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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0176.おしおき?

このお話からニコちゃんに視点が戻ります。


「ぜぇ、はぁ……。な、なんとか終わった……」

「……ぐふぅ」

 

 ヴァンちゃんはとっくに息が整っているのに、僕に合わせてくれているようだ。


「ぶはははっ。ヴァン、すげぇ棒読みだぞ」

 

 ヒョウキ様がケタケタ笑っている。ミナモ様もクスクス笑いながら腕章を僕の腕から外してくれる。


「お二人共、お疲れ様でした。大変申し訳ないのですが、明日も同じ状態か更に酷くなると予想されます」


「……ぐほぁっ」

 

 ヴァンちゃんの再度の口撃こうげきにヒョウキ様が声も無く机に突っ伏しプルプルしている。流石だ。何故あそこまで見事にツボを突けるのか。


「ぜぇ、はぁー……。そうなのですか。じゃあ、今日は桃の国で美味しい物を食べて英気を養って来ます」


「ふふっ、そうして下さい。お二人が元気になれるように、明日のおやつも料理長に頑張って頂きましょう」

 

 思わずヴァンちゃんとハイタッチする。また、シュークリームが出ないかなぁ。あれはこの世の至福が詰まっております……。


「ただいま。……ヒョウキ、随分と楽しそうじゃない。何だか腹が立つ……」

 

 疲れた顔をして戻って来たシン様が、ミナモ様の机の上にあるヴァンちゃん作のハリセンで、スパーーーンと小気味良い音をさせてヒョウキ様の頭を叩く。


「いってぇぇーーー! ちょ、ハリセンの威力じゃないって! 俺、頭抉れてない⁉」


「抉れていたら死んでいるよ。ヒョウキのアホ」

 

 冷たく言い捨てたシン様が僕達の側に来る。ハリセンは向こうに置いてきてくれないだろうか……。


「ヴァンちゃん、ごめんね。ハリセンがポッキリと折れちゃったよ。今度、もっと固くて丈夫な紙で作って貰える?」


「ん。良い物、作る」

 

 苦笑しているセイさんにハリセンを渡し、僕達をぎゅーっと抱き締める。


「はぁ、癒される……。このまま家に帰りたい……」

 

 そんなっ、僕のご飯と船が!


「シン様、ニコが泣く」

「えっ? あ~、大丈夫だよ、ちゃんと行くから。船もご飯も楽しんで来ようね」

「やったー! 肉まんだー!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ここで待ち合わせって言われたんだけど、居ないねぇ」

 

 船着き場でモモ様の姿を探してキョロキョロする。ピンクの髪の毛は……居た!


「シン様、居ましたよ!」

「ん? あっ、来た、来た」

「お待たせしてごめんね。出掛けにお婆様に捕まってしまってね。話が長くて困ってしまったよ」

 

 悲しそうに顔を曇らせて溜息を吐いている。ヴァンちゃんがポシポシと足を叩いてあげている。僕もポシってこよう。

 

 ポシポシ、ポシポシ、ポッシポッシ♪ 段々楽しくなってきて太鼓でも叩いているようにリズムを取る。体も揺らしながら叩いていると、上から笑い声が次々と降って来る。


「ふふふっ、可愛い」

「ふふっ、ニコちゃんノリノリだね」

 

 ひぃーっ、そこら中の人が見てるぅ! うわっ、わっ、何処か隠れる所……おっ、丁度いい物が! モモ様の上着は足首近くまであってスリットが入っているので、中にサッと入る。はぁ~、これで見られない……。


「ニコ、出て来る。ほーれ、チッチッチ」

「もうっ! ヴァンちゃん、僕は猫さんじゃないよ!」

 

 服を捲ると、しゃがんで待ち構えていたシン様と目が合う。


「つーかまえた。人の服の中に入っちゃいけません。分かったかな?」

 

 あ~、捕まってしまった。うぅ、これからお説教だろうか……。


「恥ずかしさのあまり、つい……ですね、咄嗟に……」

「入った方も入られた方も恥ずかしいでしょう。おしおき!」

 

 デコピンされてしまった。でも、痛くない。本気で怒っていないのかな?


「ふふふ。ズボンを下に穿いているから問題ないよ。いつでも隠れにおいで」

「こら、モモ、変な事を教えないの。――ほら、ヴァンちゃんも入ろうとしない」

 

 もそもそ入ろうとしていたヴァンちゃんが捕まる。「あ~……」と残念そうにしている姿に、怒ろうとしたシン様が笑ってしまう。


「もうっ、二人が相手だと本気で怒るのが難しすぎるよ。ヴァンちゃんもおしおき!」

 

 デコピンされたのに嬉しそうにしている。やはり痛くないようだ。


「いい? 僕は怒っているんだからね。――ヴァンちゃん、自分からおでこを近付けてこないの。あ~、もうっ、おしおき!」

 

 おしおきというよりご褒美なのでは? クマちゃんも興味津々でおでこを差し出す。


「クマちゃん、遊んでいる訳じゃないんだよ。……ほら、切なそうな顔をしないの。しょうがないなぁ、おしおき!」


「やったキュー。ヴァンちゃん達とお揃いキュ!」

 

 シン様がガックリしている。モモ様は笑いが止まらなくなってしまったらしく、苦しそうにお腹を押さえている。


「そろそろ行かないか? 見せ物のようになっているぞ」

 

 目線を上げると、立ち止まって僕達を微笑ましそうに見ている人達が周りを囲んでいた。ひょえぇぇ~! ビシッと固まった僕をモモ様が、顔を顰めたヴァンちゃんをセイさんが、クマちゃんはシン様に急いで抱っこされる。


「あの船に乗るよ。みんな、付いて来て」

 

 モモ様に誘導されて何艘か止まっている内の一艘に近付いて行く。


ヴァンちゃんは無表情で口撃していますが、受けが良かったので喜んでいます。

シンはハリセンに魔力を纏わせて使っているので、物凄い攻撃力になってます。抉れはしません(笑)。

でも、ニコちゃん達に痛い事は出来ないシンなのでした。みんな、喜んでしまった……。


次話は、船を楽しみます。


次の更新は「NICO & VAN(ヴァン視点)」の予定です。

お読み頂きありがとうございました。

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