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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0215.今日のおやつは何だっけ?

お読み頂きありがとうございます。

途中からトオミ君の視点に変わります。

「あっ、ニコちゃん。良かったわ、来てくれて」

「何かありましたか?」


「クマちゃんの所で求人しているでしょう。物凄く応募があってね、契約書に書いてあったように、受付の人が条件に合わない人を不合格にしている状態なのよ」


「ああ、ありましたね。一定数を越えたら、企業の代わりにベテランの面接官が絞り込むって。確かクマちゃんは五人にして欲しいって頼んでいた気が……」


「そうそう。でね、早めに打ち切るか、続けるか聞いて欲しいって頼まれたのよ。ニコちゃん、もっと近寄ってくれるかしら。――実はね、仕事じゃなくてクマちゃん目当ての人が多過ぎて困っているのよ」


 そんなに応募が来たんだ。嬉しい悲鳴だなぁと思っていたら、小声で伝えられた内容に驚く。確かにクマちゃんは可愛いけど、仕事する気が無いんじゃなぁ。


「少しお待ち頂いてもいいですか?」

「ええ。いつでも声を掛けてね」

「はーい」


 邪魔にならないように隅っこに行き、通信の鏡でフォレスト様に連絡を取る。


「白族のニコです。フォレスト様、取れますか?」

「――あら、ニコちゃん。どうしたの?」

「あっ、精霊さん、こんにちは。フォレスト様はいらっしゃらないのですか?」

「今、調合中で手が離せないのよ。伝言しましょうか?」

「用事があるのはクマちゃんになんです。近くに居ますか?」

「ええ、連れて来るわね」


 そう言えば、どの部屋で過ごしているのか全然知らないな。フォレスト様の家も探検してみたいなぁ。――おっ、来たかな? 


「お待たせ。クマちゃん、この鏡を見てね」

「ありがとうでキュ。ニコちゃん、どうしたでキュか?」

「今、土の国に居るんですけど、花屋さんの面接希望の方が沢山来ていて――」


 先程聞いた事を伝えると、うーんと腕を組んでクマちゃんが考えている。


「いま残っている人数を教えて貰ってもいいでキュか?」


「ちょっと待って下さいね。――部長さん、すみません。本当に面接を受けたい人が何人か分かりますか?」


「私が聞いた時は三人だったわ」

「ありがとうございます。――クマちゃん、三人です」


「ありがとキュ。――打ち切りでいいでキュ。これ以上は迷惑になるだけだと思うでキュ。明日、複写の紙を貰いに行くでキュ」


「はい、伝えておきますね。それでは」

「また後でなのキュ」


 通信を終え、指示を出している部長さんが空くのを待つ。


「お待たせしてごめんなさいね。どうだった?」

「打ち切りで良いそうです。明日、複写の紙を貰いに来ますとの事でした」

「そう。では、私がきちんと伝えておきます」

「はい、お願いします。持って行く書類はありますか?」

「これとこれをお願いします。紙には書き込んでおいたわ」

「確かに。では、失礼します」


 魔法道に向かいながら、今日のおやつは何だっけと考える。色んな人と話したお蔭か寂しさが薄れたので、食欲も戻って来たようだ。ちょうど廊下に誰も居ないので、適当に歌ってみる。


 ♪今日のおやつは何だっけ? ほら、細長い、あいつさ~

  今日のおやつは何だっけ? ほら、カスタードたっぷりの、あいつさ~

  今日のおやつは何だっけ? ほら、あいつの名前は……ん~、何だっけ?

  あ~、困った、出てこない ほら、あいつさ、あいつだよ~

  シュークリームの仲間みたいな、あいつだよ~


 途中からぴょこんぴょこんとスキップしつつ歌う。……困った、本当に出てこない。


「――エクレアじゃないのか?」

「それだーーーっ!」


 上半身を捻って振り返り、後ろから教えてくれた人を思わず指でビシーッと指す。おっと、いけない、いけない、人を指さしちゃいけません。テンションが上がってしまった。


「あれ? トオミさんじゃないですか。あっ、ぬいぐるみさんの配達ですね」

「ああ。さっきの歌は何だ?」


「適当に歌っていれば、口からポロッと名前が出てくるかなと思いまして。いや~、出てこなかった……」


「そ、そうか。役に立てて良かった」

「はい、ありがとうございます。これで、スッキリ帰れます。それでは、また」

「ああ、またな」


 さ~て、エクレアを頬張るぞ! ゴーゴー!


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ニコが去った後に、柱の影や扉の隙間から次々と苦しそうに城の人達が出て来る。俺の横ではタオルを巻いた作業着姿の人が爆笑している。


「ぶはははっ、何だよ、あの破壊力抜群の歌! あー、腹いてぇ。ぶはっ」


 そのまま、お腹を押さえて思い出したように噴き出しながら去って行く。


「君、ナイスファイトだよ。よく冷静に話せたね。俺なんて笑いを堪えるのに全身全霊を注いでいたからね。あっ、また笑いの発作が、ぶはっ、き、来た! あはははっ」


「え、あー、どうも?」


「も~、今日のおやつが何なのか気になって、気になって。それなのに、ぶふっ、『あいつの名前は……ん~、何だっけ?』だよ。参っちゃうよね!」


 次々と城の人達が感想を言って、俺の肩を叩いて去って行く。足取りが危なっかしいが大丈夫だろうか? 廊下でまだプルプルと体を震わせている人達を横目に宰相様の所に向かう。


クマちゃん目当ての人が多過ぎて面接官がキレ気味です。あまりの倍率に驚いて本当に受けたい人が帰ってしまいそうですね。

ポロッと口から出ませんでした(笑)。トオミ君、冷静な受け答えをありがとう。誰もツッコミをする人がいない所でした。


次話は、もちろんエクレアを頬張りますよ~。


お読み頂きありがとうございました。

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