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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0153.うな重

「ふはぁ~、いい匂い……」

 

 ダーク様が炭を入れていた四角い場所で、串に刺された平べったい何かをセイさんが焼いている。あの茶色のタレがいい匂いの元らしい。ふらふらと近寄って行くとセイさんが苦笑する。


「ニコ、あまり近寄ると折角風呂に入ったのに匂いが付くぞ」

 

 タレを付けて炭火の上に置くとジューッと良い音がして匂いがブワッと広がる。これは絶対においしいと確信する。クマちゃんがゴキュッと唾を飲み込んでいる横で僕も涎注意報だ。


「シン様、桶どこ? 鰻は食べない?」

「え? ヴァンちゃん、それが鰻だよ」

 

 ヴァンちゃんがびっくりしたように焼いている物を見つめる。これがあのウネウネしていたやつなの? すっかり見た目が違う。セイさんがひっくり返すと名残があった。皮の表面にあったヌメヌメはすっかりなくなっているようだ。


「食べ物になった……」

 

 ヴァンちゃんの呟きにシン様が笑う。


「ふふっ。おいしそうになったでしょう? うな重と言って、ご飯の上に載っけて食べるんだよ。蒸してあるから柔らかいよ」

 

 何回引き離されても近寄ってしまうので、最終的にダーク様に抱っこされて家に入れられてしまった。はぁ、いい匂い……。炭火と甘辛いタレの組み合わせで生み出される匂いは、それだけでご飯が食べられそうな気がする。


 台所に居るシン様を見ていると、ツヤツヤした小さめの黒い箱を用意している。中も朱色で綺麗だけど食器なのかな? と思っているとご飯を入れている。


「焼けたぞ」

「ありがとう、セイ」

 

 ご飯の上にタレをかけて鰻を載せている。テンションが上がって立ち上がろうとすると、ダーク様にがっちりと抑えられる。


「ニコ、待て。お前はおっちょこちょいだから大人しく座っていろ。クマもどさくさに紛れて抜け出そうとするんじゃない」

 

 ぶーぶーと抗議する僕達の頭に、ダーク様が顎を載せてグリグリと動かしてくる。


「痛い、痛いです!」

「モッキキュー!」

 

 クマちゃんの変な悲鳴に笑いながらシン様が器を置いてゆく。あれ? 蓋がしてあって中身が見えない。そーっと手を伸ばして開けようとすると、ダーク様が耳にフッと息を吹きかけてきた。


「ほにょーーーっ⁉」

「くくくっ。面白い反応だな。勝手に開けるとシンに怒られるぞ」

 

 ヴァンちゃんだけは運ぶ手伝いをしている。何故、あの誘惑に勝てるのか不思議でしょうがない。


「ニコちゃんとクマちゃん、お待たせ。念願のご飯だよ」

「やったーーー! さぁ、ダーク様離して下さい。ご飯ですよぉ」

「どうするかな?」

 

 ニヤリとして僕を見る。これは、ま、まさかのお預け⁉


「うわーん、嫌です! 絶対に食べます!」

「そうキュ! 初の鰻でキュよ!」

 

 クマちゃんも必死に訴えている。どうかご慈悲を~。


「しょうがない、解放してやるか。ほら、食べろ。急いで食べて喉に詰まらせるなよ?」

 

 高速でブンブンと頷いて、いただきますをしてから蓋を開ける。ブワッと広がった匂いに笑み崩れる。何て事だ! 大きい身でご飯が全く見えない。


 美味しそうな色に染まった鰻に箸を入れると、身は柔らかく簡単に切れる。下のタレが掛かったご飯と共に口に放り込む。


「ふにょー……。おいしい……」

「……柔らかキュー」

 

 うっとりとする僕達の横ではヴァンちゃんが黙々と食べている。器を離さないので相当気に入ったのだろう。


 蒸してあるからなのか小骨の様なものもあるけど全然気にならない。それに、炭で焼かれているから香ばしくて食欲が増す。夢中でガツガツと食べていたけど、量が少なくなってきたので惜しみながら口に運ぶ。鰻を最初に食べようとした人、ありがとう!

 

 感激しながら食べていると、シン様が鰻に何かを振りかけている。更に美味しくする魔法の粉⁉


「シン様、それは何ですか?」

「これは山椒だよ。ニコちゃん達は辛いのが苦手だから止めておこうね」

 

 魔法の粉じゃなかったようだ。セイさんはかけていないようだから、シン様は辛い物が好きなのかも?

 

 ダーク様の方を見ると僕達のお吸い物にはないものが入っている。何だろう? 覗き込むと不思議な形状だ。


「シン様、これは何ですか?」

「うん? ああ、それは内臓だよ。一個しかないから、一番働き詰めのダークにあげたんだよ」

 

 内臓さんでしたか……。ダーク様が大事に食べます。手を合わせて拝むとダーク様が苦笑する。


「ニコ、物凄く食べにくいんだが……。感謝して食べるから許せ」

 

 完食して満足そうに口の周りにご飯粒とタレをくっつけたヴァンちゃんが覗きに来る。


「俺にも見せ……て………………」

 

 無言になってしまった。知らなければ不思議な形で済んだけど、僕達は正体を知ってしまった。シッポを垂らして静かに席に戻って行くヴァンちゃんを見送っている間に、ダーク様は食べてしまったようだ。内臓さんが内臓さんに吸収された……。

 

 物悲しい気分を切り替えて残りを完食する。うん、最後の一粒までおいしい。


「タレだけでご飯が進みますね」

「そうだね。タレだけなら残っているけど、ご飯にかけて食べる?」

「いえ、もう満腹です。また一つ罪な味を知ってしまった……」

「――ごふっ」

 

 セイさんが噎せた。背中を撫でてあげよう。プルプルしているけど大丈夫かな? シン様も湯呑が揺れているけど寒いのだろうか?


「ニコと居ると退屈しないな」

 

 ダーク様が微笑みながらお茶を飲んでいる。何故、そのような感想が出て来たのだろうか?


「――ごほっ。はぁ……ダークは慣れているのか?」

「そうだな。だいぶ耐性がついたぞ。二人共、天然だしな」

「そうか……」

 

 セイさんが何かを納得した。複雑そうな表情をして僕の頭を撫でてくれる。背中を撫でてあげたお礼だろうか?


 マイペースに食べ終えたクマちゃんが満足気にお腹を撫でている。舐めたように綺麗になっている器を見れば、いかに気に入ったのかがよく分かる。


鰻がやっと食べ物として認識されました。魔物じゃないよ(笑)。

匂いの誘惑に耐えられないので、ダークががっちり拘束です。

内臓はダークのお腹におさまりました。ニコちゃん達は絶対に食べようとしなそうですね。


次話は、ババ抜きをして遊びます。


お読み頂きありがとうございました。

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