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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0180.……食べたね?

 セイさんにお礼を言ってから春巻にがぶりと齧り付く。皮をザクッと噛むと、中からとろみのついた筍や人参、小さめにカットされたお肉などが出て来る。生姜が効いていて、何も付けずに、このままで十分においしい。


「ニコ、エビマヨと春巻の半分を交換して欲しい。俺もパリパリ食べたい」


 ヴァンちゃんの提案に大きく頷く。僕も大きな海老を口いっぱいに頬張りたい。交換すると早速、ヴァンちゃんが良い音をさせて食べている。ニンマリしているので相当気に入ったのだろう。


 僕は大きな海老をそのまま口に詰め込もうとする。……駄目だ、大き過ぎた。がぶりとワイルドに噛みちぎり咀嚼する。おぉっ、プリップリだ! 酸味があるマヨネーズで海老の甘みが引き立つ。思ったよりもさっぱりしているのはレモンのお蔭だろうか?


「ニコ、お前はまたそんなにくっつけて……」


 セイさんに目を向けると、困ったように布巾を僕に近づけたり遠ざけたりしている。


「セイ、食べ終わってからでいいよ。この後、茶色がそこに足されるからね」


 シン様の言葉に、モモさんが口元を手で覆って笑っている。とても優雅だが笑われている僕の心は複雑です……。セイさんが諦めた様なので、僕も諦める事にした。食べ物の前では恥などかき捨てだ。


 次は餃子にしよう。タレに付けて頬張ると肉汁がジュワッと出て来る。野菜が多めで結構さっぱりしている。皮の周りに付いている茶色くてパリパリしているのも美味しいな。一つ、また一つと手が伸びてしまう。六個あったけど、あっさり食べ終えてしまいそうだ。


「ニコちゃん、クマにも一つ下さいでキュ」

「いいですよ。あっ、回転テーブルの出番ですね!」


 小皿に載せて回転テーブルに置き、グルグルと回す。この辺りかな?


「クマちゃん、取れますか?」

「モキュ。ありがとキュ」


 モモ様が代わりに取ってくれたようだ。クマちゃんがひだひだの部分を齧る。なかなか具に辿り着けないのを見かねて、モモ様がお箸で割ってあげている。


「おいしいキュ。思っていたよりお野菜がいっぱいキュ」

「何個でもいけちゃいますよね。メニューには色々な種類の餃子がありましたよ」


 シン様がどれどれとメニューを見る。


「皮が白くないのや変わった形もあるんだね。中身もお肉だけじゃなくて魚介類を使ったものもあるみたいだよ。今度、家で作ろうか」


「えっ、お家で作れるんですか⁉」

「うん、春巻も肉まんも出来るよ」


 ヴァンちゃんが口の周りを茶色く染めながら食べている角煮饅頭も出来るのだろうか? お肉がトロットロだ……おいしそう……。


「ニコ、食べたい?」


 ヴァンちゃんが差し出してくれた饅頭に齧り付く。


「ふおー、トロットロだー。甘じょっぱくて、おいしい……」


 僕の肉まんもそろそろ食べられるかな?


「はむっ。――これもおいしい……もぐもぐ……。肉汁たっぷりだよ」


 ヴァンちゃんに笑顔で差し出すと、がぶりと齧り付く。無言で咀嚼してから、もう一口。


「汁うまい。生地がもっふりしてる」

「うん。どっちもおいしいね」


 クマちゃんはお魚を気に入ったらしく黙々と食べている。そんなクマちゃんを見ながら、モモ様はホタテなどを炒めた物を時々つまむ。少食なのかな?


 シン様は麻婆豆腐を食べている。どんな味なのかな? 僕も食べてみようっと。テーブルをクルクル回して、目当てのお皿を目の前に持ってくる。――この位でいいかな。


「ニコ、俺にも取ってほしい」

「うん、いいよ。――これ位?」

「うむ。ありがとう」


 二人でガボッと口に入れて悶絶する。


「か、辛いぃ~~~っ! み、水、水!」


 モモ様、シン様と談笑していたセイさんが、僕の声に慌てて水を飲ませてくれる。


「ニコ、何を食べたんだ⁉」

「ほふぇふぇふ」


 辛くて口が回らない。うぅ、痛いよぉ、辛いよぉ……。僕の指さした物を見てシン様がギョッとしている。


「それを食べたの⁉ 僕でもほんの少し辛いかなと思う位のやつだよ。ニコちゃんには無理だよ。杏仁豆腐を早めに貰おう」


 シン様が店員さんを呼ぼうと戸口に行こうとして、訝し気に立ち止まる。


「……ヴァンちゃん?」


 俯いて口を両手で押さえていたヴァンちゃんが、ゆっくりと顔を上げる。無言でボロボロと大粒の涙を流しているヴァンちゃんに、シン様が手の平で顔を覆う。


「……食べたね?」


 こっくりと頷くヴァンちゃんに水を手渡し、急いで店員さんを呼んでいる。


「ごめんね。杏仁豆腐とゴマ団子を早めに貰えるかな。うちの子達が麻婆豆腐を食べちゃって」


 店員さんが僕達の様子を見て痛ましげな顔をする。


「すぐにお持ち致します。――あっ、エビマヨがありますね! マヨネーズで緩和されるので食べてみて下さい」


 セイさんが急いで僕達の口にエビマヨを入れてくれる。――はむはむ。ん? 少し楽になった……。不思議だ。ヴァンちゃんも不思議そうにしている。


「どうだ? 少しはいいか?」


 頷いて、ゆっくりと咀嚼する。無くなった途端に辛さと痛みが来そうで怖い。


「――すみません、ゴマ団子はもう少し掛かります。先に杏仁豆腐だけお持ち致しました」


「急かしてごめんね。ありがとう」


 シン様が僕とヴァンちゃんに交互で食べさせてくれる。――はぁ……甘い。


「ぐすっ、甘い……」


 ヴァンちゃんがやっと喋れるようになったようだ。鼻をぐすぐすさせながら、ほっとした顔をしている。


「ゴマ団子ももう少しで来るからね。はぁ……辛いって教えておけば良かった……」


 よしよしと頭を撫でられて和む。世の中には恐ろしい料理がある物だ……。今後、赤い料理は気を付けようと心に刻む。


ヴァンちゃんは心の中で「辛い、痛い、辛い、痛い……」と言ってます。それ以外は考えられません。

エビマヨがあって良かった。店員さん活躍です。


次話は、甘い物で癒されながら、会話を楽しみます。


お読み頂きありがとうございました。




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