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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0210.新たなモフモフ

「はぁ……。今度から速攻で断ろう……」

「何を断るのかな、ヒョウキ?」

「あー、見合いをな――って、カハル⁉」

「おみあいしゅるの?」

「ご、誤解するな。押しかけて来た奴らも含めて全員断ったからな。大丈夫だぞ、信じてくれ」


 カハルちゃんが不思議そうにシン様を見る。何でわざわざ自分にそんな事を言って来るのかが分かっていないようだ。もしかして、カハルちゃんは物凄く鈍いのでは?


「無視でいいよ。ヒョウキの言動をいちいち考えるなんて面倒臭い。ミナモ、リストをくれるかな」


 今日も何気に酷いですね、シン様。凹んだヒョウキ様に同情しなくなった僕も似た様なものだろうか?


「はい。こちらが今日分です。大分数が減って来ましたね」

「そうだね。もう少し大きくなったら、カハルに魔物が残っていないか確認して貰わないとね」


 カハルちゃんがすちゃっと手を挙げる。了解! という事なのだろう。


「そう言えば、明日はクマちゃんとマンリョウさんの所に行くのですよね。どなたが付き添いでしょうか?」


「僕が行くよ。白ちゃん達は連れて行っていいの?」


「そうですね……。ヤナギさんをお借りすればなんとか凌げると思います。お二人共、午後はよろしくお願いしますね」


「頑張る」

「はい、お任せ下さい」


 頷いたミナモ様がダーク様達を見る。


「俺とセイは魔物退治に行く。カハルはクマと一緒に行くのか?」

「僕が一緒に連れて行くよ。ねー」

「ねぇー♪」


 顔を見合わせて同じ角度に首を傾げている。そんな仲良し親子の様子をヒョウキ様が羨ましそうに見ている。


「おはよう。ふあ~あ~」


 グイーッと伸びをしたホノオ様が大欠伸をしながらダルそうに歩いて来て、口を開いたまま止まる。顎が外れそうな姿を見てダーク様がやれやれと額を押さえている。きっとホノオ様のお父様も毎日、困り顔になっているのではないだろうか。未だに町中に居るやんちゃなお兄さんにしか見えないもんね。


「――カ、カハル⁉ 戻って来たのか! シン、抱っこさせてくれ!」

「駄目だよ。もう行かないと封印が解けちゃうよ。はい、涙目になってないで移動の魔法で行く」


 急き立てられて泣く泣く魔法を発動している。ほんとタイミングが悪い人だよね。


「カハル、行って来るね。ヒョウキ、よろしく」

「おとうちゃ、いってーらぁーしゃい」


 何、あの可愛い挨拶。ヒョウキ様が凄いにやけているので、カハルちゃんの身が心配になる。いざとなったらグーパンチしよう。……ヴァンちゃん、文鎮は止めようね。犯罪になってしまいます。


「ヒョウキ、牢に入れられないように注意しろよ。ニコ達は危険を感じたら遠慮なく殴れ。じゃあな、カハル」


「良い子にしているんだぞ」

「だーく、せい、ふぁいとぉ」


 嬉しそうに笑ったダーク様達が魔法で消える。その途端、元気に見送っていたカハルちゃんがシュンとなる。


「おい、どうした? 俺が居てやるから。な?」

「ひょーきはひょーきなのぉ。おとうちゃたちとはちがうのぉ」


 その人は一人きりで誰かの代わりにはならないという事なのだろう。僕達も配達に出ちゃうけど大丈夫かな?


「カハルさん、今日は良い子が居ますよ。カゲ、いらっしゃい」

「ワフッ」


 ヒョウキ様の影から灰色の中型犬? が姿を現す。


「ニコ達が居ない間はカゲをモフモフしていいぞ」

「うんっ。――はわぁ、ふわふわ」


 暖炉の前の絨毯にごろんと寝たカゲちゃんのお腹にカハルちゃんがモフッと埋もれる。


「お前達も触っていいぞ」


 ヒョウキ様の許しが出たので、みっちりと柔らかな毛で覆われている全身を撫で回す。特に胸の辺りは他よりも長い毛でモッフリと盛り上がっている。えへへ、手が埋まった。堪能してヴァンちゃんに目をやると、長いシッポがファサファサと左右に振られるのを見ている。


「カゲちゃんは犬ですか?」

「何にでも姿を変えられるんだけど、狼の姿をしている事が多いな」


 いまいち分からない。狼でもないっていう事なのかなぁ。


「見て貰った方が早いのではないですか?」

「そうだな。カハル、ちょっとごめんな。カゲ、本来の姿に戻れ」


 ブルッと身を震わせたカゲちゃんが黒い水たまりの様になる。これが本当の姿? 指をそーっと近づけると、すすすっと避けられる。


「元は魔物なんだよ。俺の親父に元々仕えていたんだけどさ、扱いが酷いから俺の魔力をガンガン注いで、親父から奪ってやった。今は俺の忠実な臣下だ」


 狼に戻ったカゲちゃんがお座りをして誇らし気に胸を張る。もっと一緒に遊びたいけど、そろそろ行かなくちゃね。


「カゲちゃん、ありがとうございました。ヴァンちゃん、行こう」

「うむ。カゲちゃん、カハルちゃん、バイバイ」


 寂しげに手を振るカハルちゃんに見送られ書類配達に向かった。


ヴァンちゃん、鉄の長い文鎮をバットのように握って動向を見守ります。ヒョウキ、逃げて!(笑)

カゲちゃんはヒョウキの力の影響で魔物ではなくなっているので討伐の対象にはなりません。


次話は、影の世界です。


お読み頂きありがとうございました。

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