0214.喜びを分かち合いましょう
「ほっほっほ、仲が良いですのぉ。何でも自分でやってみたい年頃ですかな?」
「そうだね。もう少し大きくなったら出来るよって言っても、今やりたいの! ってこの膨れた頬が主張するんだよね」
シン様に頬をツンツンされて「むー」と抗議の声を上げている。僕とヴァンちゃんもやりたくてウズウズしております。そこへ、アキラさんとクマちゃんが来る。確認などが終わったようだ。
「小さい頃のアキラも駄々をこねて、そんな風に頬を膨らませておりましたのぉ」
「ちょ、や、止めて下さい。恥ずかしい話を皆さんにしないで下さい!」
照れて顔が赤くなっている。こいうのあるよね。親しい人が自分の失敗談とかを他の人に話してしまうって事が。いたたまれないので止めて欲しいと僕も思います。暴露されたくない失敗談が多過ぎるのが、そもそもの原因か……。
「みんな似た様なものだから大丈夫だよ。ね、ヴァンちゃん」
「ん。可愛い」
シン様とヴァンちゃんに励まされ、弱ったなぁという顔でアキラさんがしゃがみ込む。
「ヴァンちゃんて大物になりそうだよね」
「? これ以上は大きくならない」
「はははっ、身長じゃないよ。君はそのままでいてね」
「ん? 俺は俺以外にはなれない。出来る事をやっていく」
「うん。そういうブレない所が良いよね。是非スカウトしたいな」
「駄目だよ。ヴァンちゃんとニコちゃんは、うちの子なんだから」
「めっ、よぉ。あげにゃい!」
感激しているとクマちゃんにツンツンされる。
「嬉しいのキュ? 感激しちゃってるでキュ? この幸せ者~、うりうりでキュ」
「クマちゃんも共に喜びを分かち合いましょうよ~。バンザーイ」
クマちゃんの腕を持ってバンザイさせる。くっ、何て可愛いの!
「俺にもやらせて。――バンザーイ」
「キュー!」
「僕も……いえ、何でもありません」
アキラさんが何とか踏み止まっている。やらないの? とクマちゃんがアキラさんを見上げている。僕達もじっと見ながら、やっちゃえ~と念も送ってみる。
「あー、その、えーと……。や、やります!」
よく言った! とヴァンちゃんと共に足をバシバシ叩く。
「何でヴァンちゃん達の方が嬉しそうなの? ははは、参ったなぁ……。えーと、クマちゃん、失礼します」
小さくて細い腕をそーっと持っている。そこまで慎重にしなくても折れたりしませんよ? くすっぐたいのかクマちゃんの口元がひくっと動いている。
「バンザーイ」
「キュー!」
あー、アキラさんが凄く嬉しそう。また一人、クマちゃんの魅力に落ちた。まったく、罪な男ですな。
「アキラがそんなにはしゃいでいるのを見るのは久し振りだのぉ」
「えっ⁉ すみません……」
「何を謝る事がある。最近、肩肘張って無理しておっただろう。もっと、そうやって楽しめばいい。のぉ、クマちゃん?」
「そうでキュ。この前も言ったでキュ? そのままのアキラしゃんが良いのでキュ」
「……ありがとう。もっと自分の気持ちを大切にしてみるよ」
満足気に頷いているクマちゃんをアキラさんが抱き上げた所で、シン様が声を掛ける。
「今日の用件はもう終わったの?」
「モキュ。アキラさんのお店で決定なのキュ。欲しい物も伝え終わって、ポンポコさんのお屋敷の人から朝顔の代金も受け取ったのキュ。いつでも帰れまキュ」
「そう。他に何か必要な物があれば、僕が町に連れて行ってあげるよ」
「今は大丈夫なのキュ。後はセイさんにこの前の棚とかを運んで貰うのと、金曜日の面接でキュね」
「何人雇うのかのぉ?」
「一人でキュ。状況に合わせて増やしていくでキュ」
「そうか。困ったらいつでも相談に来るといい。もう帰るのかな?」
「そうさせて貰うよ。そうだ、伝え忘れていた。ダークがよろしく伝えてくれって言っていたよ。みんな、帰るから掴まってね」
僕とヴァンちゃんは配達、クマちゃんはフォレストさんの所へ。シン様とカハルちゃんはお家で過ごすそうだ。
「帰りはセイと一緒に帰って来てね。お仕事頑張るんだよ」
「がんばるんだにょー」
シン様の真似をしているらしい。手を振ってくれたカハルちゃんが目の前から消える。はぁ、暫くお別れかと俯くと、ヒョウキ様に顔を覗き込まれる。
「そんな残念そうな顔すんな。今日のおやつはカスタードたっぷりの美味しいエクレアだぞ。ほれ、頑張って来い」
いつもなら心躍る筈なのに、今は無理だ。自分で思っていたよりもずっと、カハルちゃんに飢えていたらしい。仕事に集中して気分を変えてこよう。
ニコちゃんは色々とやらかしているので、過去をつつかれたくありません。
いじる方はネタの宝庫でかなり楽しいです(笑)。
クマちゃんがモモに続き、アキラも攻略しました。罪な男は次は誰を落とすのでしょうかね~。
次話は、ニコちゃんが歌います。
お読み頂きありがとうございました。




