああ。俺は昨日、友達の家に飲みに行って二十三時頃に帰って来たんだが、その時は何とも無かったぜ」


 駆け付けた兵士さんが周りの人達にも聞いているが、似た様な話ばかりだ。


「あの……」


 パン屋のココさんがおずおずと声を上げる。


「どうされましたか? 何か気付いた事が?」


 兵士さんに気の所為かもしれないと前置きしてから話し始める。


「明け方にバキッという音が聞こえた気がしたんです。でも、その一回きりで音がしなくなったので、別の音かもしれないですが……」


 場に沈黙が落ちる。シン様におんぶされている、ずっと無言のカハルちゃんを見上げると何かを目で追っている。何を見ているのだろう?


「えっ、何これ? ここってクマの花屋さんの面接場所ですよね。何かあったんですか?」


 周りの人に教えて貰った面接希望の人が、気まずそうな顔でクマちゃんの所に来る。


「あ、あの、面接を取り止めて貰いたいんです。こんな危険なのは、流石に無理って言うか……」


 反応出来ないクマちゃんの代わりにシン様が口を開く。


「ああ、ごめんね。帰って大丈夫だよ。そこの君も面接希望の人でしょう? 帰るのかな?」


「あ、はい。すみません……」


 こちらを窺っていた人も面接希望だったようだ。これでビャッコちゃんだけになってしまった。彼も断るのだろうか? 


 胸の内が冷たく固まり、気持ちの整理が追い付かない。でも、クマちゃんがここに居るのはよくない。そう思い、いざ言葉を掛けようとするが上手く出てこない。喋るのってこんなに難しかったっけ?


「くそっ、誰だろうが俺がぶん殴ってやる! クマちゃんが何したっていうんだ!」


 ゴンさんが悔しそうに拳を握る。大きな声にクマちゃんがやっと反応した。


「みんなが……クマの為に、キュ……、作ってくれたのに……。フキュ、な、何て謝れば、い、いいのキュ?」


 くしゃっと顔を歪めると、シン様の服に埋もれて声を上げて泣き出す。あまりにも悲痛な声に耳を塞ぎたくなる。ようやくはっきりした形を持ち始めた怒りが、胸をジリジリと焼き始める。誰がやったか知らないが、そいつの大事な物もズタズタに――。


「にこちゃ、だめよぉ。いまはいかりじゃなくてぇ、れいせいなめでみりゅの。くまちんをたしゅけるのよぉ」


 僕も含めて怒りに支配されていた人たちがハッとした顔をする。そうだ、僕のしようとした事は、クマちゃんをより傷付ける事に繋がる。


「報復をしてすっきりしても、そんな行動をさせたのは自分だと、優しいクマちゃんは自分を責めるだろうね」


 冷たい表情のシン様が更に釘を刺す。一番怒り狂っていそうなシン様があまりにも冷静でびっくりする。呆然としながら見上げていると、体の周りにユラユラとした物が見えた気がした。何だろうと目を凝らすと、それがカハルちゃんに吸収されていく。えっ、もしかして魔力なの⁉ 全然冷静じゃなかった……。魔力が暴走しそうなほどに怒っているけど、胸にクマちゃんが居るから必死で抑えているんだ!


皆で作った棚が壊されてしまいました。悲しくて胸が張り裂けそうなクマちゃんです。

ニコちゃんや皆が怒り心頭です。カハルのお蔭で冷静さを取り戻せましたね。


次話は、カハルにびっくりです。


お読み頂きありがとうございました。

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