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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0169.誰に頼めば……

後半で少しだけシンの視点に変わります。

「マンリョウの所はどうだったの? 良いお店を紹介して貰えた?」


「見積もり依頼を纏めて出して貰ったのキュ。一週間後の同じ時間にまた行くのキュ。その間にクマも自分の目で何店か見てくるキュ」


「そう。明日、行くの?」

「モキュ」

「えっ、一人で行くんですか?」

「そうキュ。悪い人は捕まったって聞いたのキュ。だから――」

「一人は駄目だよ、クマちゃん」

「何でキュ? クマはそんなに信用が無いのキュか?」

 

 クマちゃんが傷付いた顔をしている。そんなクマちゃんの目をしっかりと見つめてシン様が諭す。


「そうじゃないよ。いいかい? 確かに悪い人は捕まったよ。でもね、そいつらに騙された人達も居る。どれだけの人数かは分からないけど、明日になったら、その人達が城や不動産屋に押し寄せると思う。暫く町がざわつく事は間違いないよ。特に土の国は被害が一番大きかった場所だからね」

 

 クマちゃんが口をぽかんと開けて聞いている。その可能性は全く考えていなかったのだろう。


「多分、ヴァン達も暫く忙しくなるだろうな」

 

 セイさんの言葉に頷く。書類が一気に増えそうだ。


「誰に頼めばいいのキュ?」

 

 クマちゃんが途方に暮れた顔をしている。うーん……誰かいないかなぁ。ミルンさんに依頼を出しても戦闘系の子が残っていないだろうし……。


「――シン、通信の鏡が光っているぞ」

「あれ、本当だ。誰だろう?」


「――こんばんは。急にごめんね。シンに頼まれていたお茶が手に入ったよ。明日、取りに来られるかな?」


「モモ、悪いね」

 

 予想外の人に驚いて鏡を覗き込む。本当にモモ様だ。仲良しになったのかな?


「ニコちゃん! こんばんは。今日も可愛いね。もっとお顔を見せて」

 

 ヴァンちゃんもクマちゃんを抱えて覗き込みに来た。シン様は苦笑し、モモ様は大喜びだ。あっ、そうだ!


「朱の一族に依頼を出せばいいのでは⁉」

「ああ、その手があった。でも、高そうじゃない?」

 

 確かに。一般の依頼も少しだけ受けていると聞いた事はあるけど、主なお客様は貴族の人達だろう。


「何の話? 詳しく聞かせて」

「土地の違法売買の話は聞いている?」

「うん。この国は被害が無かったけど、土の国は大変らしいね。……もしかして、クマちゃんに関係あるのかな?」

 

 鋭い。クマちゃんがコクコクと頷く。


「護衛と付き添いなら私がしてあげるよ。うちの一族は癖が強いから、純真なクマちゃんには刺激が強すぎるかな。特にお婆様に気に入られたら離して貰えなくなっちゃうよ」

 

 シン様が渋面になる。モモ様に癖が強いと言わせるなんて相当厄介なんじゃ……。


「宰相の仕事はいいの?」


「平気だよ。報酬はシンのお家で晩御飯を食べさせてくれる? ニコちゃんとヴァンちゃんとクマちゃんに囲まれて食事をしたいな」


「……お金を払うよ」

 

 この家は秘密にしておきたいのだろう。何か良い案がないものか……。


「俺、桃の国でご飯食べたい。この前、食べたかった物がまだまだある。それに、船に乗りたい」

 

 ヴァンちゃんの意見に僕とクマちゃんが激しく頷く。肉まん食べたい!


「うん、いいよ。船に乗って私のお薦めのお店に連れて行ってあげる。個室だから人目を気にせず食べられるよ」


「やったー! 肉まんに餃子に春巻き! 船だー!」

 

 はしゃいでいると全員に笑われてしまった。だって、気になっていたんだもん!


「クマちゃんの用事は一日掛かりなの?」

「一日はかからないと思うキュ。包材のお店の商品と価格を見たいのキュ」

「そう。お家に迎えに行けばいい?」


「モモ、魔国の魔法道に来てくれるかな。僕達がそこまで一緒だから」

「分かったよ。十時でいいかな?」

「それでお願いしまキュ」

「ふふっ。楽しみにしているね。みんな、おやすみ」

 

 ブンブン手を振ると蕩けるような笑みを浮かべて手を振り返してくれた。きっと、女性だったら失神していると思う。僕も一応言っておくべきか。


「キャー、モモ様、素敵!」

 

 我ながら酷い棒読みだなと思っていると、通信を切ったシン様と立ち上がろうとしていたセイさんが激しく噎せた。お茶が変な所に入ったのだろうか? 


 次こそは女の子になりきってみせる! と鼻息荒く拳を握って決意していると、ヴァンちゃんにぽむっと肩を叩かれ首を横に振られる。やはりヴァンちゃんの求めるレベルは高かったか……。


「裏声にした方がいい?」

「いつものニコがいい」

 

 そういう事かと笑顔で頷いていると、シン様達が「助かった……」と呟く。噎せ方が酷かったから辛かったのだろう。


「……どこまでも天然キュ」

 

 クマちゃんが遠い目をしながらポツリと言うと全員が頷く。何が天然?


「……あっ! オレンジジュースの事ですか? 搾り立ては美味しいですよね!」

 

 残りを一気に飲み干して、ぷはーっとしていると何とも言えない目で見られる。皆も飲みたかったのかな? 悪い事をしてしまったと思いつつコップを片付けに行く。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「……ねぇ、ヴァンちゃん」

「シン様、あれがニコ。深く考えちゃいけない」

「俺もいつか慣れる日が来るのか?」

 

 セイの問いにクマちゃんが無言で立ち尽くす。僕にも答えられないが一つ分かっている事――。


「あの子が居れば、これからも楽しい毎日がやって来るよ」

 

 全員で小さく笑い合っていると、片付け終わったニコちゃんが満面の笑みで僕の足に抱き付いて来た。そんなニコちゃんを抱き上げながら胸の内で語り掛ける。『カハル、早く戻っておいで。こんなにも楽しい毎日が待っているよ』、と――。


モモが護衛と付き添いをしてくれる事になりました。クマちゃん、良かったね。

ニコちゃんの凄さにヴァンちゃん以外がやられました。

その内、慣れます。ヴァンちゃんのように悟りが開けます(笑)。


次話は、モモと待ち合わせです。


お読み頂きありがとうございました。

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