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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0163.お腹がたぷたぷ

「ほうじ茶をどうぞ」

 

 コトリと置かれた湯呑からいい匂いが広がる。ヴァンちゃんが早速、手に取る。


「茶色い」

「うん。でも、いつも飲んでいる緑茶と同じ葉っぱなんだよ」

「えっ、全然匂いが違いますよ⁉」

「そうだね。それだけじゃなくて、紅茶もウーロン茶も製法が違うだけで使われている葉っぱは同じなんだよ」

 

 びっくりしてお茶を見つめる。世の中は不思議で満ち溢れております。先に驚きから立ち直ったヴァンちゃんがお茶を啜る。


「……うまい」

 

 ニンマリしている。あれは相当気に入った顔だ。僕も飲んでみよう。


「香ばしくておいしいですね」

 

 皆でホッと一息吐く。癒されますのぉ。緑茶にある苦味と言えばいいのだろうか? それを感じない。


「ヴァンちゃん、そんなに鼻を近付けていると湿っちゃうよ?」

「ん?」

 

 シン様の指摘に顔を上げたヴァンちゃんの鼻は既に湿っている。シン様が笑いながらハンカチで鼻を拭ってあげている。


「好きなだけ飲んでいいよ」

 

 許可を得たヴァンちゃんは嬉しそうに鉄瓶のお湯を急須に注ぎ、大事そうに飲んでいる。


「沢庵もあげる」

 

 シン様からのサービスに目を瞠ったヴァンちゃんが、幸せそうに沢庵をちびっと齧りお茶を飲む。エンドレスだ。


「幸せそうな顔をしているな」

 

 お皿洗いを終えたセイさんがヴァンちゃんを見て目を細める。


「おじいちゃんみたいキュ」

 

 確かにと全員で頷く。僕達の会話もまるで聞こえていないのか、大事そうに湯呑を持っている。


「ヴァンちゃん、そんなに薄い色になったら味がしないでしょう? 茶葉を替えてあげるよ」


「もう要らない。お腹がたぷたぷ」

 

 シン様がどれどれと触っている。「凄い……」と呟いているのでお腹がポッコリ所ではないのだろう。ヴァンちゃんが片付けの為に立ち上がろうとすると慌てて止めている。


「あーっ、立っちゃ駄目! 僕が片付けるから。いい? 立っちゃ駄目だからね! トイレにも僕が運んであげる」

 

 座り直したヴァンちゃんが不思議そうにしながらも素直に頷く。満足気にお腹を撫でている姿を見たシン様が呟く。


「あ~、溢れちゃいそう……。ちょっと押したら全てが……いや、考えるのはよそう」

 

 興味を持ったクマちゃんとセイさんがそーっと触る。


「「‼」」

 

 二人共、ギョッとした顔をしている。えっへっへ、僕も触っちゃうぞ~。


「とりゃっ」

 

 僕の掛け声に、そこかしこから声にならない悲鳴が上がる。ぺたっと触ったお腹はパンパンに膨れ上がっていた。


「ヴァンちゃん、飲んだねぇ」

「うむ。うますぎた」

「もうちょい入りそう」

「そうか? そういえば、ニコはもっとパンパンになっている時があった」

 

 笑い合う僕達に信じられないという目が向けられる。


「ニコの腹が一番謎だ……」

 

 セイさんの呟きに全員が深く頷いた。なぜか、僕が不思議生物に認定された。解せぬ……。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「おはようございます」

「おぉ、よく来たのぉ。さぁ、お入り」

 

 馬車から降りると、ポンポコさん自らが迎えてくれた。今日も全身が緑ずくめだが、珍しく金の装飾品を付けている。いつも付けているエメラルドの指輪はどうしたのだろう? 大事な物だから肌身離さずって言っていたのに。――あっ、反対の手にあった。


 ホッとして顔を見上げる。昨日は血の気が引いていたけど、元気になったのかお肌がツヤツヤだ。


「おはようございまキュ。今日はよろしくお願いしまキュ」

「そんなに畏まらないでおくれ。ヴァンもよく来たのぉ」

「おはようございます」

 

 嬉しそうに頷いたポンポコさんの後に続き、庭を横切っていく。闇の国なので本来なら薄暗いはずだが、沢山の光球が浮いているので非常に明るい。流石、大金持ち。魔法使いの人をいっぱい雇っているのだろう。

 

 凄い! 池がある。思わず覗き込むと鯉が沢山泳いでいる。


「気になるのかい? ほれ、あそこに金色と銀色もおるわ」

 

 近付くと口をパクパクさせながら泳いで来る。


「餌を欲しがっておるのぉ。すまんの、持って来てくれるか」

「はい、ただいま」

 

 お屋敷の人がキャベツの硬い葉の部分を持って来た。これを食べるの?


「うちの鯉は野菜が好きなんじゃよ。ちぎってあげてごらん」

 

 ヴァンちゃんがブチっと豪快にちぎりクマちゃんに渡してあげる。


「ありがとキュ。――モキュッ!」

 

 クマちゃんが気合を込めて投げると、凄い勢いで鯉が集まって来た。


「いっぱい来たキュ。……まだ来るキュ。……まだ来るのキュ? まだ……モ、モキャーーーッ⁉」

 

 喜んで見ていると、予想以上に集まってきた鯉が鯉の上に乗り、とうとう池の外に飛び出した。目の前に落ちてきた鯉に驚いたクマちゃんが一目散に逃げて行く。


ヴァンちゃん、まったり、うっとりです。好きな者・物に囲まれて至福です。

シンが慌てる程のぽっこりお腹です。それの上をいったニコちゃんのお腹。不思議生物認定に決まってます(笑)。

クマちゃんにとっては巨大生物の鯉です。ガバッと口を開け、目を見開いた鯉が目の前に落ちてくるって物凄い恐怖ですよね。人間と襲い来るサメみたいな感じですかね。


次話は、お店についてマンリョウとお話します。


お読み頂きありがとうございました。

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