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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0156.モテる男は辛いのだ

「コケッ⁉」

「ココココケッ⁉」

 

 ニワトリさんが色めき立ち、ダーク様が寄って行くのに合わせて、ぽっかりと空間が開く。


「これは嫌われているのか?」

「いいえ、違います。恥ずかしがっているんです」

「何に?」

「ダーク様がカッコよすぎる」

 

 ヴァンちゃんの言葉にニワトリさんが高速で頷く。必死さがちょっと面白い。首がグキッとなってしまいそうだ。


「黒髪の男が好きなのか?」

 

 ダーク様が不思議そうにしているので、近くに居たニワトリさんに尋ねてみる。手羽根をこすり合わせてモジモジとしながら、「すべてがかっこいい」との返答を貰った。ニワトリさん達の好みのど真ん中らしい。


「ニワトリさんに愛される男」

「ヴァン、何だそれは……。で、何と言っているんだ?」

「ヴァンちゃんが言った通りです。ね?」

 

 ニワトリさんが恥ずかしそうに手羽根で顔を隠す。ダーク様が喜んでいいのか分からずに複雑そうな顔をしている。


「あー……卵を貰いたいんだが」

 

 ニワトリさんがピクッと反応し、ダーク様をぐるりと円く囲み一斉に卵を差し出す。見事なチームワークだ。


「……悪いな。六個でいいんだ」

 

 ニワトリさんが一斉に僕を見る。ビクッとしていると口々に「好みの子から貰うように言って!」と通訳を頼まれる。ふぇーん、怖いよぉ。ヴァンちゃん、助けて~。


 振り返ると、ヴァンちゃんは輪に加わっていない尾羽が一本だけ金色のニワトリさんを撫でている。駄目だ、仲良くしているのを引き離すなんて出来ない。ニワトリさんの目力に負けて渋々と口を開く。


「ダーク様、好みの子の卵を選んで欲しいそうです」

「そう言われてもな。今日会ったばかりだぞ?」

 

 ダーク様が困ったようにニワトリさんを見回している。ニワトリさんを愛で終わったヴァンちゃんがトコトコとやって来た。


「卵貰えた?」

「まだなんだよ。選ぶのって難しいよね……」

 

 あらましを説明するとヴァンちゃんがあっさりと答えをくれた。


「ダーク様の後ろに一列に並んで貰って、何番目がいいか言って貰えばいい。それなら不公平にならない」


「成程! ダーク様、見ないようにして下さいね」

「ああ」

「ニワトリさん、並んで下さーい」

 

 ヴァンちゃんの提案に「それ、いいわね」と言いながら並んでいく。


「ダーク様、準備出来ました。一から十二の間でお願いします」

「了解。言うぞ。一、三、七、九、十一、十二」

 

 ヴァンちゃんと手分けして受け取っていく。喜びと悲しみの落差が激しい。振り向いたダーク様が苦笑する。


「誰から貰ったかはっきりと分かるな。しょうがない……」

 

 ダーク様が卵を貰わなかったニワトリさんの背中を撫でて回る。これは果たして、どちらが幸せなのだろうか? 完全に目がハートになっているニワトリさん達を残し家に帰る。何だか疲れた……。


「ただいま」

「ダーク達、お帰り。何かあったの? 凄く疲れているみたいだけど」

 

 その後、話を聞いたシン様は楽しそうに笑い、ダーク様は溜息を吐いていた。モテる男は辛いのだ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 今日はお城で働く方達のお子さんが城見学に来る日だ。朝からメイド長さんが忙しそうに準備をしている。


「クマちゃんは結局、出し物をするんですか?」


「しないキュよ。ミナモしゃんが危険だから絶対にやっちゃ駄目って言っていたキュ」


「ニコとヴァンも接待係りになってくれないか?」

「嫌だ」

 

 ヴァンちゃんが即答した。表情が強張ってしまった理由を知っている僕は、ヴァンちゃんの背中を撫でてあげる。


「えっ、何で? ちょっとだけでも駄目か?」

 

 下を向いてしまったヴァンちゃんに何かを感じたのか、ミナモ様とヒョウキ様が顔を見合わせる。


「ヴァンちゃん、今日も配達をよろしくお願いしますね」

「……行って来ます」

「はい、お気を付けて」

 

 ヴァンちゃんを送り出し、ミナモ様が僕を呼ぶ。


「何か理由がある様ですが教えて頂けませんか? ヴァンちゃんに直接聞いた方がいいでしょうか?」

 

 理由を教えればちゃんと配慮してくれるだろう。ヴァンちゃんも必要なら話して構わないと言ってくれているし……。よし、話そう。


「ヴァンちゃんがいつも頭に何かを被っているのはご存知ですか?」

「ええ。帽子やバンダナをしていますね」

「帽子とかが好きなのかと思っていたんだが違うのか?」


「違います。ヴァンちゃんは十一歳の時に、耳を同い年の人間の子供にグイグイと引っ張られて腫れあがってしまった事があるんです。僕達の耳はとても繊細な器官なので相当に痛かったと思います」

 

 お二人が痛ましげな顔をする。ミナモ様が躊躇いがちに口を開く。


「聞こえなくなってしまった訳ではないのですよね?」


「はい。ですが、ヴァンちゃんは子供を見ると身構えるようになってしまいました。なので、帽子をプレゼントしてみた所、耳が見えなくなって安心したのか落ち着きを取り戻したんです」


「そうだったのですか……。今も被っているという事は心の傷は癒えていないという事ですよね?」


「はい……。ミルンさんも子供が居るお家には絶対にヴァンちゃんを派遣しません。あっ、でも、このまえ心境の変化があったようで、初めて耳を触って貰いたい人が現れたと僕に教えてくれたんです」


「へぇ、良かったじゃん。それって、もしかしてカハルか?」


「僕もそうなんじゃないかなぁと思っています。恥ずかしそうにしていたので、それ以上は聞かなかったんですけど」

 

 お二人が明るい顔に戻って喜んでくれている。心優しいこの方達が国のトップで良かったと心底思う。ミナモ様が表情を改めて僕を見る。


「ヴァンちゃんと子供たちが接触しないように十分気を付けます。申し訳ありませんが、お昼は食堂で召し上がって下さい。ヴァンちゃんにも伝えておきますね」


「はい、分かりました。じゃあ、僕も配達をしてきますね」


「お願いしますね。十五時には終了していますので、おやつは一緒に食べましょう」

 

 笑顔のミナモ様に見送られて魔法道へ走って行く。今日もバリバリ働くぞー。


ニワトリさん、グイグイ迫ります。ニコちゃんとダークがその勢いにぐったりです。

ヴァンちゃんのトラウマです。ミルンはカハルに心を開いているのを知っていたので、シンの依頼を受けました。


次話は、食堂でご飯です。


登場人物がだいぶ増えてきたので、人物紹介などをまとめてみました。一番上にUPします。


これからも「NICO&VAN」をよろしくお願い致します。

お読み頂きありがとうございました。


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