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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0168.ロウ将軍にかかれ!

「こちらが訓練場です。ロウ将軍は――あっ、奥に居ます」

 

 僕達に気付いたロウ将軍が兵士さんの間をすり抜け、急いで来てくれた。


「ホノオ様、お久し振りです。どうされましたか?」

「悪い。俺と手合わせしてくれ。自分が情けなくて……」

「少々お待ち頂けますか? 兵士たちがそろそろ風呂や食事で居なくなりますから」

 

 頷いて壁際に寄るホノオ様を見上げると、視線に気付いたようで、しゃがみこんでくれる。


「どうかしたか?」


「あの、カハルちゃんも昔、魔法で失敗した事があるそうです。お肉をまっ黒焦げにして前髪も焦がしてしまったそうです。その後、猛特訓して自由自在に操れるようになったと聞きました。それに、魔法は失敗して覚えていくものだってシン様達も言っています。努力は自分を裏切らないと僕は思っていて……。偉そうに、すみません……」

 

 余りにも反応が無いので不安になってきた。怒っているのかな?


「……っ。ありがとう」

 

 急に抱き締められてびっくりする。聞き逃してしまいそうなほど小さな声だったけど、感謝を貰えたので良かった。だが、息が……。


「ホノオ、腕を少し緩めろ。ニコが苦しそうだ」

「セイ? うわっ、ニコ、ごめん!」

 

 息を大きく吸う。酸素さん、こんにちは! そして、ありがとう!


「心配になって来てみれば……。ニコちゃんは没収するよ」

 

 シン様に抱き上げられて顔を覗き込まれる。


「大丈夫?」

「はい。シン様も手合わせして貰うんですか?」

「僕はやらないよ。ヴァンちゃんがワクワクしているけど」

 

 セイさんに抱っこされたヴァンちゃんの目がキラキラだ。物凄く期待した顔をしている。


「本日の訓練はこれで終わりとする。解散」

「ありがとうございましたっ」

 

 兵士さんが会釈をしながら訓練場を出て行く。


「ホノオ様、お待たせ致しました。武器は何になさいますか?」

「剣を貸してくれ」

「では、こちらを」

 

 礼をして戦い始めたが、実力の差が歴然としている。腕が痺れている様だから、そろそろ剣が弾き飛ばされるだろう。


「――くっ」

 

 訓練用の剣が床に転がる。首筋にピタリと剣をあてられて、ホノオ様が悔しそうに唇を噛んでいる。


「次、頼む」

「はい。何度でも」

 

 この感じだと僕達と手合わせして貰うのは無理そうかな。ヴァンちゃんの目からキラキラが消えていく。


「ロウ将軍、悪いね。ちょっとだけ、この子達と手合わせしてあげて」

 

 ヴァンちゃんの様子に気付いたシン様が声を掛けると、ロウ将軍もホノオ様も頷いてくれる。おっ、ヴァンちゃんのシッポが再び振られ始めた。


「では、二人でおいで」

 

 ヴァンちゃんと頷き合い、ロウ将軍に襲い掛かる。次々と放つ攻撃を紙一重でかわされ、いなされる。だったら、前後から挟み撃ちだ。右の膝裏と左膝へ同時に蹴りを入れると、まるで後ろも見えているかのようにジャンプされ避けられてしまう。

 

 着地しようとする足に向かって更に蹴りを入れようとするが、剣の鞘で防がれる。だが、わずかにバランスが崩れたので、すかさず僕がズボンを後ろにグンッと引っ張り、ヴァンちゃんは顔に飛び掛かる。


「――おっと」

 

 顔面に張り付く前に、素早く伸ばされた腕で捕らえられてしまった。仰け反らせる事しか出来なかったのを悔しく思っていると、沢山の拍手が響いて驚く。見回すと兵士さん達が鈴なりで見ていた。いつの間にこんなに集まったの⁉


「ロウ将軍がバランスを崩す姿なんて初めて見たよ」

「二人掛かりだって、俺達すぐ負けちゃうもんな」

「何、あの子達⁉ すげぇ素早い!」

 

 興奮して喋る兵士さんに苦笑しながら、ロウ将軍が僕達の頭を撫でてくれる。


「良い訓練だった。また、おいで」

「「はい!」」

 

 嬉しい言葉に小躍りしそうになるが、シッポをフリフリだけで我慢だ。「次こそは一撃入れようね」とヴァンちゃんと頷き合う。

 

 順番を譲って貰った事にお礼を言おうとホノオ様を見ると、顔に明るさが少し戻っている。


「お前達を見ていたら俺も頑張ろうって思えた。ありがとな」

 

 照れくさそうにロウ将軍の所に行こうとするホノオ様の背中を、セイさんとシン様がバシッと叩く。


「頑張れよ」

「また明日ね」

 

 気合を入れられたホノオ様が姿勢を正して歩き始める。あの様子ならもう大丈夫そうだ。


「さぁ、クマちゃんを迎えに行って帰るよ」

「はーい」

 

 兵士さん達に見送られて賑やかな訓練場を後にした。


ヴァンちゃんがウキウキです。勝てなくても嬉しい二人でした。

去って行った兵士さんが、面白いのが見られるぞと仲間を呼んで戻って来ていたので鈴なりです。

今の自分の精一杯を出し切ればいいと思えたのでしょうね。頑張れ、ホノオ!


次話は、モモとお約束します。


お読み頂きありがとうございました。

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