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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0185.基準はどこですか?

「ヤナギ、久し振りだな」

「お久し振りですわ。お元気そうで安心致しましたわ」


 頷いたセイさんが口を開きかけた所で、ホノオ様がヤナギさんの横を通る。


「はぁ、腹減った……」

「きゃー! こ・な・い・で!」

「うわっ⁉ な、なんだよ!」


 ミナモ様が自分だけではないとホッとしたようで、ぎくしゃくと動き始める。あんなに拒否された事なんて、ミナモ様の人生で初めてじゃないのだろうか?


「早く出て行って下さいな!」

「なっ⁉ お前が出て行けよ!」

「なんですって⁉ お前だなんて失礼な事を言う方が出て行くべきですわ!」

「はぁ⁉ きゃんきゃん喚くお前の方が迷惑だっ」


 その後も二人で言い争っている。何だか仲良しに見えるから不思議だ。


「どっちも同レベルだろ。はぁ、うるさい……」


 ヒョウキ様が溜息を吐き、ミナモ様が苦笑している。


「そろそろ止めないとシンの雷が落ちるぞ」


 セイさんの言葉につられてシン様の顔を見た途端、ギョッとする。笑顔なのに物凄く怖い。恐怖のあまり毛がブワッとなってしまった……。


 異様な気配を感じたのか二人が口をピタッと閉じて、お互いにそっぽを向く。


「ホノオ、お疲れ。腹減ったなら、そこのクッキー食べろ。シン、ヴァンはもうちょっとで終わるって、さっき連絡があったから待っていてくれるか?」


「うん。僕もクッキーを貰おうかな」


 ぶすっとした表情のまま、ホノオ様が椅子に座りクッキーを齧っている。帰らないのが不服なのか、ヤナギさんも渋面だ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 先程の事を思い出しながら目の前の光景を見る。僕達は子供枠だから平気なのか、獣族だからいいのか? 平気な男性もいるようだけど……。確認してみよう。


「ヤナギさん、僕達は十六歳の男の子ですよ。大丈夫なんですか?」


「まぁ、そうなの! 可愛らしいので問題ありませんわ。ニコちゃんも『ヤナギちゃん』と呼んで下さらない?」


「分かりました。大丈夫な男性の基準はどこですか?」


「あら、私に興味を持ってくれるなんて嬉しいですわ。フォレスト様、シン様、セイ様は付き合いが長いのですわ。それに皆様、とても美しいですもの」


「ミナモ様、優しい。駄目?」


 ヴァンちゃんがヤナギちゃんを仰ぎ見ながら質問している。ヤナギさんが破顔した後に、冷たい表情でミナモ様をじっと見る。――ああ、ミナモ様が気まずそうにしている。


「あの方は確かに優しいですわ。でも、それだけではありませんもの。中身はとても男性らしい方ですから苦手ですわ」


 そう言えば、ダーク様もミナモ様は男らしいって言っていたっけ。ヤナギちゃんは人を見抜く目があるのかもしれない。


「そろそろ帰ろうか。クマちゃんがお腹を空かせて待っているよ」

「あっ、俺も一緒に行きたい!」


「まぁ、なんて図々しいのかしら! あなたは、さっさと自分のお城にお帰りなさいな」


「なんで、お前に指示されなきゃならないんだよ。お前こそ、さっさと帰れ!」

「――ストップ。それ以上、喧嘩したら二人共叩きだすよ」


 シン様がついにキレた模様です。ヴァンちゃんと僕はいそいそとセイさんの足に抱き付く。


「……シンは説教モードに入ったから、俺達だけで帰るか」


 セイさんは慣れているのか、さっさとその場を後にした。



「お帰りキュー。あれ? シンしゃんが居ないキュ」

「ああ、野暮用でな。風呂に行こうか」


 お風呂に入りながら、クマちゃんが今日は何をしていたか聞いてみる。


「今日はでキュね、求人の紙と宣伝用の紙を作っていたのキュ」

「おお、凄い。後で見せて欲しい」


「モキュ。誰か明日、一緒に土の国に行って欲しいのキュ。求人の紙を貼りに行きたいのキュ」


「では、俺が一緒に行こう」

「いいのキュ⁉ やったキュー!」

「魔物退治は大丈夫なんですか?」

「ああ。だいぶ数を減らせたからな。少しくらいなら平気だ」


 僕も一緒に行きたいけど、明日も凄い量だろうなぁ。一応、聞くだけ聞いてみようっと。


 お風呂から出るとシン様がご飯を作りながら笑顔で迎えてくれた。


「ごめんね、一緒に帰れなくて。二人にはよく言い含めておいたから安心してね」


 詳しい内容は僕の心の平穏の為に聞かないでおこう。ホノオ様が結局、ここに来ていないという事が、いかに凄まじかったかを語っているじゃないか! 好奇心に蓋をして仕舞い込む。


「クマちゃん、これに絵を描いてもいい?」


 ヴァンちゃんはマイペースに求人の紙を見ている。


「ヴァンちゃん、絵が得意キュ? お願いしたいキュ。クマは字を書いただけでクタクタなのキュ」


 確かにクマちゃんには大変な作業だっただろう。制作中の宣伝用の紙には押し花が貼られていて、とても可愛い。


 僕はその間にミナモ様に聞いてみようっと。


「ミナモ様、出られますか?」

「――はい。ニコちゃん、どうされましたか?」


「あの、明日の朝、クマちゃんのお店の求人の紙を貼りに、セイさんと一緒に少しだけ抜けてもいいですか?」


「はい、構いませんよ。ヴァンちゃんも行くのでしょうか?」

「ヴァンちゃん、明日、クマちゃんに付いて行く?」

「行きたい」

「ふふっ、分かりました。気を付けて行って来て下さいね」


 後ろで「俺も行きたーい」という声がしている。


「駄目に決まっています。ほら、手が止まっていますよ。キリキリ働いて下さい。――ニコちゃん、また明日」


 笑顔で手を振ってくれたミナモ様の背後で、書類に囲まれたヒョウキ様が天を仰いでいる。が、頑張れ~。


ミナモが再起動しました。仲間が出来ましたからね!

ホノオとヤナギは相性が悪いですね。でも、仲良しに感じるのは何故だろう? 同レベルだからかな?

仲良くシンに説教されました。説教の後も懲りずに睨み合っていたので、シンから特大の雷が落ちました。


次話は、求人の紙を貼りに行きます。


お読み頂きありがとうございました。


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