0203.夏の楽しみ流します
「みんな、ご飯だよー」
おぅ、ついに竹を何に使うかが分かる! 竹に近付くと中を水が流れている。余計に訳が分からない。森の皆は茹でたトウモロコシを貰っているようだ。
「流しそうめんをするよ。箸と器を手に持ってね」
昼間に竹で作った物を渡され、器には茶色の液体が入っている。
「そうめんという麺を流すから、箸で掴んで汁に付けて食べてね」
お~、ワクワクする。水に乗って食べ物が運ばれてくるなんて初めてだ。背が低いので最終地点の近くに陣取る。
「いくよー」
今か今かと待っていると、白くて細い麺が流れて来た。
「――えいっ」
一本しか取れないなんて! 次に待ち構えていたヴァンちゃんもちょびっとしか掴めなかった。慌てて麺を追い掛けるが、置かれていたザルの中に落ちてしまった。
「「あー……」」
「――取れた? あー、うん。難しいよね」
確認しに来てくれたシン様に頭を撫でられる。何で最終地点にザルが設置されているのかが分かりました。僕らのように掴めない人が居るからですね……(泣)。
「段々と上手になるから。ほら、セイが流してくれているよ」
今度はシン様が最後尾に居てくれる。
「――来た! えいっ」
二本に増えました。悲しい……。
「ほっ」
ヴァンちゃんが半分程を掴む事に成功した。その後ろでシン様が全てを難なく掴む。
「ちょっと上達したかな? はい、ニコちゃん、あげる」
「ありがとうございます。やっと、食べられる~。はむっ」
ツルツルでおいしい。うどんはモチモチしていたけど、これはさらりと食べられてしまう。食欲が落ちた夏にはもってこいの麺だ。僕は落ちませんけどねっ。
「次、いくぞ」
ダーク様が上の方に陣取る。ワクワクしながら待つが一向に流れてこない。詰まっちゃったのかな?
「ダーク様が全部取った」
「えっ?」
目をやると、ごっそりと箸で掴んでいる。そして、ふと気付く。
「上で取られたら僕達は食べられないって事?」
「そうなるな」
次も一本も流れて来ない。悲しくなってシン様を見つめる。
「大丈夫だよ。曲がっている所から僕が流してあげるから」
シン様が少なめに流してくれる。今度こそ全部取ってやるのだ!
「――えいっ」
ほとんど取れた! 一本だけヴァンちゃんの所に流れて行く。
「――取れた」
全部取ったぞー。なんて清々しいんだ!
「ヴァンちゃんが今度は前で取っていいよ」
「うむ」
「――いくよー」
見事にヴァンちゃんが全てを掴んだ。
「すごいよ、ヴァンちゃん!」
「やった。この調子」
「全部取れた? 凄いねぇ」
シン様に頭を撫でられる。えへへ。もっと撫でて下さい。
「シン、俺が流してやるから食べて来ていいぞ」
「ありがとう、ダーク。白ちゃん達、僕は上の方に行って来るね」
見送っているとダーク様が既にスタンバイしている。
「取れるようになったのなら、多めに流してやるぞ」
「挑戦します!」
「よし。――流すぞ」
おぉ、いっぱい来た。これなら二人で食べられそうだ。
「うりゃ」
「よいしょっと」
二本取り逃したので慌てて追いかける。――よーし、取れた。モグモグと口いっぱいに頬張る。う~ん、おいしい。
「クマちゃん、頑張って」
モモ様がクマちゃんを抱っこして陣取っている。
「――キュッ」
三本取れた。クマちゃんには十分な量に見えるから不思議だ。
「――残りが来た。とうっ」
ヴァンちゃんが全て取る。僕達はだいぶ上達したのではないだろうか? その後は流すのと食べるのを交替していく。
「麺終わった」
ヴァンちゃんが流してくれていた麺が終わってしまったようだ。まだお腹に大分余裕があるなぁ。
「じゃあ、お楽しみを流そう」
汁は回収されてガラスの器を渡される。
「流すぞ」
セイさんが上流で何かをザラザラと入れる。
「――来た。ブドウだ!」
「ミニトマトもあるキュ!」
「ラディッシュ⁉」
コロコロと転がって来る可愛い野菜やブドウを三人で慌てて取る。
「ふふっ、驚いた?」
シン様はサプライズが成功して嬉しそうに笑っている。
「はい。麺以外も流せるんですね」
「まだまだお楽しみは続くよ」
だから、麺が少なかったんだ。んふふふ♪ 次は何が食べられるのかな?
お箸を上手に使えるようになってきましたが、流れる麺は難しかったですね。
シンがサプライズ成功です。良い反応をしてくれるのでやりがいがありますね~。
次話は、夏といえばスイカ! です。
お読み頂きありがとうございました。




