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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0183.お婆様はどんな人?

「――ここなら、いいでしょう」


 シン様が運んでくれた場所は桃の国の城の前だった。


「私の部屋に来る?」

「いや、止めておくよ。この子達をお風呂に入れて寝かせないと」

「もうそんな時間? 楽しい時間というのはあっという間だね……」


 抱っこしているクマちゃんを切なそうに見ている。だが、次の瞬間、顔に険しさが一瞬だけ走った気がした。


「ごめんね、急用を思い出したよ。――シン、クマちゃんをよろしくね」


 シン様に近付いたモモ様が、離れ際にそっと囁く。


「――ここから早く離れて」


 目の中に警戒の色を浮かべたシン様が挨拶をする間もなく、移動の魔法を発動した。


 誰も理由が分からないまま、お布団に入ろうとする頃に、モモ様から通信の鏡で連絡が来た。


「遅くにごめんね。それと先程の事も。お婆様に仕えている者が知らせに走ったのが見えたから、ついね。君達とお婆様が会う事態は避けたいから……。本当に面倒臭い人だから注意してね。それと、シンに渡すはずだった物を忘れちゃってね。いつ渡せばいいかな?」


「今度、うちに来る時に持って来てくれるかな。で、そのお婆様って、どういう人なの?」


「朱の一族のまとめ役かな。私の父方の祖母だね」

「ふーん……。ねぇ、何か隠していない?」


「うん、隠しているよ。でも、もう少しだけ秘密ね。完全にお婆様の干渉を排除出来たら教えるよ」


 隠し事をしている割に堂々としている。僕には真似出来そうにないなぁ。挙動不審で、あっという間に問い詰められてバレてしまうだろう。


 クマちゃんがナイトキャップを被り、欠伸をしながら寝床に向かう。


「ニコちゃん、おやすみキュ」

「おやすみなさい。良い夢を」

「モキュ。――モモしゃん、おやすみなのキュ」


 モモ様の返答がない。訝しく思って鏡を覗き込むと、どうやら見惚れているようだ。確かに眠そうに目を擦っている、ナイトキャップ姿のクマちゃんて可愛いもんね。


「寝てるキュ?」

「軽く意識は飛んでいるんじゃない? 気にしないで寝ていいよ。おやすみ」

「シンしゃん、おやすみキュ。ふわぁぁ~、寝るキュ……」


 トテトテと危なっかしく歩いて行く。何とかベッドに辿り着くと、直ぐに寝息が聞こえてくる。よっぽど眠かった様だ。その姿につられて眠くなった僕も横になる。シン様とモモ様の素敵ボイスをBGMに眠りに就いた。


「モモ、切るよ?」

「――えっ? あれ、クマちゃんはどこ?」

「もう、みんな寝たよ」


「そんな……。ねぇ、シン? 記録用水晶にクマちゃんの寝顔を撮ってくれない?」


「勝手に撮ると嫌われると思うよ。まずはクマちゃんの許可を自分で貰ってね。多分、恥ずかしがって断られると思うけど」


「……こっそり撮ってくれない?」

「ばれた時に絶交されたらどうするの? 僕は責任を取らないよ」

「……諦めるよ。……はぁ……おやすみ」

「うん、またね。おやすみ」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 お城に着くと目の前に二山の書類がドサッと置かれる。ヴァンちゃんが確かめるようにポスッと両手を置く。残念ながら凹まなかった……。その代わりにヴァンちゃんのシッポがパタリと力なく下がる。


「すみません。このような状態になってしまいまして……」


 ミナモ様が申し訳なさそうに眉を下げる。何だか目が赤い。


「もしかして、徹夜ですか?」


「はい。これから少しだけ仮眠を取る予定です。申し訳ありませんが、その間の指示はヒョウキ様に貰って下さい」


「了解です。ヴァンちゃん、頑張ろうね!」


「うむ。ミナモ様の仇は俺が討つ」

「敵は憎き書類ってか? ミナモ、良かったな。安心して寝てこい」

「はい、ありがとうございます。二時間ほど眠ったら戻ります」

「ああ。無理させて、すまん」


 礼をして部屋を出て行くミナモ様を見送り、急いで仕分けを始める。


「ニコに仕分けを任せて、ヴァンは先にこれを配って来てくれ。上から順に頼むな」


「はい、行って来ます」


 ビシッと敬礼したヴァンちゃんが駆け出して行く。


「ニコ、仕分けはある程度でいい。今、助っ人の官吏が来てくれるから、そいつに任せろ」


「はい」


 鞄に入れられるだけ仕分けする。やっぱり土の国が多いな。よし、行くぞ!



「失礼致します。書類をお届けに参りました」

「あ、ニコちゃん! 丁度いい所に! これを持って行ってくれない?」

「魔国へですね。こちらに記入をお願いします。他の方も魔国への書類はございませんか?」


 次々と手が上がる。待つ間に、どんどん配っちゃおう。他国で頼まれる分のリストを別にしておいて良かった。いつも通りでは追い付かない。


「ニコちゃん! ごめんなさいね、こちらへお願い出来る?」


 産業部の部長さんに手招きされる。急いで近付くと書類が山積みにされていて、思わず頬が引き攣る。


「これ全部、運べるかしら? うちで作成したリストを用意してあるの」


 これは僕だけでは無理だと判断してヒョウキ様に連絡を取る。


モモがクマちゃんの可愛さに意識を飛ばしている間に、みんなはさっさと寝床へ。

切ないモモなのでした。

ミナモの敵(書類)は俺達の敵! という事で張り切る二人です。


次話は、びっくりな助っ人です。


お読み頂きありがとうございました。

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