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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0222.一人、清々しく

「へぇ、住み込みね。僕も面接に立ち会っていいの?」


「モキュ。うちには女の子のにゃんちんも居るでキュから、嫌だったら住み込みはお断りするのでキュ」


「そうして貰えると助かるよ。セイ、どうしたの? 何か気になる事でもあるの?」


「いや、たぶん気のせいだろう。気にしないでくれ」


 ヴァンちゃんがセイさんの胡坐の中に座りじっと見上げる。さぁ、言え、言うんだ! と無言のプレッシャーをかけている。


「あ、ああ、分かった、言う。一瞬、三角の耳が見えた気がしたんだ。だが、気配は人間だった」


 タジタジとしたセイさんがヴァンちゃんの目を手で覆って隠している。


「耳ですか? 僕達みたいな?」

「そうだ。この世界で獣人は見た事が無いが、居ないとも言い切れん」


「う~ん……居ない筈だけどね。『世界』がやらかした可能性も完全には否定出来ないから、やっぱり僕の目で確認するかな」


「お願いしまキュ」


 話が終わった所でセイさんがそーっと手を外す。凝視は終わったかな?


「……寝ていないか?」

「……寝ていますね」


 暗闇になった所為かヴァンちゃんは眠ってしまったようだ。今日も書類配達であちこち飛び回ったもんね。苦笑したセイさんが既に眠っているカハルちゃんの隣にヴァンちゃんを寝せている。


「お疲れ、ヴァン。ゆっくり眠れ」


 ポンポンと優しくお腹を叩かれたヴァンちゃんが、ニンマリと嬉しそうに笑って寝返りを打った。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「随分と少ないですね。興味本位の方々の所為で、本当に応募したい人が尻込みしているのではないですか?」


「僕もそう思います。荒々しい人も居ましたから、特に女性は近付きにくいと思います」


「いい迷惑だな。で、明日はニコとシンが付き添いで行くのか?」


「そう。住み込みになる子かもしれないから、自分の目で確認しようと思ってね」


「住み込み? カハルが居るのに大丈夫か?」

「むしろ、カハルが望みそうな気がするんだよね」

「どういう事だ⁉ そんなにいい男なのか⁉」


 ヒョウキ様がカハルちゃんに突撃しようとして、シン様に蹴られている。


「痛って! 脛を蹴るな、脛を!」

「うるさい。僕の家の事に口出ししないでくれる? た・に・んのヒョウキ」


「うわっ、ひでぇ! そこまで強調して言うか⁉ それを言うならニコ達だって他人だろ」


「この子達は、うちの子だもの。失礼な事を言わないでくれる?」


 ヴァンちゃんと顔を見合わせてニンマリとしてしまう。『うちの子』だって! 何ていい響きだ。


「じゃあ、俺も他人じゃないぞ! カハルを嫁に貰うからな」

「…………」


 シン様が無言で室内に雷を落とす。


「うっわ、ちょ、手加減! 他の奴も居るんだぞ!」

「他の子に当てる訳がないでしょう。今日で人生の幕を閉じてあげるよ」


 器用にヒョウキ様だけに雷を落とす。何で僕達はビリビリしないのかな?


「私達にも部屋にも被害が無いので放っておきましょう。良い人が見付からなかったら相談して下さいね。他にも困っている事があったら、いつでもいらして下さい」


「ミナモしゃん、ありがとキュ。――あれ、いいでキュか? 痺れてピクピクしているでキュ」


「頑丈に出来ているので大丈夫ですよ。踏んでも蹴っても殴ってもピンピンしていますから。一体、どうなっているのでしょうね?」


 近付いて行ったヴァンちゃんが鉛筆でツンツンとしている。ビリッとしないのかな? 僕とクマちゃんも加わって、ツンツンとしてみる。


「ビリビリしないキュ」

「そうですね。手で触ってみますか?」

「それは怖いのキュ」


 勇気を出したヴァンちゃんが、そろそろと手を伸ばしていく。


「何をしているんだ?」


 急にダーク様に声を掛けられて、勢いよくヴァンちゃんが触ってしまう。ビクッとシッポが飛び上がる。


「? 痛くない」

「何が痛くないんだ? それに、ヒョウキも何で床に寝そべっているんだ?」

「シンにやられた……」

「また怒らせたのか。いい加減、学習しろ」


 ダーク様が手を貸して起き上がらせていると、セイさんも戻って来た。


「セイも戻って来たから帰ろうか。ダークも来る?」

「是非と言いたい所だが、急ぎの用事があってな。また誘ってくれ」

「うん。――ヒョウキ、そんな期待に満ちた目をしても絶対に誘わないから」


 ミナモ様にまで呆れられている。また愛想を尽かされないといいけど。


「ひょうき、ばいばーい」

「――っ! カハル! やっぱり、俺にはお前だけだ!」


 カハルちゃんの優しさに舞い上がっていると、また痛い目に――。


 ビシャーーーンッ‼ と凄い音の雷が落ちた。


「ぐはっ……」


 凄い! あれでもまだ生きている。ピクピクするだけで済むなんて、本当にどんな体をしているのだろう? 先程何があったか全てを理解したダーク様が、嫌そうな顔をしてから、溜息を吐いているミナモ様の肩を叩き帰って行った。


「さぁ、帰るよ」


 一人、清々しそうなシン様に連れられてお家に帰る。何だか癒されたくなった僕達は、木の実を持って玄関前にいたアケビちゃんに飛び付き、心ゆくまでモフモフさせて貰った。今度、癒しが最も必要なミナモ様をお誘いしようと思いながら……。


ヴァンちゃんの目力にセイが負けました。役目を終えたら、さっさと寝るマイペースな子です。お疲れ様、ヴァンちゃん。

ヒョウキは何があっても生き残りそうですね。謎な生き物です。後は学習能力さえあれば……。


次話は、事件が起きます。


お読み頂きありがとうございました。


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