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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0182.輪投げ

 モモ様が時々、振り返りながら先を歩く。クマちゃんと楽しそうに笑い合っている姿を視界に収めながら、通りの様子も見る。店の引き戸が取り払われて、席が道にまで広がっている。この辺りはお酒を飲みながら食事をしている人が多い。一日の仕事を終えた解放感なのか、みんな口を大きく開けて笑っている。


 川から涼しい風が吹くので、昼間の暑さが消え非常に過ごしやすい。船に乗っている人たちに手を振ると、満面の笑みで振り返してくれた。んふふ♪ なんか得した気分だ。


 ヴァンちゃんはゆらゆらと揺れるぼんぼりを眺めている。よく見ると描かれている絵が違うようだ。シン様がヴァンちゃんの顔を覗き込む。


「ぼんぼりが気に入ったの?」

「ん。綺麗。魔法?」

「蝋燭が入っているんだよ。高い所にあるのは魔法の光だろうけどね」

「シン、ここに来てくれる?」


 少し距離が開いてしまっていたモモ様が呼び掛けて来る。何か良い物を見付たようだ。近付いて行くと、棒が等間隔で縦横三列に並び、ぬいぐるみやお菓子などが周りに積まれている。


「輪投げしない?」

「いいね。誰からやる?」


 クマちゃんがシュパッと手を挙げる。モモ様がお金を払うと、店員さんがクマちゃんに輪っかを渡そうとして躊躇っている。顔は怖いけど優しい人みたいだ。


「大丈夫かい? 手を離すよ、いいかい?」

「モキュ。大丈夫でキュ」


 お店のおじちゃんが恐る恐る手を離す。クマちゃんが持つと輪っかがフラフープの様に見える。


「クマちゃんは何が欲しいの?」

「あのブローチでキュ。きっと、モモしゃんに似合うのキュ」

「……私の為に投げてくれるの?」

「モキュ。頑張るキュ」


 モモ様が感激しながら見守る中、クマちゃんが気合を入れて輪っかを投げる。


「モキュアー!」


 だが、棒と棒の間に落ちてしまった。


「キューーーー⁉」


 悲し気な声を上げるクマちゃんをモモ様が抱き上げて頬を優しく撫でる。


「良く頑張ったね。クマちゃんが私の為に一生懸命投げてくれただけで胸がいっぱいだよ」


 そんな様子を見ていたヴァンちゃんが、おじさんから残り八本の輪っかを貰う。


「俺が取る」


 ブローチは輪っかが五つ入れば貰えるらしい。まずは、ヴァンちゃんの第一投! カコンと見事に決まった。


「ニコ、やるか?」

「ヴァンちゃんが続けてやっていいよ」

「うむ、頑張る」


 その後も外すことなく次々と入れていく。周りで見ていた人達が近くに集まって来た。


「あの子凄いな。一回も外さないぞ」

「あっ、また入った!」


 その声に興味を惹かれた人たちが更に集まって来る。皆の熱い視線の中、ヴァンちゃんが最後の輪っかを投げる。カコッと棒の上部に当たってヒヤッとするが、大きく回転しながら輪っかが入った。


「入ったぁぁぁ!」


 皆の声が揃う。集中していて人だかりに気付いていなかったヴァンちゃんが、大きな声にビクッとして振り向く。


「うぉっ、いっぱい居る」


 そんなヴァンちゃんの様子に笑いながら周りの人が声を掛けて散って行く。


「凄いな! 良いもの見せて貰ったぜ。じゃあな」

「むしゃくしゃしてたけど、なんか胸がスカッとしたわ。ありがとな」

「君、凄いね! 私も嬉しくなっちゃった。じゃあねー」


 ヴァンちゃんが戸惑いながら会釈をしている。ヴァンちゃんて自分の事を過小評価している所があるから、今もなぜ褒められているのかイマイチ分かっていないのだろう。


「お客さん、凄いねぇ。商品はどれにするんだい?」

「ブローチ欲しい」

「はい、これね。後、三本分はどれにする?」


 ヴァンちゃんが振り返って皆を見る。もっと自分を優先していいのに。本当に律儀だなぁ。


「ヴァンちゃんが欲しい物を貰って良いよ」


 シン様に頭を撫でられて安心したのか、ようやく商品を選び始める。


「ゴマ団子の引換券が欲しい」

「はいよ。後は何にする?」

「まだ貰える?」

「おうよ。後は菓子とかおもちゃだな」


 端から端まで眺めて迷っている。幾つか欲しい物があるのかな?


「おじさん、その黄色いの何?」

「うん? ああ、これかい? これは風呂に浮かべて遊ぶ玩具だよ」

「……それにする」


 ヴァンちゃんが戦利品を抱えて、シン様に見せている。


「ヴァンちゃん、良い物が貰えて良かったね」

「ん。――クマちゃん、これモモ様に付けてあげる」

「了解でキュ。モモしゃん、動いちゃ駄目でキュよ」


 蓮の花の形をした銀色のブローチを襟の所に付けてあげている。


「出来たキュ。もう動いて大丈夫でキュ」

「ありがとう。どう? 似合っているかな?」

「思った通り、よく似合うのでキュ」


 ヴァンちゃんも満足気にサムズアップしている。僕もやろう。グー。


「ふふっ、ありがとう。私の宝物だよ」


 あまりにも素敵な笑顔だった所為か、周りを歩いていた人たちが動きを止める。あっ、女性がウットリしたまま倒れた! 恐るべし、魔性の微笑み……。最早、歩く兵器だ。


「モモ、逃げるよ」


 全員で慌ててシン様にくっつくと、移動の魔法で、その場を離れる。


クマちゃんの叫びがお気に入りです。「モキュアー!」。よきかな……(笑)。

ヴァンちゃん、凄いですね。輪投げも百発百中でした。

またも、モモの魔性が……。ニコちゃんに兵器認定されました。


次話は、書類の山です。


お読み頂きありがとうございました。


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