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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0186.求人の紙

 窓口で手続きをしてから、土の国の城の求人用の掲示板に、ヴァンちゃんが綺麗なお花とクマちゃんの絵を描いたカラフルな紙を貼る。目立って良い感じだ。



『クマの花屋


 募集人員・・・一人

 給料・・・月給三十万(昇給有)

 休み・・・週一日(応相談)

 面接場所・・・中央通りの宿屋『リンゴの木』

 面接日時・・・九月の第四週の金曜日 午前九時


 ○交通費、昼食代支給

 ○手先が器用な方、お花が大好きな方を募集しています

  ※人柄重視します』



 面接を受けたい人は、三枚になっている複写式の紙に、経歴や資格などの情報、名前と住所と面接の希望日・時間を第三候補まで書く。そうすると、窓口で複写された一番下の紙を渡される。募集している人は複写された真ん中の紙を受け取り、候補に丸を付ける。文字を書くと相手の紙に字が浮かび上がるので、それでやり取りをして面接の日時を決めるのだ。面接しない場合は不採用に丸をすると、相手の紙が真っ赤に変わって伝わるようになっている。


 でも、小さいお店は人が集まりにくいし、何度も面接の時間を割くのが辛いので、指定日時と場所を書いておいて集まって貰う手法を取る事が多い。


「良い人が来てくれるといいですね」

「そうキュね。次は『リンゴの木』に貼らせて貰うのキュ」

「行くか。みんな掴まれ」


 僕とヴァンちゃんはセイさんの肩に張り付き、クマちゃんは抱っこされている。視線が高くなった事で、かなりの人がクマちゃんの花屋さんの求人に興味を持っている事に気付く。これは期待出来るかもしれないと嬉しくなる。


 中央通りを進み、いつものようにお肉屋さんの横に来る。


「おう、クマちゃん達。今日はどうしたんだい?」

「今日は求人の紙を貼らせて貰うのキュ」

「うちにも貼るかい? いいぜ、好きな所に貼って」


 念の為にと多く作っておいて良かった。早速、お肉を見る邪魔にならないようにガラスケースの上部に貼らせて貰う。


「可愛い絵じゃねぇか。クマちゃんが描いたのかい?」

「ヴァンちゃんが描いてくれたのキュ。とっても上手なのキュ」

「へぇ、ヴァンちゃん凄いじゃねぇか。ちょっと待ってな、良いもんやるわ。母ちゃん、このまえ買った――」


 奥に入ってすぐに戻って来た。


「これ食べな。レーズンチョコ、うめぇぞ」

「ありがとうございます」


 ヴァンちゃんがホクホクした顔をして袋を抱き締める。


「はっはっは、嬉しそうだな。いつでも来な。歓迎するぜ」


 力強く頭を撫でられて頭がガクガクしているが、非常に嬉しそうだ。セイさんが会釈をして宿に向かう。


「――失礼する」

「すみませんね、まだ開店前で――あら、クマちゃん達じゃないか! さぁ、入って入って」


 今日も元気いっぱいの女将さんに迎えられる。会うと元気を貰えている感じがするなぁ。落ち込んだ時に来たら、帰りは笑顔になれそうだ。


「遊びに来てくれたのかい? お茶を飲むかい?」

「今日は求人の紙を貼らせて欲しいのキュ」

「ああ、いいよ。目立つ所に貼ろうね。どこがいいかね?」


 女将さんが紙を持ってウロウロする。ここじゃないねぇと言いながら紙を上げ下げしている。


「あっ、ここならいいんじゃないかい? そっちから見てどうだい?」

「いいと思うでキュ。目立つキュ」


 椅子に大きな茶色の熊のぬいぐるみが座っていて、いつもはメニュー表を抱えているが、今は求人の紙が代わりに入れられている。クマちゃんの花屋さんには、うってつけではないだろうか。


 女将さんが満足そうに頷いて、ぬいぐるみの頭を乱暴に撫でて話し掛けている。


「頑張って求人しておくれよ」


 ヴァンちゃんが思わずという様にニヤリと笑っている。後で真似するつもりなのだろう。でも、頭に手が届くだろうか?


「お茶を飲んでいっておくれ。すぐ用意するからね」


 女将さんが厨房に消えると早速、ヴァンちゃんがぬいぐるみに近付いて行く。一生懸命に背伸びをしてチョンと頭に触り、小さく呟く。


「頑張るのだぞ」


 そんなヴァンちゃんに目を細めて、セイさんが頭を撫でてあげている。僕もヴァンちゃんの頭を撫でちゃおう。


「えーい」


 わしゃわしゃわしゃ。ボサボサになったヴァンちゃんが逆襲してくる。


「うりゃっ」


 ぐわしゃしゃしゃ。きっと僕もボサボサだ。


「あっはっは、何だい、その頭! トサカみたいになっているよ」


 何ですと⁉ ヴァンちゃん、なんて高度な事を!


「ふっふっふ……」


 ヴァンちゃんが悪い笑い方をする。僕も何かの形にすれば良かった……。


「二人共、こっちに来い」


 セイさんが苦笑しながら、櫛で丁寧に直してくれる。お兄様と呼んでもいいだろうか?


「よし、いいぞ」

「ありがとうございます」

「お兄様、ありがとうございます」

「お兄様と言うな。背中がムズムズする」


 セイさんに軽く頬を引っ張られる。お兄様はお気に召さなかったらしい。


「お兄様と言うより、閣下って感じじゃないかい?」


 ヴァンちゃんが確かにと頷いている。


「カッコイイのキュ。将軍とか強い感じの役職が似合いそうでキュ」

「軍服が似合いそうですよね」

「そうか? 自分ではよく分からないが……」


 お茶を飲みながら首を傾げている。そんな姿すらカッコイイとは羨ましい。


いっぱい集まるかな? 注目度が高いので期待ですね。

お肉屋さんにも貼って貰えました。人気店なので、いい効果が出そうです。

ヴァンちゃん、やりますね~。ボサボサの上をいくトサカで逆襲です。


次話は、ニコ&ヴァンちゃんが、ぐったりです。


お読み頂きありがとうございました。

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