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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0178.壺がお好き?

「――そろそろ着きますよ」


 船頭さんの声に顔を上げると、大きくて立派なお店が川のすぐ近くに立っている。どうやら船で直接来られるお店のようだ。例に漏れず朱色や緑や金色がふんだんに使われている。


「公共のではなく、このお店が管理している船着き場だよ」


 モモ様の説明に、クマちゃんと一緒に「ほぉ、ほぉ」と頷く。既に扉の所で店員さんが待ってくれているようだ。裏口みたいな感じなのだろうか? 僕の疑問にタイミングよくモモ様が答えてくれる。


「この入口はお忍びの王族や貴族がよく使っているよ。一般の人も使えるけれど、あまり知られていないみたい」


 接岸する時に少しだけ揺れる。先にヴァンちゃんとセイさんが降り、僕はシン様に抱っこされて岸に降り立つ。


「ありがとう。良かったらこれで美味しいお酒でも買ってね」

「モモ様、こんなに頂けませんよ。多過ぎます」

「私の君への評価は気に入らない?」


 クマちゃんがモモ様の腕の中で、こっそり船頭さんに「もらっちゃうキュよ~。お高いお酒を買うでキュよ~」と囁いている。モモ様が嬉しそうに笑っているので、完全にバレているようだ。


「う~ん……。では、ありがたく頂戴致します」


「うん。私の大事なお客様を安全に運んでくれて、ありがとう。また、よろしくね」


「はい、喜んで。帰りはどうされますか? お迎えに上がりましょうか?」

「帰りはブラブラお店を見ながら歩いて行くよ」

「そうですか。それでは失礼致します。またのご利用をお待ちしております」


 皆で手を振って見送ると、白い歯を見せて笑ってくれた。よ~し、お待ちかねのご飯だ~。


「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ。いつものお部屋をご用意してございます」

「うん、ありがとう」


 お店の人の案内に従って二階に上がる。中も鮮やかな色だなぁ。わぁ、出た、お高そうな壺! 桃の国の人は壺が好きなのかな?


「どうぞ、ごゆっくりとお過ごし下さい。お飲み物は如何致しましょう?」

「そうだね……。シン達はお酒を飲む?」

「僕はお茶でいいよ」

「俺も」

「そう。じゃあ、烏龍茶を貰えるかな」

「はい、畏まりました」


 モモ様にメニューを手渡されたので早速、チェックだ。肉まんあるかな?


「あれ? 高い……」


 あまりの値段に慄く。とてもじゃないけど怖くて頼めない。


「どうしたの? 食べたい物が無かった?」

「あ、あの、物凄くお高い気がするのですが……」

「ここはそこまで高い値段設定をしていないよ。どのページを見ているの?」


 モモ様に開いている所を見せると納得した様に頷く。


「そこに載っている物は佛跳牆ぶっちょうしょうと言って、この店で一番高いスープだよ。他のページを見てごらん。普通よりも少し高いだけだよ」


 ペラペラ捲ると確かに少し高いだけだ。あっ、肉まん! えっと、春巻きと餃子は――あった!


「失礼致します。お茶をお持ち致しました」


 茶色いというか黒っぽい感じで、ほうじ茶とは違う匂いだ。コーヒーみたいに苦いのだろうか? ちょこっと口を付けると口の中がさっぱりする。苦くなくて良かった。


「ご注文はお決まりですか?」

「ニコちゃん、頼んでいいよ」


 モモ様がそわそわしている僕に声を掛けてくれる。


「えっと、肉まん一個と春巻き二個と餃子一皿をお願いします」

「はい、畏まりました。――お次の方、どうぞ」


 シン様とセイさんはモモ様にお任せのようだ。クマちゃんはいつものように分けて貰うみたいだ。


「このコースをお願い出来るかな。ヴァンちゃんはどうするの?」

「俺は……エビマヨと角煮饅頭一個とゴマ団子」


 そう言えば、この前来た時にゴマ団子を随分と気に入ったようで、黙々と食べていたっけ。


「以上でよろしいですか?」

「ニコちゃんはデザート頼まないの?」


 これが美味しそうだよとシン様が見せてくれる。説明書きを見ると、白くてプルプルしているらしい。豆腐と書いてあるけど甘いお豆腐なのだろうか? お味噌汁に入っていた豆腐を思い出して首を傾げる。試しに頼んでみよう。


「あの、杏仁豆腐も下さい」

「食後にお持ち致しますか?」

「はい。それでお願いします」


 気になっていた物を全て注文出来たので、お部屋をぐるりと見渡す。ベランダがあるのか、大きなガラス扉がある。川を見ながら優雅に食事をするのだろうか? 僕が外の席に座っても、食べ物に夢中で景色なんて全く目に入らないだろうけど。


 おっ、この部屋にも壺がある。これはもう疑いようがない。桃の国の人は壺好きだ。モモ様にも聞いてみよう。


「モモ様はお気に入りの壺を持っているんですか?」

「壺? 私は壺を集める趣味はないよ。何故、そう思ったの?」


「あれ? 桃の国の方は壺好きじゃないんですか? そこら中に飾られていますよ」


「ああ、そういう事ね。桃の国は陶器作りが盛んだからね。最近は細かい模様や絵を描いた壺が人気だよ。そこら中に飾られているのは、こんなに良い物が作られていますよって自慢したいのだと思うよ」


 確かに僕も白族の村で作っている工芸品とかを自慢したくなるもんね。


今日はお財布に多めにお金を入れて来たニコちゃんですが、お高い料理にびっくりです。

食べられる値段で良かったですね。頼んだものが皮で包まれたものだらけです。

モモは壺よりもお茶やお菓子に興味があります。


次話は、料理がどんどん来ますよ!


お読み頂きありがとうございました。



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