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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0217.合言葉は『脂肪を燃やせ!』

「でも、最近はカハルちゃんに買ってあげたいなぁと思う物が沢山あるので、八割に減らそうかと考え中です」


「お前ら無欲過ぎないか? 玩具やお菓子が欲しいとか遊びに行きたいとか、お前らの年ぐらいなら思うものじゃないのか?」


「う~ん……。毎日働いていて、休みの日は村のお手伝いをしたりしているので、どこかに行くとかはしないですね。お菓子も行商の人が来た時にしか買えませんし……」


「出掛けるとしたら、新しい武器を作って貰う時ぐらいか?」


 ヴァンちゃんと頷き合っていると、ヒョウキ様にガバッと抱き締められてから執務机の上に下ろされる。


「何か不憫になってきた。よしっ、俺のお菓子コレクションを解放してやろう。――見よ!」


 ヒョウキ様の執務机の後ろは壁一面、小さく区切られて全部に艶やかで濃い茶色の扉が付いている。それを次々とヒョウキ様が開けていく。


「好きな物を食べていいぞ。どれにする?」


 きっと今、僕達の目はキラキラとしている事だろう。お菓子屋さんよりも凄い! 大きな瓶に色とりどりのお菓子が入っている。大粒の飴にクッキーやチョコレート、クラッカー、グミなどなど。


「こんなに溜め込んでいたのですか? 没収します」

「ミナモ、酷い事を言うなっ。俺の唯一の癒しを取り上げる気か⁉」

「確かに凄い量ですね」

「メイド長まで⁉ いいじゃん、ご褒美に城の皆にあげたりもしているんだからさ。全部、俺が食べている訳じゃないぞ」


 僕達の為に見せてくれた所為でヒョウキ様がピンチだ。お菓子を没収されるなんて、僕なら一週間は泣いて暮らせる自信がある。ここは何とか助けなければ!


 そんな僕達には目もくれずヴァンちゃんが棚を器用に登って行く。そして、赤や黄色やオレンジに青などの、丸くてツヤツヤの粒がいっぱい入った瓶をペシペシと叩く。


「ヒョウキ様、これは何ですか?」


 キラキラのお目目のヴァンちゃんに全員が微笑む。ヴァンちゃんが可愛いから全て良し!


「それはチョコレートだぞ。溶けないように糖衣で覆ってあるんだ。それがいいのか?」


「これにする。後、まん丸カステラも欲しい」

「おう、任せとけ。ニコはどれがいいんだ?」

「えーと、えーと……」

「ゆっくり選んでいいぞ。俺のお薦めはジェリービーンズだ」


 そら豆型で淡い色をしている。食べた事がないやつだ。


「あの、どんなお菓子ですか?」

「ゼリーを砂糖でコーティングした感じだな。一個食べてみるか?」

「はい」


 黄緑色を手の平に乗せて貰う。ぽこっと口に入れると、お砂糖のシャリシャリとゼリーのぷにっとした食感が楽しい。


「これを下さい。後は……マシュマロも下さい」

「じゃあ、帰りに持って行けるように準備しといてやるな」


 ヴァンちゃんとヒョウキ様の足に抱き付きお礼を言うと、破顔して頭を撫でてくれる。


「いつでも分けてやるからな。俺が言うのも何だが、食べ過ぎには気を付けろよ」


 慌てて頷く。最近、美味しい物ばかり出てくるので、ついつい食べ過ぎてしまうのだ。お仕事で走り回って脂肪を燃焼させねば!


「行って来ます。ヴァンちゃん、合言葉は『脂肪を燃やせ!』だよ」

「おー、『脂肪を燃やせ!』。菓子を我が手に~」


 拳を天に突き上げて凄い勢いでヴァンちゃんが走って行く。ヒョウキ様達の笑い声に背中を押されながら、僕も慌てて走り出すのだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ただいま。――甘い匂いがするな」


 鼻をスンスンとさせながらセイさんが部屋へ入って来て、お砂糖が掛かったまん丸のカステラを夢中で食べているヴァンちゃんに目を留める。


「――はむはむ。もぐもぐ……」


 まだ気付かない。セイさんと一緒に黙って見守る。


「はぐっ。もぐもぐ……」


 次の一つに手を伸ばそうとしたヴァンちゃんが、やっと気付いたようで、ゆっくりと目の前の足を下から上に見て行く。


「ただいま、ヴァン。菓子を食べ過ぎるとご飯が食べられなくなるぞ」

「お帰りなさい。止まらない美味さ」


 そう言って、セイさんにカステラを差し出す。


「いや、俺はいい。ヴァンが食べろ」


 コクッと頷いたヴァンちゃんが口に入れようとして動きを止める。先程の言葉が頭を巡っているのだろう。残念そうに紙の袋に戻し、お砂糖が付いた手をペロッと舐めている。


「おいしいヴァンちゃんの手、期間限定で売り出し中です」

「買占めさせろ」


 ふざけて言った僕の言葉に戻って来たダーク様が反応している。


「お、俺も欲しい!」


 ホノオ様も欲しいのか。本当にいつもタイミングが悪いよね。


「駄目だ。俺が先に買い占めた」

「ヴァンは承諾していないだろう⁉」

「どなた様も駄目です」


 最後はメイド長さんがヴァンちゃんを攫って行った。「あ~……」と小さく叫ぶヴァンちゃんに手を振る。綺麗にして貰ってくるんだよ~。そして、残された人達を見上げる。


ヴァンちゃんのお蔭で没収を免れました。可愛いは最強です。

書類配達で脂肪燃焼を果たしたヴァンちゃんがカステラに夢中です。あ~、間近で見たい……。

最後はメイド長さんが連れ去ります。王様だろうとメイド魂に火が点いたメイド長さんは止められません。


次話は、とうとうダークが訴えられます。


お読み頂きありがとうございました。

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