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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0209.真にモテる男は?

「じゃあ、ここに走って来たのは何で?」

「ヴぁっちゃ、わかんにゃいの……」


 カハルちゃんも分からないのか。気になるから聞いて来よう。


「ヴァンちゃん、行こう」

「うむ」


 ダーク様も一緒に付いて来る。岩の上に登って日光浴? をしているオーラム・ガッスさんに近寄って行くと不思議そうに見て来る。


「コケー、コケコケコケ(すみません、卵はもう無いです)」

「あっ、違うんです。何で家まで走って行ったのかお聞きしたくて」


「コケッコ、コケコケ――――、コケコ(カハル様だけではなくシン様にも大変お世話になっているので、恩返しがしたかったのです。魔力……カハル様の場合は癒しの力ですね。これを溜める事で金の卵を作り出せますよというのをお伝えする為に、出来る瞬間をお見せしたかったんです。あの時、魔力が満タンまで後少しで、カハル様は会うと必ず癒しの力を下さるので、この期を逃してはならないと思いました)」


 通訳するとダーク様が成程と頷いている。


「他のニワトリが一緒に付いて来たのは何でだ?」


「コケココ、コココ、コケ――――、コケ(皆様に一緒に来て頂くには全員で走った方が効果的かと思って私が頼みました。それに、皆、カハル様のナデナデが大好きなので、不公平にならないようにです)」


 僕もカハルちゃんのナデナデは一味違うと思う。何というか幸せがプラスされているような気がする。


「理由も分かったし戻るか」


 ダーク様がじりじりと下がって行く。どうしたのかと思ったら、目がハートになったニワトリさんの包囲網が出来上がりつつある。完全に囲まれる前にダーク様が走って行ってしまった。モテモテですね。


「お邪魔しました。また明日」

「コー……ケー……」


 逃げられてしまったので鳴き声が切ない。ダーク様って人懐っこそうだけど、ズンズン近付かれるのは好きじゃないんだよね。


 片方の気持ちだけが大きければ大きいほど落胆も大きい。その所為でより過剰にアタックして大ダメージを受ける。好きな人だからこそ近くに行きたい気持ちがどんどん募っていく……。ほど良い距離って難しいよね。


「俺のナデナデでは駄目ですか?」


 そう言いながら、ヴァンちゃんが近くのニワトリさんを優しく撫でる。涙目になっていた周りのニワトリさんが一斉にヴァンちゃんを取り囲む。


「おぉ、いっぱい来た。よしよし。みんな、よしよし」


 真にモテる男はヴァンちゃんですか? そんな事を考えながらカハルちゃんを抱っこする。


「カハルちゃんも撫でてあげて下さい」

「うんっ。にゃでにゃで~♪」


 カハルちゃんが撫でるとニワトリさんの目に力が戻り、気持ちが高ぶったのか飛ぼうとしている。えっ、空を飛べちゃうの⁉ とワクワクして見守る。


「コケーーーーッ!」


 一メートル位の岩に登ったニワトリさんが気合の入った声を上げ空にバッと羽ばたく。――そして、ボテッと地面に落ちた。


「わっ、大丈夫ですか⁉」


 慌てて近寄ると、よれよれと起き上がる。


「コ、コケッ。コケーーーッ!(て、てへ。恥ずかしいーーーーっ!)」


 手羽根で顔を覆ってしまった。すると、仲間のニワトリさんが次々に背中を叩き「お前は良くやったよ」、「あれだけ飛べれば十分だ」と慰めている。僕もポスッとしておく。


「いつかは飛べますとも!」

「コ、コケーッ」


 感極まったニワトリさんが僕を羽根でガバッと抱き締めてくる。一緒に羽根に包まれたカハルちゃんが感心したように呟く。


「ねつれちゅねぇ~」

「ですねぇ。ニワトリさんは熱い生き物なんですよ」

「白ちゃん達、戻っておいで。ご飯だよー」


 シン様に呼ばれて、慌ててニワトリさん達に挨拶をしてご飯を食べに戻る。急いで卵かけご飯を頬張りながら確認もしていく。


「カハルちゃんはヒョウキ様に魔力供給して貰うんですか?」

「そうだね。――はい、お昼のバナナだよ。食べさせてあげてね」

「はい。ヴァンちゃん、その卵持って行くの?」

「ん? 高価だから何処に置けばいいか分からない」

「じゃあ、僕が預かっておくよ。片付けはいいから歯を磨いておいで。遅れちゃうよ」


 慌てて歯を磨いて鞄にガシガシと必要な物を詰める。おっと、バナナを忘れずにね!


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 執務室に入って行くとシーンとしている。


「誰も居ないね」

「会議か?」


 シン様とダーク様が顔を見合わせる。どちらも理由を知らないらしい。ヴァンちゃんがひょいと廊下を覗く。


「――来た」

「すみません、お待たせしてしまいましたか?」

「今来た所だから大丈夫だよ。何かあったの?」

「いえ、大した事ではありません。自業自得というべきでしょうか」


 ミナモ様の後から疲れ切った顔のヒョウキ様も入って来た。


ダークに興味が無くなったかに思えたニワトリさんですが、そんな訳がありません。ぞっこんです(笑)。

警戒心を捨てていなかったダークはさっさと逃げます。ニワトリさん、ヴァンちゃんにしときなよ(笑)。


次話は、新たなモフモフ登場です。


お読み頂きありがとうございました。


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