0207.祈りが通じた……
「どっちが勝つでキュかね?」
「私はダークが勝つと思うな。シンは?」
「んー……。ニコちゃんにしようかな」
皆が小声で喋っている。その間に火花が出なくなってきた。もしかして、勝てるかも⁉ なんて思ったのがいけなかったのか――。
「――あっ」
ボトッと火球が地面に落ちてしまった。ダーク様は? まだ、丸い火球がオレンジ色に輝いている。
「ま、負けた……」
恨めし気に見ているとダーク様がニヤリとする。
「俺の勝ちだな。願い事は何にさせて貰うかな」
「えっ、聞いていませんよ⁉」
「俺が何も賭けないと思ったのか? 甘いな」
「そんなのは却下です。詐欺だー!」
「人聞きが悪い事を言うな。こうしてやる」
「ひょえ~~~」
足首を持たれて逆さ吊りにされる。逆さでヴァンちゃんと目が合うという珍しい体験をしてしまった。
「ダーク、そのままお風呂に行ってね。風邪を引かないようによく温まるんだよ」
「ああ、了解。ヴァンもご所望か?」
ヴァンちゃんが自ら片足を差し出している。僕と交替なのかと思ったら、セイさんがやってくれるようだ。……あぁ、ブラブラと揺れて楽しそうにしている。ヴァンちゃんにはご褒美ですね。
みんなで百まで数えて温まって出てくると、既に布団が敷かれてカハルちゃんがスヤスヤと寝ている。あ~、お話がしたかった……。でも、これからは毎日一緒だもんね。そう……だよね? もうこれ以上は小さくならないよね?
そうだ、せっかく神様が居て下さるのだからお祈りしておこう。背中に向けて手を合わせる。よろしくお願い致しますっと。
背を向けてお皿を洗っていたシン様が急に振り向く。
「――ニコちゃん。今、僕に祈ったよね?」
「えっ⁉ は、はい。すみません」
「謝らなくてもいいよ。確約は出来ないけど、ニコちゃんのお願いなら全力で頑張るからね」
呆然としてしまう。本当に祈りが通じた……。神様って本当に聞いてくれるんだ……。
ヴァンちゃんが不思議そうに首を傾げてダーク様を見る。
「シンはとっくの昔に人を諦め、人の祈りを聞く事も無くなった。これが良いきっかけになればいいな」
気遣わしげにシン様を見るヴァンちゃんを、ダーク様が高い高いしてあげている。
「シン、外の片付けは終わったよ」
「モモ、ありがとう。そろそろ帰るかい?」
「うん。今日は本当に楽しかったよ、ありがとう。……ダークは泊まっていくの?」
「ああ」
「羨ましい……。はぁ、でも、今日は帰らないと。みんな、またね」
シン様と共に移動の魔法で消える。きっと撮り溜めた写真などを見て悲しさを紛らわせるのだろう。
「――ただいま。さっき、モモに言われて気が付いたんだけど、貰ったお茶を飲むのを忘れていたよ。今から飲む?」
「歯磨きしちゃいました」
「じゃあ、別の日にしよう。すぐに悪くなる物じゃないしね」
お花の世話をしていたクマちゃんが戻って来た。
「あれ、モモしゃんが居ないでキュ」
「伝言があるよ。『また、お出掛けする時には誘ってね』だって」
「モキュ。早速なんでキュけど、ポンポコさんの所に明後日行くのでキュ。皆が駄目そうなら、モモしゃんに頼みたいのでキュ」
「ああ、そうだったね。僕が一緒に行ってあげるよ」
「いいのキュ⁉ やったキュー!」
喜ぶクマちゃんを連れてシン様がお風呂に行く。その背中を見ながらダーク様がポツリと言う。
「暴走しなければいいが。はぁ、どいつもこいつも手が掛かる……」
哀愁が漂っております。カハルちゃんの周りの人達の中では、ダーク様がストッパー役なのだろう。セイさんも同じ感じかな? 視線を交わして溜息を吐く姿が切ない。頑張れ、最後の砦!
まだ遊ぼうと思ったけど、瞼が落ちて来た。うぅ、眠い……。
「ほら、布団に入れ」
セイさんに運ばれてカハルちゃんの隣に潜り込む。ヴァンちゃんは既に夢の世界に旅立ってダーク様に運ばれている。
もう限界だ。おやすみなさい……。
ニコちゃんは祈りが通じるのか半信半疑でしたが、ちゃんと届いてビックリです。
これから、ちょくちょくお祈りしてシンを笑わせていそうですね。
ダークもセイも苦労しています。自由で過激な人達の集まりですからね~。シン達と一緒に居るとダークが常識人に見えますね。
次話は、ニワトリじゃない⁉ です。
お読み頂きありがとうございました。




