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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0211.謎多きカゲちゃん

「ただいま戻りました」

「ニコちゃん、お帰りなさい」


 定時で終わらせるつもりだったが、三十分オーバーしてしまった。途中で大量に追加されたのが痛かったなぁ。


 フォレスト様の所から既に戻って来ていたクマちゃんが、カゲちゃんの頭に掴まりながら乗っている。僕も背中に乗れればなぁと思いながら見ていたら、カゲちゃんが机の影に入り姿を消す。あれ、どこに行ったのかな? とキョロキョロしていたら、僕の影からにゅっと現れた。


「おわっ!」

「ふっふっふ、凄いでキュ? 影の中を移動出来ちゃうでキュ」

「影の中を移動している時って、どんな感じですか?」

「逆さまな世界でキュよ。クマ達と皆の間に透明な床がある感じで、皆の靴底が見えるのデキュ」


 いつの間にか帰って来ていたヴァンちゃんが興味深げに質問する。


「真横から見て上からある物を順に言っていくと、この世界の天井、人、床。影の世界の床、人、天井の順?」


「そうキュ! 靴底と靴底が合わさっているのキュよ。それで、影の世界は障害物があってもすり抜けちゃうのキュ。移動速度が段違いでキュよ」


「俺も行きたい」

「はいっ、僕も行きたいです!」


 う~んと考えたカゲちゃんの姿が突如、人型に変わる。髪の毛や瞳は狼の時と同じく灰色だ。


「――みんな、来て。まとめて抱っこする」


 頭に乗っているクマちゃんが目をぱちくりさせている。そりゃ、驚きますよね~。僕も毛が逆立ってしまった。


 順応が早いヴァンちゃんが、カゲちゃんの足を登っていく。置いて行かれないように僕も急がなくちゃ。


「いい? じゃあ、行く」


 椅子の影に足を踏み入れると、直ぐに逆さの世界が広がる。


「おぉ、本当に靴底が見える」

「ねぇ。あっ、シン様達が帰って来たよ。……足が長いですね」

「……そうでキュね」


 何だか物悲しい気分になってしまった。下から見るとより長く見えるものなんですね……。


「ただいま。あれ、ヴァンちゃん達は? まだ、帰って来ていないの?」

「おぅ、お帰り。ヴァン達なら影の世界に居るぞ」

「影の世界?」

「ヒョウキが影に住まわせている狼の能力じゃないか?」

「ああ、成程ね。――みんな、戻っておいで」


 シン様が一緒に話していたセイさんの影に向かって声を掛けている。


「戻るか?」

「はい、お願いします」


 一歩踏み出しただけなのに、十歩分位は進んでいる。カゲちゃんの能力は凄いなぁ。セイさんの影からにゅっと元の世界へ。


「おぉ、戻った」

「うわぁ、変な感じがする~」


 カゲちゃんは僕達を下ろすと、直ぐに狼の姿に戻ってしまった。クマちゃんを頭から落とさないとは、やりますな。


「楽しかった?」

「モキュ。逆さ吊りでも頭から落ちないのキュ。不思議キュ~」

「逆さ吊り? ねぇ、僕も連れて行ってくれるかな?」

「ワフッ」


 カゲちゃんがお手のように手を差し出し、シン様が握る。カゲちゃんは人型になるのがあまり好きではないのかも?


「セイ、影を作って」


 影が落ちた途端、シン様が床に吸い込まれるように消えた。待つ事暫し――。


「――ただいま。あっちからニコちゃん達に声を掛けたんだけど聞こえた?」


「いいえ、聞こえませんでした。でも、こちらの世界の声は影の世界で聞こえますよね」


「うん。便利な能力だよね」


「色々と制限があるけどな。悪いけど、詳細は秘密な。お前達は知らない方がいい」


 謎多きカゲちゃん。なんかカッコイイ。後ろを振り向くとクマちゃんとヴァンちゃんが僕の影を踏み踏みしている。


「入れない」

「でキュね。ニコちゃんのなら、うっかり入れそうなのにでキュ。うりうりキュー」


 最後のうりうりキューはいじめですか? あっ、ヴァンちゃんまで!


「俺も混ぜろ」


 ダーク様も加わり、僕の影さんが踏まれまくる。


「え~ん、カハルちゃーん、皆が酷いんです!」

「なかにゃいのよ。みんな、めっ、なのよ。にこちゃには、かわいい、きゃわいいしゅるの。よちよち」


 小さな手で撫でられて全てがどうでもよくなった。今は満喫せねば! えへへへ……。次は耳をお願いします。


「みんな、そろそろ帰るよ。掴まって」

「じゃあな。シン、マンリョウによろしく伝えてくれ。それと、穏便にな。出来なかった場合、この前の事をばらすぞ」


 嫌そうな顔になったシン様を見て小さく笑うとダーク様が帰って行く。この前の事って何だろう? カゲちゃんをモフモフと撫でていたセイさんが近くに来たので聞いてみる。


「何の事か分かりますか?」

「いや、俺も知らない。だが、ダークとシンなら深刻な争いになる事は無いから、ほっといても大丈夫だろう」


 付き合いが長いセイさんが言うなら間違いないだろう。だとしたら、問題は穏便にの方かもしれない。シン様は心配性だから、よく知らないポンポコさんに過剰な反応をしてしまいそうだ。その時は僕が間に入って穏便にお話が進むように頑張ろう。


カゲちゃんは人型と狼だけでなく、色んな形に変われる凄い子です。

影ですら、おっちょこちょいと思われているニコちゃん……。

ニコちゃんの影なら入れる時が本当にあるんじゃないかとクマちゃんは思っています。


次話は、ポンポコさんに朝顔を持って行きます。


お読み頂きありがとうございました。



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