0212.朝顔、お届けします
「クマちゃん、これも運びますか?」
「お願いしまキュ。ヴァンちゃんはこれをお願いキュ」
「了解」
ポンポコさんに見せる約束になっていた朝顔を地下のお花畑から運び出す。
「――よいしょっと。これで全部ですか?」
「そうでキュ。とっても助かったのキュ。ありがとうキュ」
「いえいえ。シン様、この五つでお願いします」
「うん。迎えに来てくれる馬車に載るかな? 無理なら僕がマンリョウの家に直接持って行くけど」
この前の馬車を思い出す。う~ん……載らないかも。
「無理そうな気がするでキュ。でも、この前、持って行くって言ったから更に大きい馬車とかになっていないでキュかね?」
「そこまで大きい馬車は無いんじゃないかな。皆を魔法道に運んであげるから、マンリョウの家に着いたら連絡を頂戴ね。僕が移動の魔法で直ぐに行くから」
「分かったでキュ。お願いしまキュ」
にっこり笑ったシン様に皆で抱き付く。
「セイ、行くよ」
「ああ」
お迎えの馬車はこの前と同じ位のサイズだった。
「朝顔の鉢植えがあると伺っているのですが、どちらに?」
「別の人がポンポコさんのお屋敷に持って来てくれます」
「そうでしたか。――馬車の後ろから付いて来てくれ!」
少し離れた所にある荷馬車に声を掛けている。これなら、シン様も一緒に行けたなと残念に思う。
「では、参りましょうか」
「はいでキュ」
馬車の中では、しりとりをしながら過ごす。クマちゃん、ヴァンちゃん、僕の順だ。
「りんごでキュ」
「ごま」
「魔法」
「うさぎでキュ」
「ぎ……。餃子」
「ざ? う~ん……。在庫」
「腰でキュ」
「生姜」
「ガラス」
「スイカでキュ」
気付けば振動が無くなっており、馬車の扉は開いている。そして、微笑ましそうにポンポコさんとお屋敷の人達が、僕達のしりとりする様子をを見ている。
「うわっ! ヴァンちゃん、クマちゃん、着いてますよ!」
「モキャ⁉ いつの間にでキュ!」
「やっちまった」
「ほっほっほ。みんな、よく来たのぉ。朝から可愛い物が見れたわい。さぁ、おいで」
恥ずかしさを覚えながら後ろを付いて行く。夢中になり過ぎた……。
「朝顔は別の人が運んでくれると聞いたが、いつ頃、来るのかのぉ?」
「あっ、そうだった。連絡しなきゃ。――シン様、ニコです」
「はーい、着いたかな?」
「今、着いてお庭を歩いている所です」
「了解。玄関前で待っていてくれるかな?」
「はーい」
通信を切り、ポンポコさんの顔を見上げると、引き攣っているように見える。
「あの、どうかされましたか?」
「……あっ、いや。相変わらずの美貌だなと驚いてしまってのぉ」
「そうなんです。凄い美人さんで眼福ですよねぇ」
言われた通りに玄関前で止まる。ここで待っていればいいんだよね?
「――到着。持って来たよ」
お屋敷の人がざわついて武器を取り出したり、ポンポコさんを自分の背に庇ったりしている。
「皆、落ち着いておくれ。儂のお客様だ。武器を収めさない。シン様、失礼致しました」
「いいよ、気にしなくて。みんな、ごめんね。朝顔を運んで来たんだよ。はい、どうぞ」
ようやく緊張が緩む。初めて移動の魔法を見るとビックリしちゃうよね。
「ありがとうございます。おぉ、どれも素晴らしい! オレンジと白の組み合わせが実に良い。――ん? この鉢は白い朝顔かな?」
「花の中を見て欲しいのキュ。紫に青にピンクと色々あるのでキュ」
「――おぉ、これは面白いのぉ。すまんが、全て買い取らせてくれんかね」
「モキュ。お世話になっているから特別価格でキュ。一鉢、二千圓でいいのキュ」
「安すぎんかのぉ? 遠慮せずに言っておくれ」
「いいのキュ。その代わり、困ったら頼っちゃうのキュ」
「ほっほっほ。では、存分に力を貸すとしよう。中で支払うから、領収書を貰えるかのぉ」
「モキュ」
お屋敷の中を進んで行くとお高そうな壺を発見!
「ポンポコさん、これは桃の国の壺ですか?」
「よく分かったのぉ。詳しいのかい?」
「全然です。お高そうな壺は桃の国っていうイメージがありまして」
「陶器作りが盛んだからのぉ。これは桃の国の友人から貰ったもので、いま流行のデザインだと言っておったわい」
それを聞いてモモ様の顔を思い浮かべる。今頃、写真を支えにお仕事を頑張っているのだろうか?
「どうぞ、お入り下さい」
この前と同じ部屋に通されると、アキラさんが待っていた。
しりとりに夢中で着いた事に気付いていない三人です。
クマちゃんは「でキュ」というので、言葉の語尾はどこ⁉ と少し頭が混乱して、「で」で考えて書き直す事になりました(笑)。二人は普通に対応していて凄いです。
お金持ちの家には壺です。作者の勝手なイメージです(笑)。
次話は、カハルが鯉に餌をあげます。
お読み頂きありがとうございました。




