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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0160.ポンポコさん

「お願いしまキュ。紹介して下さいキュ」


「ああ、任せろ。闇の国の商人で、名前はマンリョウ。緑色が好きで服も家も緑だらけだ。商売をしたい者や芸術家などを支援するのが好きな奴だから、喜んで力を貸してくれるだろう」

 

 クマちゃんが嬉しそうに頷く姿を見ながら、ヴァンちゃんに気になる事を確認してみる。


「ヴァンちゃん。もしかして、いつも僕達を指名してくれるポンポコさんじゃない?」


「うむ。あの特徴はポンポコさんに違いない」

 

 皆が訝し気に僕達を見る。ヒョウキ様がペンで頭を掻きながら口を開く。


「それは名前か?」

「はい。そう呼んで欲しいって頼まれました」

「偽名かもしれませんよ」

 

 ミナモ様の言葉に皆が納得したように頷く。確かに大商人だから狙われやすいもんね。


「通信の鏡で呼び出せば同一人物か分かるだろう。――ダークだ。マンリョウ、出られるか?」


「――――ダーク様、お久し振りでございます。お元気そうで何よりですのぉ」

「お前もな。相変わらずツヤツヤした奴だ。また太ったんじゃないのか?」

「酷い事をおっしゃる。これでも少し痩せましたわい」

 

 お城にある大きな通信の鏡なので、僕達にも顔が見える。


「やっぱりポンポコさんだ」

「そうだね、ヴァンちゃん」

「うん? その声はヴァンとニコかな?」

 

 小さい声で喋ったけど聞こえていたようだ。相変わらずの地獄耳である。


「お久し振りです。いつもご指名頂き、ありがとうございます」

「おお、ニコ! 相変わらず可愛いのぉ。よく顔を見せておくれ」

 

 ヴァンちゃんがクマちゃんを抱っこして僕の横からひょいっと鏡を覗き込む。


「ポンポコさん、こんばんは」

「ヴァン! 久し振りだのぉ。おや? その腕に居る子は?」

「クマちゃん」

「そうか、熊なのか。名前は何というのだい?」

「? クマちゃん」

「おっと、名前がクマなのか。よろしく、儂の事はポンポコと呼んでおくれ」

「こんばんはでキュ。よろしくお願いしまキュ」

 

 ポンポコさんが満面の笑みを浮かべると立ち上がり、どこかに行ってしまう。


 クマちゃんが「おのれ、にゃんちんめ」と呟いているので、思わず噴き出してしまった。でも、クマちゃんはカハルちゃんに付けて貰った『クマ』という名前を案外気に入っているのではないかと僕は思う。


「おい、マンリョウ! 全く、あいつは……。本当にポンポコと呼ばせるんだな」

「僕達は本名を初めて知りました」

 

 ダーク様が呆れて溜息を吐く。


「あのオヤジは何を教え込んでいるんだ」

「ダーク様、聞こえておりますぞ。よいでしょう、ポンポコ。そもそもダーク様が狸親父とおっしゃったのが発端ですぞ」

 

 全員の視線がダーク様に突き刺さる。物凄く嫌そうな顔になったダーク様は話をサクサク進める事にしたようだ。


「あー……その、悪かった。それで、要件なんだがクマが土の国で花屋を開く事になったから手助けしてやってくれ」


「ほぉ?」

 

 ポンポコさんの目がギラリと光る。完全に獲物を見付けた目だ。クマちゃんが怯えてヴァンちゃんに抱き付く。商人モードになると優しい雰囲気が吹き飛ぶ時があるからなぁ。僕はもう慣れちゃったけど、クマちゃんにもこれから徐々に慣れて貰うしかない。後で、ポンポコさんの事を色々と教えてあげよう。


「では、我が家で一度詳しい話をしましょうかのぉ。ちょうど紹介したい若者がおりますわい。――こちらへ」


「アキラと申します。何卒よろしくお願い致します」

 

 緊張した顔の若い男の人が深々と頭を下げる。


「ああ、よろしく。マンリョウの秘蔵っ子か?」

「ええ。この子は貴族の次男坊でしてのぉ。土の国でこれから事業を拡大していくので、目を掛けてやって頂けますかのぉ」

 

 この人がクマちゃんのお店に必要な物を売ってくれるのかな? 僕の横を通り、鏡に近寄ったシン様の鋭い視線を受けてアキラさんがビクッとしている。


「僕はシン。クマちゃんの保護者だと思ってくれればいいよ。よろしくね?」

「――っ。よろしく……お願い致します」

 

 唾を無理やり飲み込んで言葉を絞り出している。きっと、畏怖を感じているのだろう。


「ほっほっほ。これは綺麗な方ですのぉ。儂もよろしくお願いしますぞ」

 

 ダーク様が面の皮が厚いなと呟いている。確かにと頷きそうになって慌てて止める。危なかった……。


「よろしく。今は僕がニコちゃんとヴァンちゃんを雇っているから、あの子達の保護者も兼ねているよ。過保護なのは分かっているけれど、利用するのは許さないよ。――――――――」

 

 急に音が聞こえなくなった。驚いて見回すとヴァンちゃんとクマちゃんもびっくりしている。僕だけじゃない事にホッとする。


「すまん。結界の札に触ってしまった。驚かせたな」

 

 ダーク様が僕達を撫でてくれる。耳が聞こえなくなってしまった訳じゃなくて良かった~。

 

 鏡に視線を戻すとアキラさんが真っ青な顔をしている。具合が悪いみたいだとポンポコさんに伝えようとすると、こちらも珍しく血の気が引いている。何にも動じない様な人なのにどうしたのだろう?


ポンポコ……。可愛らしい名前はダークの所為でした(笑)。

なかなか侮れない人物ですね。シンにも余裕の返しです。


次話は、シンがやらかします。


お読み頂きありがとうございました。

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