0166.教えて、ミナモ先生
「どこからお話しましょうかね……。少し外れた所からいきましょうか。イザルトに住んでいる生き物というのは全て数が決まっています。その数に達しているとデラボニアにいくら祈っても子供を得られません」
「えっ、そうなんですか⁉」
「はい。ヴァンちゃんも知らなかったようですね」
頷きながらヴァンちゃんがメモを取っている。僕も書いておこう。
「先生、質問」
「はい。ヴァンちゃん、どうぞ」
「俺は野生のデラボニアから産まれました。里と野生を合わせて数が決まっているのですか?」
「はい。その種族の全てのデラボニアです」
という事は数が少なかったら野生の子がいっぱい居るという事なのかな?
「ニコ、下限は決まっていないぞ。何かないとそこまで減りはしないけどな」
「絶滅しちゃうとかは無いのですか?」
「無いぞ。色々な守りがあるからな」
やっぱり王様だとふとした拍子に感じる。それにしても何故、僕の疑問が筒抜けなのか……。
「数が決まっているので成人した方達に平等に土地をお渡しできます」
「誰でも貰える広さは同じなのですか?」
「はい。貴族でも変わりませんよ」
おかしい。じゃあ、なんであんなに広いお屋敷を建てられるのだろう? ヴァンちゃんがぽんと手を叩く。
「買う?」
「そう、買うのです。貰っても必要が無い方は売ったり貸したり、他の方と交渉して交換して貰う事も出来ます。広さも値段も同じなので損する事はありません。これらの事は国の代理機関である不動産屋が主に行います」
はぁ、成程。確かに城に勤めている人だけじゃ処理できないだろう。
「はい、先生」
「どうぞ、ヴァンちゃん」
「土地を持っている人が亡くなったら、どうなりますか?」
「基本的には国に返却となります。ただし、細かい取り決めが色々とあります。少し例をあげましょうか。旦那さんが亡くなってしまった場合ですが、その土地には家があり、奥さんと未成年の子供が住んでいます。急に出て行けと言われたら困ってしまいますよね」
ヴァンちゃんと僕がしょんぼり頷くとヒョウキ様が苦笑する。
「例え話だからな。それに俺達は非道な事はしないから安心しろ」
「お二人共、優しい子ですからね。この場合、方法が幾つかあります。では、ニコちゃん。何か良い方法を考えて、このご家族を救ってあげて下さい」
必死に考える。路頭に迷わせる訳にはいかない。むーん……。あっ、そうだ!
「子供が貰う土地をお父さんの土地にすればいいのでは⁉」
「正解です。飴をあげましょう」
やった! しかも、僕が好きな白ブドウの飴だ。
「特例として未成年に土地を渡す場合は、大人達が勝手に売買など出来ないように仮の譲渡となり、成人した際に正式に権利書をお渡しする事となります。では、ヴァンちゃん、もう一つ考えてみて下さい」
「……奥さんの土地を代わりに返却する?」
「正解です。良く出来ました。ヴァンちゃんにはイチゴの飴をあげます」
嬉しそうに早速、口に入れている。
「冷たい言い方かもしれませんが、国としては亡くなった方が所有していたのと同じ広さの土地が返ってくれば何の問題もありませんからね。次に行く前に、先生役のヒョウキ様にも活躍して頂きましょうか」
「飴くれるか?」
「いいですよ。真面目にお願いしますね」
「よっしゃあ! 例えばさ、奥さんが自分の土地にお店を開いていて、子供も将来は自分の土地にお店を開きたいって考えていると、返却できる土地が無いだろ。そういう時は、次の土地の取得者になる者から買うか借りる。それか国に旦那の土地の使用料を払う事になる。それも払えないという状況でも困らないように色々と決まっているから安心していいぞ」
満足そうに頷いたミナモ様が真っ赤な包み紙の飴を差し出す。あっ、あの飴は凄く酸っぱいやつだ。眠気覚ましにいいと評判で、僕もお世話になった事がある。
「やった! いただきまーす。――ふぐぉっ、すっぱ! 何だよ、真面目に答えただろ⁉」
「何故、怒っているのですか? それは私の好きな飴なのですが」
「これが好きなのか⁉ めちゃくちゃ酸っぱいじゃん!」
よっぽど酸っぱいのか目をぎゅーっと瞑ったりしている。
「ヒョウキ様は酸っぱいものが苦手だったのですね。蜂蜜の飴をどうぞ」
口直しに食べるのかと思ったら、我慢できなかったようで蜂蜜の飴も口に放り込んでいる。
「ま、ましになった……」
ヒョウキ様の前にヴァンちゃんがお水を置いてあげている。微笑ましそうにそれを見たミナモ様が話し始める。
「土地を売った場合は届け出て貰います。この場合は亡くなった際に返却する必要がありません」
ふむふむ。その場合は買った人が返却するんだな。
「こういう風に土地って盛んに売買されたりしているから、不動産屋は結構重要なんだよ」
だから、銀行の支配人さんも、あんなに気にしていたのかもしれない。
「話は変わりますが、営業許可証は産業部で貰うのが一般的です。それ以外にも取得方法があるのはご存知ですか?」
「僕は知りません。ヴァンちゃん、知ってる?」
「んー、貴族院?」
「正解です。貴族がメインのお客様の店を開く方達が利用する事が多いですね。利用するには貴族の紹介状が必要となります」
ほぉー。僕とは縁遠い感じだ。
ミナモはヴァンちゃん達の好みの飴をしっかり把握していますね。
ヒョウキに対しては、お菓子なら何でも喜ぶから適当でいいかなと思ってます。
次話は、謎解きです。
お読み頂きありがとうございました。




