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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0167.悔しさをバネに

「今回の事件は、営業許可証について土の国の産業部部長から気になる報告があったのが発端です。城の近くに不動産屋が増えたが、どういう訳か貴族院の許可証が多いというものでした。貴族院で発行されたものでも問題はないのですが、不動産屋に関しては産業部において特に厳しい審査を行った上で発行するのが通常です。他の国でも調べて貰った所、気になる店が何カ所か見つかりました」

 

 もしかして、クマちゃんが酷い目に遭ったお店だろうか? 不安になってヴァンちゃんの側に寄ると、手をギュッと握ってくれた。


「土の国に関しては、クマに聞いた店舗名とそれらが一致した。それと、銀行の支配人が気にしていたって教えてくれただろう。話を聞いてみたら銀行でも独自に調べていて、やけに金回りの良い怪しい奴が居ると教えて貰った」

 

 何だかドキドキしてきた。話の続きを固唾を呑んで聞く。


「それらの情報を合わせて私達が目星をつけた人物が居ましたが、もう少し証拠となる物が欲しかったのです。その時に、ニコちゃんが良い情報をくれました」


「もしかして、ケーキを頂いた時の話ですか?」

「そうです。闇の国の貴金属店にお話を伺った所、決定的な証拠を手に入れました」

 

 一体、何を手に入れたのだろう? ニッコリ微笑むと黙ってしまった。これ以上は教えてくれないのかな? 物凄く気になる……。


「……防犯の為の記録用水晶?」

「ヴァンちゃん、大正解です。口の軽い方達で非常に助かりました。個室だと油断したのが運の尽きですね」

 

 ヴァンちゃんがバンザイをしたので、手を繋いでいた僕も自動的にバンザイだ。ヴァンちゃんって頭がいいなぁと思わずニコニコしてしまう。嬉しいから、もう一回しておこう。バンザーイ!


「お前達がうひょひょさんと呼んでいる奴は、貴族院で営業許可証を出す役職に就いていた。自身が貴族だから紹介状も準備出来るしな。それで、数人の貴族や町の悪い奴等と手を組んで国の土地を違法な値段で売買していたんだ。通常は手数料だけだが、それにプラスして金がどんどん手に入る。楽しくてしょうがなかったんだろうな……」

 

 ヒョウキ様が恐ろしい表情になり空気が重く感じられる。抑えられた怒りが室内に満ちているようだ。


「今回の件は土地の価格は全て同じだと、民にしっかり伝わっていれば防げた事です。私は……悔しくて堪りません」

 

 ミナモ様が拳を強く握る。痛そうで思わず手の平で包み込むと、泣き笑いのような表情になってしまった。慌ててヴァンちゃんと一緒にミナモ様に登り頬擦りする。


「俺もだ。年齢が高い者は知っていたが若い世代はほとんど知らない。過ちを繰り返さない為にも周知徹底させるぞ」

 

 力強く頷いたミナモ様が、「クマちゃんにも改めて謝罪をしないといけませんね」と呟く。心配になって顔を覗き込むと、ふわりと笑ってくれた。


「落ち込むのはここまでです。私には解決できる力がありますし、この件に関しては挽回が出来ます。必ず良い事に変えてみせます」

 

 強い方だ。思わず澄んだ瞳に見入ってしまう。


「――俺、配達してくる」

「おや、もうそんな時間ですか。休憩時間を奪ってしまって申し訳ありません」


「いえ、僕達が聞きたかったのでお気になさらないで下さい。僕も行って来ますね」


「はい、お気を付けて」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ただいま」

「セイさん、お帰りなさい」

 

 わしゃわしゃと頭を撫でられてニンマリしていると、ホノオ様がトボトボと部屋に入って来る。


「……ただいま」

「お疲れ様でした。ホノオ様、大丈夫ですか?」

 

 随分と顔色が悪い。血の匂いはしないけど、怪我をしているのかな……。


「ミナモ、悪い。今日行った屋敷の壁を黒焦げにした。請求書は俺に回してくれるか?」


「予算内で落とせますから大丈夫ですよ。それよりも、お怪我はされていませんか?」


「ああ。俺は何ともない」

「それなら良かったです。明日もお願い致します」

「……俺でいいのか? 明日も迷惑を掛けるかもしれない」


「何、しけた事言ってんだ。お前は怪我せずに魔物を倒せばいいんだよ。嘆いている暇があったら鍛えて来い」

 

 下を向いていたホノオ様が勢いよく顔を上げる。


「ロウ将軍を借りてもいいか?」


「いいぞ。多分、訓練場に居ると思うから――って場所が分からないか。ニコ、悪いが連れて行ってやってくれ」


「はい。ホノオ様、参りましょう」

「あ、ああ」

 

 戸惑いながら付いて来るホノオ様を気にしながら歩を進め、廊下に出た所でシン様と出会う。


「ニコちゃん、ただいま。どこへ行くの?」

「訓練場です。ホノオ様をご案内したら、すぐに戻って来ますね」

「うん。気を付けて行くんだよ」


ニコちゃんのお手柄ですね。知らぬ間に重要情報を手に入れていました。

ヒョウキとミナモが決意です。この人達なら必ず挽回して良い未来を作ると確信して配達の続きです。

ホノオ、失敗です。まだまだ体も魔法の腕も成長途中です。


次話は、ロウ将軍と訓練です。


お読み頂きありがとうございました。

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