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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第一章 鏡の魔物
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0020.太古の歴史1

 地上に魔物が溢れていた時代。次々と強き者を配下に加え、ペルソナという魔物の王が誕生した。彼は圧倒的な力を有し、混沌としていた世界を統制していく。


 人間や動物達は追いやられた世界の隅で細々と暮らす事となる。だが、表向きでしか従っていない魔物や、彼の望みは魔物だけの世界だと信じて疑わない者もいた。そして、それらの者によって長き戦いの火蓋が切られる。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「早く逃げて! 退路は確保してあるから、振り返らずに走って!」

 

 必死に住民を逃がしているカハルの長い黒髪が熱風によって翻る。頬が煤で汚れ、服も血や泥で汚れている。だが、その美しさは少しも損なわれない。俺が、いくら綺麗だと言っても『目がおかしい』と少しも信じてはくれないが。


 家が真っ赤に燃え、崩れ落ちていく。脆いものだ。そして、それを造った人間も。だが、カハルはその全てを救い上げようとする。どれだけ罵られようが石を投げられようが、俺がそいつらに手を上げる事も許さない。馬鹿だなと思うと同時に、非常に愛おしいとも思う。


 今も子供に手を伸ばそうとする、2メートルはある牛の魔物に突っ込んでいく。赤い剣を召還すると、袈裟懸けに切り裂く。魔物は黒い塵となり消えていった。


「大丈夫? 立てる?」

 

 だが、カハルの差し伸べた腕は、子供に怯えと共に弾かれる。


「近寄るなっ、化け物!」

 

 カハルがその言葉に凍り付いている間に走り去って行く。


 新たな悲鳴が聞こえる。カハルは俯けていた顔を上げ、また次の人間を救う為に走って行く。拒否されたばかりだというのに。そして、全てが終わった後に、また一人で声も無く泣くのだろう。


 俺は溜息に苛立ちを混ぜて吐き出すと、腕を天に掲げ黒い稲妻を落とす。5、6体の魔物が一気に黒い塵となり消える。残りは2体。面倒臭いのが残ったな……。


 魔物がニヤニヤとこちらを見ている。中クラスの癖に余裕らしい。雄叫びを上げ突っ込んで来る――が、俺は一歩も動かない。


「グギャアァー⁉」

 

 驚きの声を上げ、空中に四肢を固定された魔物が暴れる。


「動きが早いのが自慢らしいが、残念だったな――消えろ」

 

 指をパチンと鳴らし術を発動させ、事前に張り巡らせておいた闇の糸から魔物の力を吸収すると、その姿は一瞬で塵と化す。さて、力も補給した事だし、カハルと合流するか。


 最後の一体はライオンに蝙蝠のような翼を生やした魔物だ。毒を持ち、馬鹿力で俊敏。体長は十メートル近い。


「カハル、まずは翼を落とすぞ」

「了解。動きを封じるね」

 

 俺達は短い言葉を交わすと走り出す。カハルの魔法で魔物の足元が一気に陥没する。慌てて飛ぼうとする魔物の鼻面にカハルが剣を振り下ろす。だが、毒の息を吐かれた為、剣から炎を噴出させ相殺する。


 その間に魔物の背に到達していた俺は、一気に剣を振り下ろす。気付いた魔物が片方の翼で弾き飛ばそうとしてくるが、もう遅い。ザクッと確かな手応えにそのまま振り抜く。


「フギャオォォァーーッ!」

 

 激しく身悶える魔物から距離を取る。その間にカハルが巨大な魔法陣を魔物の足元に展開する。発動させようとした瞬間、魔物が身震いし毒液をまき散らす。


 咄嗟にカハルを抱えて結界を張る。急作りで脆弱な為、あっという間に溶け落ちそうになる。舌打ちした俺の手にカハルがそっと手を重ねた瞬間、強固な結界に変貌する。あれだけ巨大な魔法陣を維持したまま、まだ魔法が使えるのかと俺は舌を巻く。


 肩で息をしながら、魔物が射殺しそうな目でこちらを見る。一瞬動きを止めた隙を見逃さず、カハルが魔法陣を発動する。


 業火で魔物の姿が見えなくなった。飛び出してくるかと身構えるが、一向にその気配がない。訝しげな俺に気付き、カハルがつと手を伸ばし指さす。


「逃げられないように、業火ごと結界で封じているの」

 

 あっさりと言っているが、幹部に次ぐ力のある魔物とそれを燃やし尽くす業火。そんな巨大な力を余裕で包み込んでいるだと?


「――恐ろしい女だな」

 

 カハルがチラッと俺を見上げた後、暗い口調で呟く。


「それでも、ペルソナに勝てないけどね……」


カハルと一緒にいると、ダークが弱く感じますね。

闇の魔法が得意な人なので、似た様な力を持つ魔物とは相性が悪いです。


次話は、主要な登場人物たちが多く出て来ます。

ですが、その前に「NICO&VAN 外伝集」をお届けします。


お読みいただきありがとうございました。


今後も「NICO&VAN」をよろしくお願い致します!

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