0202.だるまさんが転んだ
「ヴァンちゃん、何して遊ぶ?」
「うーん……。カハルちゃんに教えて貰った『だるまさんが転んだ』をしたい」
「いいね! 人数も居るし、やってみよう」
「何をして遊ぶか決まったようだな。誰が何をすればいい?」
「じゃあ、ダーク様が鬼をして下さい。あの木の前に立って下さいね」
頷いたダーク様が、カハルちゃんを抱っこからおんぶに変える。
「他の皆はヴァンちゃんが引いてくれたスタートラインに立って下さい。そして、『はじめの一歩』と言って、一歩だけ鬼に近付いたらゲームの開始です。それで、鬼の人が『だるまさんが転んだ』と言って振り返るまでは鬼に近付けます。鬼が振り向いた時にピタッと止まれたら大丈夫です。少しでも動いてしまったら、鬼に呼ばれるので手を繋いで下さい」
アケビちゃん達が真剣に聞いてくれている。森の皆は遊びも全力なのだ。
「全員捕まえられたら鬼の勝ちです。もう一つ、鬼の交替方法があります。鬼が『だるまさんが転んだ』と言っている間に、『切った』と手刀で仲間と鬼が繋いでいる手を切ります。鬼以外の人達は、鬼が十秒数えて『止まれ』と言うまでに出来るだけ遠くまで逃げます。その後に鬼は十秒だけ歩けて、誰かにタッチ出来たら交替出来ます。出来なかった場合は鬼を続けます。みんな大丈夫ですか?」
うんうんと頷いてくれた。分からない事があったら、その都度説明すれば大丈夫だろう。
「では、やるか」
スタートラインに立ち一歩前に出る。体格差があるから位置がバラバラだ。モモ様は足が長いから大分前に居る。足長さんめ……。
「だるまさんが転んだ」
ピタッと止まる。ふっふっふ、完璧だ。他の人達はそうもいかなかったようだ。隣の鳥さんが無理な姿勢だったのか、パタッと横倒しになる。
「ニコの隣の鳥、右から二番目のウサギ、狸はこっちに来い」
とぼとぼと歩いて行く。ウサギさんは耳がへんにゃりとしているから、余計に悲しそうに見える。
「続けるぞ。だるまさんがころんーーーだ」
おっと、危ない。教えていないのに緩急をつけてくるとは恐ろしい方だ。森の皆がごっそりと捕まってしまった。
「いいか? だるまさんがーーーころんだっ」
ひぃっ、速いパターンが来た! とうとうアケビちゃんが捕まってしまった。モモ様は非常に綺麗に止まるな。実は経験者ですか?
巧みな緩急で僕とモモ様とヴァンちゃん以外は全員捕まってしまった。初心者ばかりだから仕方ないよね。
「いくぞ。――ニコが転んだ」
『切った』と言おうとしてズッコケる。
「名指し⁉」
「くくっ。捕まえたぞ、ニコ」
「ずるいですよ~。やり直しを要求します!」
「名指ししてはいけないとは言われていないぞ」
「きーっ! ああ言えば、こう言う!」
「俺に口で勝てると思ったのか? だが、元の場所に戻っていいぞ」
「えっ? いいんですか?」
「ああ。やってみたかっただけだからな」
またダーク様に手の平の上で転がされてしまった。いつか、ぎゃふんと言わせてやるのだ!
元の場所に戻り、続きだ。
「だるま――」
「切ったー! みんな逃げろ~」
一斉に走って逃げる。おー、ヴァンちゃんが速い。モモ様もあんな遠くに居る。
「止まれ!」
ビタッと止まる。振り向くと鳥さんがまずい位置に居る。飛べないから思うように距離が稼げなかったのだろう。
「――次はお前が鬼だな」
「ピチュ……」
鳥さんが残念そうに木の前に行く。ダーク様が仲間に加わり再開だ。
「ピチュ、ピチュ――ピチュ」
む、難しい。「ピチュ」になった途端に難易度が一気に跳ね上がった。
「ピチュ、ピチュ、ピーチュ!」
「ぎゃっ!」
悲鳴を上げつつ止まる。爪先立ち辛い~。あー、まずい、まずい~。
「ピチュ」
羽根をビシッと向けられてしまった。ガックリ……。こんな早い段階で捕まるとは思わなかった。その後、ダーク様の活躍により逃げる事に成功した。次はウサギさんが鬼か。
最高難易度だった。鳴くことが出来ないので『だるまさんが転ん』まで耳を動かして貰い、『だ』で振り向いて貰う。一度目でダーク様とモモ様以外の全員が捕まってしまった。
二度目の開始。お耳を動かして――『だ』だ。固唾を飲んで見守る。ウサギさんが、ゆーっくりと振り向くと見せかけて元に戻し、バッと振り向く。まさかのフェイントに全員が惨敗した。
「やるな、ウサギさん」
ヴァンちゃんが感嘆しながら撫でている。ウサギさんが誇らしげに鼻をひくひくと動かしている。
「まさか、フェイントが来るとはな」
「私も驚いたよ。君は凄いね」
モモ様にも撫でられてシッポを振っている。みんなでワイワイ感想を言い合っていると声が掛けられる。
みんなでだるまさんが転んだです。
ダークがなかなかやりますね。名指し(笑)。今日も弄ばれたニコちゃんでした。
森の動物さんが鬼だと難しすぎますね。あっという間に勝負がつきます。
次話は、流しますよ~。
お読み頂きありがとうございました。




