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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第一章 鏡の魔物
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0017.宰相様の動揺

「残骸も私が片付けようか? それか元通りに直す事も出来るけど」

 

 近くに居た魔法使いの方が、その言葉にギョッとした顔をする。僕も女性を凝視したまま驚く。元通りにする魔法なんて聞いた事がない。


「いや、気持ちだけ受け取っておく。それ以上、力を消費しない方がいい」

 

 そう言った後、女性をそっと抱き寄せる。その姿に、お城の方達が一斉にどよめく。


「久し振りだな、この姿。会いたかった……」

 

 とても優しくて、切なげで懐かしそうな、僕が初めて見る顔だった。女性に対してこんな態度をとるのを見るのは初めてだ。


 僕とヴァンちゃんは式典やパーティの時に、ダーク様の近接警護をよくする。その時に女性への対応を見ていたけど、実にそっけなかった。


 さっき、鏡の魔物が仕えておるのかって言っていたけど、昔からの知り合いで仲良しなのかも?


 女性は優しく笑うと、ダーク様の髪をそっと撫でる。その行為に更に大きなどよめきが起こる。髪の毛を触られるのが大嫌いなダーク様が触らせた⁉


 そんな反応を余所に二人の会話は続いていく。


「ごめんね。いつも巻き込んで……」

「気にするな、俺が好きでしている事だ。さっきも言っただろ。俺はカハルから離れないと。信じていないのか?」

 

 カハルって言った! それに、離れないって小さいカハルちゃんに言っていた言葉だ。じゃあ、本当にこの女性がカハルちゃんなんだ!


「そんな事ない! 凄く嬉しかったもん。でも、ダークが本当にしたい事が出来たら離れてもいい、応援するって昔に伝えたでしょう?」


「あぁ。俺のしたい事は、幾度生まれ変わろうが変わらない。カハルの側に居る事だ」

 

 そして、カハルちゃんから体を離すと、おでこに優しく口付ける。


 ダーク様、カハルちゃんが大好きなんだなぁ、と一人頷く僕。でも、お城の方達は、それ所じゃないらしい。口々に、あの女性はダーク様の妃候補かとか、女性嫌いじゃなかったのかと大騒ぎだ。


 そこに、様子を見に来た宰相様が現れる。周りの騒ぎを怪訝そうに見聞きした後、顔色を変えて物凄い勢いで近付いてくる。宰相様があんなに動揺する姿を初めて見てしまった。


 それにしても、瓦礫や人がいっぱいなのに良い動きで避けているなぁ。運動苦手じゃなかったんだと、ほけーっと見ていたら、ダーク様が宰相様に気付く。


「どうした、凄い剣幕で。地下宮殿が壊れたのを怒っているのか?」


「事前に、この様な事態になるかもしれないとお聞きしていたので問題ありません。それよりも、その女性はどなたなのでしょうか?」


「朝に紹介しただろう。もう、忘れたのか? まだ若いのに」

 

 宰相様のこめかみに青筋が浮かぶ。こ、怖いよ~。


「私が紹介されたのは、小さな女の子です。この女性ではありません」

「同一人物だが」

「揶揄わないで下さい。ここは人目が多すぎます。隣の部屋に移動しましょう」

 

 ダーク様は、やれやれという様子でカハルちゃんの手を引きながら歩き始める。


「ダーク様、お手をお離し下さい」

「嫌だ。力の消耗が激しいから倒れる恐れがある」

 

 カハルちゃんが困った顔をして、ダーク様の手を離そうとする。でも、逆に強く握られてしまい、更に眉毛が下がる。


 あの八の字眉毛っぷりは大きいカハルちゃんでも変わらないんだなぁ。


「ダーク、離して」

 

 ダーク様を敬称なしで呼ばれて、宰相様の眉間に皺が寄る。


「一国の王に対して不敬が過ぎます」

「――っ、ごめんなさい……」


「相変わらず固い奴だな。カハルは謝らなくていい。俺が敬称なしで呼ばれたいのだから構わないだろう?」


「それでは他に示しが付きません」

「では、正当な理由があれば納得するんだな?」

「それはどういう事でしょうか? まさか、妃に――」

 

 宰相様が、そこで口を噤む。隣の塔の部屋の入り口には、僕達を心配して仲間達が鈴なりで、こちらを見ていた。


ニコちゃんがようやく信じてくれました! いや、他の人が物分かり良すぎなのかな?

宰相様、登場! 物凄く真面目な方です。ダークの発言で、青筋出現率が上がります。


次話は、カハルの悪癖が出ます。


お読み頂きありがとうございました。

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