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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0174.お目当てのクッキー(モモ視点)

お読み頂き、ありがとうございます。

途中でニコちゃんに視点が移り、次話はまたモモに視点が戻ります。

「ここかな?」

 

 『ブルーナ』という看板が掲げてある。外にいてもふわりと甘い匂いが鼻をくすぐる。


「多分……。お店の名前は聞いていないのキュ。でも、他にお菓子屋さんは見当たらないから、ここの筈キュ」

 

 白い壁に緑色の屋根の可愛らしい店だ。大きな窓ガラスから中がよく見える。男性も多いから甘過ぎないという事かな? 焦げ茶のドアを開けて中に入ると、お菓子の甘くて優しい匂いと、微かなお酒の匂いが身体を包む。


「モモしゃん、ここで間違いないのキュ。このレーズンサンドの箱に見覚えがあるのキュ。クッキーはどこでキュかね?」

 

 キョロキョロしているクマちゃんに気付いた店員が近付いて来る。


「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」


「こんにちはキュ。ナッツとチョコレートが沢山入ったクッキーを探しているのキュ」


「こちらにございます」

 

 レジの近くに積まれているクッキーを見て嬉しそうに手を叩いている。


「あったキュー! 念願のクッキーでキュ。ニコちゃん達が喜ぶのキュー。お姉さん、ありがとうなのキュ」

 

 店員と周りの客が、クマちゃんのはしゃぐ姿に柔らかく笑う。ここは何としてでも私が買ってあげたい。


「何個入りにするの? 一番大きいのにする?」

「他のお菓子も見たいのキュ。それから決めてもいいでキュか?」


「うん。そういえばレーズンサンドがって言っていたよね。クマちゃんのお薦め?」


「お酒が効いていて美味しいって、ミナモしゃんたちが言っていたのキュ。クマ達は酔うのを心配されて少ししか齧らせて貰えなかったのキュ」

 

 それだけお酒が強いという事か。それなら私はこれにしよう。目星をつけてから店内を巡る。この店はクッキーの種類が豊富だ。


「これが可愛いのキュ。ビー玉みたいな、まん丸クッキーでキュ。周りにかかっている粉もカラフルで可愛いのキュ」

 

 粉砂糖だろうか? 白にピンクに黄に黄緑などがある。クマちゃんが手に持っている姿を想像してみる。――これは絶対に買わないと。


「決めたのキュ。ラズベリーとレモンの味にするキュ。後はお目当てのクッキーの二十枚入りにするのキュ」

 

 籠に商品を入れてレジに向かう。このマドレーヌも買おうかな。


「モモしゃん、甘い物好きでキュか?」

「うん。ついつい手が伸びるよね。――これも美味しそう」

 

 小さなイチゴのパイも籠に入れる。リンゴジャムを挟んだクッキーもいいな。


「モキュキュ。モモしゃん、可愛いのキュ」

 

 びっくりしてクマちゃんを見るとニンマリとしている。


「可愛いなんて初めて言われたよ。私にそんな事を言うのはクマちゃんだけだと思うよ」


「そんな事ないのキュ。絶対にヴァンちゃん達も言うのキュ。お菓子を前に真剣に悩んでいて可愛いのキュ」

 

 冷酷、心がない、何を考えているのか分からないとはよく言われるけれど、私が可愛い? 城や一族の者達の口からは絶対に出てこない言葉だ。普段の私を知ったら、この子は離れていってしまうのだろうか? 黙り込んだ私にクマちゃんが慌てだす。


「モモしゃん、怒ったのキュか? そういえば、ニコちゃんもカッコイイって言われたいって言っていたのキュ。やっぱり男の子はカッコイイの方がいいでキュね。ごめんなさいでキュ」

 

 笑いが込み上げてくる。駄目だ、我慢できない。


「ふふっ、――ニコちゃんが――。ふふふっ、男の子って――」

「あれ、怒ってないのキュ? 何がツボだったのキュ?」

 

 ひとしきり笑って目尻の涙を拭い、困ったように私を見ているクマちゃんの頭をそっと撫でる。


「私は三十二歳だよ。男の子ではないかな」

「モキュ⁉ もっと若いかと思ってたでキュ」

「ふふっ、ありがとう。ニコちゃんはカッコイイって言われたいんだ?」


「そうなのキュ。ヴァンちゃんはいつも言われるのに、なぜ僕にはって嘆いていたのキュ」


「うーん……。どこからどう見ても可愛いよね」

「そうなのキュ。返答に困るのキュ。可愛い以外は有り得ないのキュ」

 

 断言されているけれど私もその意見に賛成する。ごめんね、ニコちゃんと心の中で謝りつつ、レジの列が短くなっている内に並ぶ。


「お待たせ致しました。レーズンサンドが二個で二百四十圓、マドレーヌ、イチゴパイがそれぞれ一個ずつで二百圓、ジャムクッキーが一袋で三百圓、スノーボールクッキーが二袋で六百圓、チョコナッツクッキーの二十枚入りが一箱で千九百圓。合計で三千二百四十圓となります」

 

 お金を出そうとするクマちゃんを止める。


「私がまとめて払うから、後でゆっくりと頂戴ね」

 

 素直に頷くクマちゃんに笑い掛けてから、支払いを済ませて店を後にする。城にはゆっくり歩いて行こう。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 すれ違う人にびっくりされながら廊下を走る。でも、今は構っていられないのだ。部長さ~ん、どこですか⁉ こっちに居るって聞いたんだけどなぁ……。


「あっ、居た! 部長さーーーん、お待ち下さーい!」

 

 大声で呼ぶと何故か一斉に振り返る。……おぅ、部長さんだらけだった。その中には城の中でよく会う、茶色の作業着を着て首にタオルを巻いたおじちゃんも居る。あの人も部長さんなのかな?

 

 えーと、産業部の部長さんの名前は何だっけ? 頑張れ、僕の頭! えーと、えーと……そうだ!


「ダイアナさ~ん、書類をお届けに来ました~」

 

 その瞬間、タオルのおじちゃんがダイアナさんの鼻に勢いよく自身のタオルを押し付ける。


「ふぐっ⁉」

 

 慌てて駆け寄ると、おじちゃんが押し付けたタオルが赤く染まっている。


「おら、しっかりしろ。全くお前は鼻血を出し過ぎだ」

「すみません。初めて名前を呼ばれた嬉しさで……うぅっ……」

 

 今度は泣き始め、赤く染まっていない端っこで涙を拭いている。他の部長さん達は慣れているのか、呆れたような目で見ている。そうだ、ぼーっとしている場合じゃない。


「すみません。サインをお願いします」

「あら、ごめんなさいね。――はい、お願いします」

「確かに。それでは失礼致します」

 

 急げ急げ! 次の時間指定だ~。


モモは甘い物をよく食べます。食べていると大抵、王様が欲しがるので多めに買って行きます。

モモも可愛いに一票です。ニコちゃんがカッコイイと言われる日が来るのか⁉ ん~、無いかな~(笑)。


部長さん、今日も鼻血です。ニコちゃんが動じなくなりました。鼻血は必ず出ると脳にインプットされていそうです。


次話は、みんなでおやつを食べます。


お読み頂きありがとうございました。


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