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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0195.撮影会

「おぉ、切れた。一人でやってみる」

「うん。きをちゅけてね」


 手を怪我しないように、ナスはシン様が浮かべてくれた。ヴァンちゃんがおさらいするように呟く。


「鉤爪で斬るイメージで……流すっ」


 ナスの下の方だけに何カ所も切れ目が入る。部分的に成功かな?


「思った通りにいかない。何が問題? うーん……」

「まりょくがぁ、かたよたよぉ」

「かたよた?」

「偏ったって言いたいんじゃないかな。均一に流れていないのが原因かな。ね?」


 カハルちゃんが一生懸命頷く。それを見て、難しい顔をしていたヴァンちゃんから余計な力が抜けた。


「もう一回やってみる」

「がんばれぇ」


 カハルちゃんの応援を受けて再度、手を翳す。


「――行け!」


 ギザギザながらも見事にナスがバラバラに切れた。僕とカハルちゃんがペチペチと拍手するとヴァンちゃんがビシッと敬礼で応える。何それ、カッコイイ。僕も返しておこう。ビシッ!


 カハルちゃんも挑戦しているが、困ったなのポーズにしか見えない。何を置いても助けますと言ってあげたくなる姿だ。シン様がすかさず撮影している。僕もこれからは毎日、記録用水晶を持ち歩こう。


「シン、塗料ってど……こ……」


 モモ様が困ったなのカハルちゃんを見て言葉を途切れさせると、無言で記録用水晶を取り出し連続撮影を始める。


「ちょっと、モモ撮り過ぎだから」

「あと一枚」


 それを聞いて僕とヴァンちゃんもカハルちゃんを挟んで立ち、敬礼する。頬を紅潮させたモモ様が一枚どころでなく十枚撮った。


「はぁ……良い物が撮れたよ。永久保存しないと」


 ホクホクしているモモ様の肩をセイさんがガシッと掴む。


「中々戻って来ないと思えば、こんな所で油を売っていたのか。色塗りするぞ」


「ごめんね。可愛い姿に我慢が効かなくて。セイにも複写してあげるから許して?」


「カハル達が可愛いのは認めるが、困った奴だな……。ニコ達も手伝えそうならヤスリ掛けしてくれるか?」


「シン様、行ってもいいですか?」

「うん。こっちは僕がやっておくから大丈夫だよ」

「ヴァンちゃん、行こう」

「うむ。カハルちゃんは行く?」

「ごめんね、今は魔力供給中だから行かせられないんだよ」


 少し残念そうな顔をして頷いたヴァンちゃんと手を繋いで向かう。


「わぁ、馬さんだ!」


 木で作られた馬が円形の板の上に配置されていて、たてがみや尻尾まで細かく作り込まれており、まるで走っているように見える。クマちゃん用らしいのは跨るのではなく中が彫られて乗り込めるようになっている。振り落とされたら大変だもんね。


「モモは、この白い塗料で馬を塗ってくれ。他にも色があるから好きに使っていい」


「うん。クマちゃん用のも自由に塗っていいの?」

「ああ、構わない。ニコ達はシーソーの板をヤスリ掛けしてくれ」


 既にヤスリ掛けをしているクマちゃんと一緒に地道にゴシゴシする。トゲトゲが刺さると痛いから丁寧にやっておかないと。


 セイさんとアケビちゃんはシーソーを設置する為に地面に穴を開けたりしている。各自が黙々と作業をする事暫し――。


「終わった~」


 ヤスリ掛けチーム全員で伸びをする。う~~~ん。


 途中からセイさんとアケビちゃんも加わった色塗りはどうなったかな?


「す、凄い……。プロ?」


 遊具には屋根まで付けられており、今は色塗りをしている。モモ様は凝り性なのか僕達が遊ぶにはもったいない程の芸術品になっている。体は白く塗られ、たてがみや馬具は茶色だが細かい模様や草花などが華やかに描かれている。


 クマちゃん用だけ体が黒く塗られているのは、白くて小さなクマちゃんが乗っているか確認しやすい様にしてあるのだろう。


「みんな、ご飯だよー」


 シン様の呼ぶ声も聞こえないのか一心不乱に塗っている。下手に体に触って色がはみ出したりしたら、激怒されそうな気がする。どうしよう……。


 来ないのを不思議に思ったのか、シン様がカハルちゃんを抱っこして歩いて来た。


「も、も、しゃん。ごぉはんだにょー」


 カハルちゃんが区切りながらだが、正確に呼ぶことに成功した。その効果は抜群だった。


「カハルちゃん、今、私の名前を呼んでくれた?」


 感激したモモ様が筆を置く。あっさり過ぎてポカンとしてしまう。


「うんっ。おとうちゃが、ちゅくった、おいちい、ごはんだよぉ!」


 モモ様が躊躇いつつも手を伸ばす。


「シン、私も抱っこしたいのだけれど、いいかな?」

「いいけど、十分に気を付けてよ」


 恐る恐る受け取り、ぎこちなく抱っこしている。


「モモ、腕を前に突き出したままじゃなくて胸に抱き込んで」

「えっと……こう、かな?」

「そうそう」


 居心地が悪いのかカハルちゃんがモゾモゾ動き、モモ様が慌てるという珍しい光景を目にする。


「わっ、動いたら危ないよ」

「モモの抱き方が下手だからだよ」

「そんなにはっきり言わなくても……。小さい子を抱っこするのは初めてなのだから仕方ないでしょう」


 モゾモゾしていたカハルちゃんが居心地の良い状態になったのか大人しくなり、じーっとモモ様を見つめる。モモ様が困ったように首を傾げた事で落ちて来た髪の毛を握って、ニギニギし始める。


モモが遊具作りを忘れて大興奮で撮影です。あまりにも遅いのでセイが迎えに来ました。

年上の世話も焼く26歳。みんなのお兄さんですね。

モモが名誉挽回ですかね。素晴らしい木馬になりました。


次話は、カハルがヒロインらしさを発揮します。


お読み頂きありがとうございました。

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