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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0213.カハルちゃん、キャベツ投げます

「皆様、ようこそおいで下さいました。どうぞ、こちらのお席へ。ニコちゃん、見本を貰うね。持って来てくれて、ありがとう」


「いえ。僕も一緒に見たんですけど、綺麗で楽しかったです」

「それは良かった。座れる? 私が持ち上げようか?」

「では、お願いします」


 アキラさんにソファーに座らせて貰う。それを見ていたヴァンちゃんもアキラさんに腕を広げて見せる。


「はははっ。是非やらせて下さい。――はい、どうぞ」

「ありがとうございます」


 にっこり笑ったアキラさんが頷いて対面の席に座った所で、ポンポコさんが話し始める。


「クマちゃん、お店見学はしてみたかのぉ?」


「モキュ。でも、中々いい所が無かったでキュ。最後に行ったお店が気に入ったんでキュけど、アキラしゃんのお店だったでキュ。見本まで貸して貰えて、ありがたかったでキュ」


「私も偶然会えて嬉しかったよ。きっと縁があるのだね」


 ウンウンと頷くクマちゃんに、何枚かの紙が渡される。


「見積もりだよ。私の店と比べてみてね」


 真剣に見比べるクマちゃんを邪魔しないように大人しくお茶を飲む。今日はお菓子がポンポコさんの前に置かれていない。本格的にダイエットを始めたのだろうか?


「ふにゃ……。おとうちゃ、ここ、どこぉ?」

「カハル、ここはマンリョウの家だよ。眠いなら寝てていいよ」

「う……ん……」


 直ぐに寝てしまった。体がまだ本調子じゃない所為だろうか?


「紹介して頂けますかのぉ」

「僕の娘のカハルだよ。クマちゃんのお店の出資者だね」

「赤子が、ですか? 実際は貴方ではなく?」

「本当にカハルがだよ。……そんなに知りたいの?」


 毛がブワッと逆立った。弾かれたように顔を上げたクマちゃんとアキラさんと共に、周りをキョロキョロと見る。


「な、何キュ? ビリビリを感じたキュ」

「みんな、ごめんね。魔力を出し過ぎちゃった」

「供給失敗?」

「そうなんだよ、ヴァンちゃん。カハルに被害は無いから安心してね」

「ん。カハルちゃん、大丈夫。寝ていい」


 薄っすらと目を開けたカハルちゃんの頬をヴァンちゃんが優しく撫でると、ゆっくりと目が閉じていく。


「う、疑ってしまって申し訳ない。今までこんな幼い出資者を見た事が無かったので、ついですな……」


「分かってくれたのならいいよ。僕はここへ来たのは()()()だから庭を見せて貰ってもいいかな? クマちゃんは、その間にゆっくり見るといいよ」


「ありがとでキュ。鯉さんが居るのでキュよ。キャベツが好きなのキュ」

「そうなんだ。キャベツはあるかな?」

「ええ、参りましょう。すまんのぉ、用意してくれるかい」


 礼をして部下の人が消える。何だか段々とポンポコさんの顔色が悪くなってきている気がする。ダイエットの頑張り過ぎかな?


 玄関に行くと早速、クマちゃんから買った朝顔が並べられている。


「明日、朝顔好きの友人が来るので自慢しようと思ってのぉ。いつも普通の物ばかり育てていると馬鹿にされて辟易しておったのよ。きっと、悔しがるぞ。ほっほっほ」


 ライバルか。笑顔で嫌味を言い合っていそうな気がする。まぁ、それすら楽しいのだろう。そうじゃなきゃ、嫌いな人を何度も家に呼ばないもんね。


「カハル、滝があるよ。凄いねぇ」

「ばしゃーなのぉ」

「ふふふ。ばしゃーだねぇ。ススキもあるよ」

「ふぅあしゃー」


 全員で笑いを堪える。風で揺れたススキも、その一言で面白く見えるから不思議だ。


「寂しいイメージだったが、これからは違う目線で見れそうじゃのぉ」


 楽しそうに歩くポンポコさんは顔色が良くなってきた。カハルちゃんのお蔭かな?


「ニコ、ピンクの花がいっぱい咲いてる」

「本当だね。何の花だろうね?」

「あれは百日紅さるすべりじゃよ。綺麗だのぉ」

「あの木に登るとお猿さんが滑る?」


「木肌がツルツルとしているから猿も落ちると言われておるのぉ。ヴァン、登ってみるかい?」


「止めておく。お猿さんが無理なら俺も無理」


「はははっ、そうか、そうか。――ん? おぉ、すまんのぉ。キャベツを持って来て貰ったから、そろそろ池へ行こうか」


 池に行くとこの前の様に鯉が寄って来る。お口をパクパクして、早くご飯をくれ~と言っているように見える。


「はい、カハル。投げてごらん」

「うんっ。えいっ!」


 届かずに池の縁に落ちた。僕が拾ってあげようと手を伸ばすと、鯉が身を乗り出して凄い勢いで口に咥えて持ち去って行った。僕の手は食べられていないよね? と確認する。良かった、部分ハゲになっていたらどうしようかと思った。


「にこちゃ、だいじょーぶ? ごめんねぇ」

「気にしなくて大丈夫ですよ。もう一回投げてみましょう」

「うん。おとうちゃ、いけのうえまでぇ、おにぇがいしまーす」


「池の上にカハルを差し出すなんて怖くて出来ないよ。もう一回投げたら届くかもしれないよ。ね?」


「うー……。じゃあ、がんばるのぉ」


 もう一度、キャベツを「えいっ」と投げる。あぁ、届かない――と思ったら強風が吹いて見事に池へ落ちた。おぉ、沢山集まって来た。


「むー、おとうちゃでしょぉ。まほうなのぉ」

「ふふっ、ばれちゃった。あー、そんなに膨れないで。機嫌を直して?」


 抗議するようにシン様の抱っこしてくれている手をペシペシ叩いている。でも、シン様が笑み崩れるのを我慢しているのでご褒美でしかない。


マンリョウが口を滑らせて、シンに威圧されてしまいました。

内心、「やっちまったーーー!」と思っているかもしれません(笑)。

ニコちゃん、部分ハゲを免れました。フォレストに毛生え薬を作って貰う所でしたね~。


次話は、クマちゃんがバンザーイします。


お読み頂きありがとうございました。

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