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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0171.戸惑う心(モモ視点)

 その後も小規模な店や品揃えが豊富な店、安いと評判の店を見て回る。一生懸命に見てはメモをする姿に癒される。ずっと見ていても飽きない。


「気になるお店はあった?」


「モキュー……。良いと思うと高くて、安いとイマイチなのキュ。アキラしゃんのお店が一番良いのキュ」


「アキラ?」


「ポンポコしゃんという闇の国の商人さんに紹介して貰ったのキュ。これから土の国で事業を拡大していくらしいのキュ」


「面白い名前だね」

「モキュ。緑色が大好きな人なのキュ」

 

 ある人物が頭に浮かぶ。確認してみようかな?


「お腹が出ていて、顔がツヤツヤな人かな?」

「そうキュ! 知っているでキュか?」

 

 本名はあまり大きな声で言わない方がいいのだろう。半円形の真っ白で可愛らしい小さな耳に唇を寄せて囁く。


「マンリョウでしょう?」

「正解でキュ! ニコちゃんから貰った飴をプレゼントでキュ」

「ふふっ、ありがとう。でも、いいの? 二つしかないみたいだけど」

「いいのキュ。ニコちゃんに一緒に食べるように言われたのキュ」

 

 嬉しさで頬が緩む。あの子が私を気にかけてくれた事に喜びが溢れる。私がこんな気持ちを持っているなんて思いもしなかった。


「次のお店に行く前にお昼にしない?」

「もうそんな時間でキュか」


「うん。滅多に来ないから美味しいお店を知らないのだけれど、町の人に聞いてみようか」


「クマが知っているでキュ。こっちでキュよ」

 

 クマちゃんに教えて貰った宿屋を目指して中央通りを進んで行く。馬車が結構通るし人も多い。お店を開くには良い場所だけれど、クマちゃんが一人で歩くには危険過ぎる場所だ。


「クマちゃん、一人でここまで来る時の移動手段を教えて」

「モキュ? 魔法道で来て馬車に乗るか、動物さん達にお願いする予定でキュ」

「動物さん?」


「そうなのキュ。土の国のお城で飼われている猫さんと仲良しなのキュ。乗せてくれるって言ってたのキュ」


「帰りはどうするの? 同じ猫さん?」


「クマのお店の近くに居る猫さんにお願いしてみるキュ。あっ、ここでキュ。ここでお店を開くのキュ」

 

 オーニングテントがあるだけで他は何もない。路地を覗くと確かに何匹も猫が居る。


「よぉ、クマちゃん。今日も偉いべっぴんさんと一緒だな」

「ゴンしゃん、こんにちはキュ。美人さんでキュ~。それにとっても良い匂いがするのキュ」

 

 嬉しそうに見上げられて自然と笑みが浮かぶ。そっと撫でてあげていると、肉屋の店主と思われる男性が手に何かを持ってやって来た。


「試食してって。今、揚がったばっかりのコロッケだよ」

「ありがとう。クマちゃん、お口を開けて」

 

 一生懸命にふーふーと冷まして小さな口で齧り付く。


「ホクホクでサクサクキュ」

「そうだろう。兄さんも食べとくれ」

 

 齧るとサクッと良い音がする。揚げたてはやはり美味しいな。ホクホクのじゃがいもに玉ねぎとひき肉も入っていて甘みを感じる。


「このソースも美味しいね」

「そのソースが、うちのコロッケに一番合うんだわ。他のも食べてみるかい?」

「うーん、どうしようかな……。クマちゃん、お昼はここにする?」

 

 宿屋と肉屋を交互に見て悩んでいる。見守っているとビシッと肉屋を指す。


「もっとコロッケを食べたいキュ」

「ふふっ。じゃあ、こちらね」


「嬉しいねぇ。腹いっぱい食べとくれ。兄さんはコロッケだけじゃ足りないだろう? 俺のお薦めの食べ方があるんだわ。向かいのパン屋で買ったパンに、うちのコロッケを挟むと最高だよ」

 

 楽しそうな提案に頷く。今度は私がクマちゃんに美味しいものを薦められるように、土の国のお店情報をもっと集めておこう。


「クマちゃん、買いに行こうね」

「キュー!」

 

 バンザイして喜ぶクマちゃんを目に焼き付けてから通りを渡る。


「モモしゃん、凄いキュ。避けるの上手キュ」

「そう? 褒めてくれて、ありがとう」

 

 私にとっては馬車を避ける事など容易いし、人間の動きなど止まっているように見える。幼い頃から当たり前のようにしていた事を褒められて戸惑いを覚える。


「いらっしゃいませ」

「あっ、クマちゃん!」

「キノ君、こんにちはでキュ」

 

 小さな男の子が嬉しそうに走り寄ってくるので、しゃがんであげる。


「パンを買いに来てくれたの?」

「そうなのキュ。お肉屋さんのコロッケを挟むのキュ」

「それじゃあ、バーガー用のパンを用意するわね。二つでいいかしら?」

 

 クマちゃんがモジモジとしながら私を見上げてくるので首を傾げる。


「あのでキュね、モモしゃんが嫌じゃなければ一個を分けて欲しいのキュ」

「勿論。一つ貰えるかな」

 

 私は正直な所、人と分け合って食べるのが嫌いだ。だが、クマちゃんとなら嫌悪を感じない。先程のコロッケでも、クマちゃんが口を付けた物を自然に食べてしまった。何故、私はここまで心を許しているのだろうか? 人間ではないからなのか……。


「お待たせしました。良かったら、表のベンチを使って下さい」


「ありがとう。一つ聞きたいのだけれど、この辺りに飲み物を売っているお店はある?」


「はい、ありますよ。肉屋さんの斜め向かいにあります」

「今だとスイカのジュースがおいしいよ」

 

 男の子にお薦めを教えて貰ったクマちゃんが、嬉しそうに体を左右に揺らしている。是非、飲ませてあげなければ。


「色々と教えてくれてありがとう。今から行ってみるよ」

「はい。ありがとうございました」


なかなか良いお店がありませんね。お昼の後に行くお店に期待です。

マンリョウは他国でも有名な商人で、緑色が大好きな事でも有名です。

クマちゃんは通りを渡るだけでも一苦労です。人の足が何本も凄い速さで動き、馬の巨大な蹄が側を通っていくので生きた心地がしないでしょうね。


次話は、ジュースを買いに行きます。


お読み頂きありがとうございました。

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