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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
151/390

0150.黄色がお似合いです

「あ、あそこのお店に綺麗な鞄がありますよ。刺繍でしょうか?」


「ん? ああ、あれはこの国独特の刺繍だよ。色遣いが鮮やかでしょう。見に行く?」


「はい、お願いします」

 

 良かった、何とか気を逸らせた。でも、気になったのは本当である。


「モモ様、いらっしゃいませ。皆様、ようこそおいで下さいました。ゆっくりとご覧下さい」

 

 モモ様は軽く頷き、店内を巡る。


「これなんかニコちゃんに良さそう。大き過ぎるかな?」

 

 あてがってくれたポシェットはドランゴンさんの図柄で、赤や緑や黄色と原色がふんだんに使ってある。よくこんな派手な色で上手く纏められるなぁ。


「それを持っていたら、遠くからでもニコがどこに居るのか分かりそう」

「そうだね。迷子防止になりそう」

 

 シン様達、そこは似合うねと言って欲しかった。ガクッと項垂れた僕をモモ様が優しく撫でてくれる。くーっ、良い人だ。


「これなど、お似合いかと」

 

 クマちゃんは黄色の布地に白いお花が刺繍されている巾着を勧められている。あんなに小さな巾着があるんだ。普通は何を入れるのだろう? 説明書きは――ああ、貴金属を入れるのか。


「綺麗キュ。でも、紫や緑も素敵なのキュ」

「どうぞ、お試し下さい」

 

 鏡の前であてがって貰っている。うーん、黄色が一番似合っている気がする。


「私が記念に買ってあげる。何色がいいの? 私は黄色が一番似合っているかなと思ったけど」


「モキュ⁉ 申し訳ないキュ。自分で買うキュ」


「クマちゃん、買ってもらいなよ。心配しなくても宰相をしているくらいだから平気だと思うよ」


「うん、シン様の言う通りだよ。私はお給料を沢山貰っているから平気だよ。クマちゃんの為に使わせてほしいな。きっとお金さんも喜んでくれるよ」

 

 クマちゃんが困ったように僕とヴァンちゃんを見るので、手助けする事にする。


「クマちゃんは何色がいいですか? 僕も黄色が一番似合うなぁと思いました。ヴァンちゃんは?」


「俺も黄色が一押し」

「そうキュ? クマも黄色好きキュ。紐もオレンジで可愛いキュ」

「モモ様、これでお願いします」

「うん。店主、これを包んでくれる?」

「はい、畏まりました」

「ま、待ってキュ。お金はクマが……」

 

 ヴァンちゃんが全部を言わせずに抱き上げて店外に運ぶ。


「クマちゃん、こういう時は『ありがとう』って言えばいいんだよ。何かしてあげたいと思ったモモの気持ちを大事にしてあげて。クマちゃんがモモの立場だったら悲しくなっちゃうでしょう?」

 

 シン様の言葉にジタバタしていたクマちゃんが大人しくなる。


「クマちゃん、お待たせ。はい、どうぞ。大事に使ってくれると嬉しいな」


「モモしゃん、ありがとうでキュ。大事にするキュ。――さっきは断ってごめんなさいキュ。逆の立場だったら受け取って欲しいってクマも思うでキュ」


「ふふふ。クマちゃんは素直で良い子だね。私の気持ちを考えてくれて嬉しいよ。よしよし」

 

 頭を撫でられてクマちゃんがはにかんでいる。あー、可愛い。そう思ったのは僕だけではないらしく、側に居たお客さんや店員さんが笑み崩れている。更に蕩けそうな笑みを浮かべたモモ様の影響で女性が失神した。恐るべし、魔性の微笑み。

 

 シン様がこの状況に危機を覚えたのか僕達を目線で促す。あちらに逃走ですね。了解です! シン様がクマちゃんを抱き上げ、僕はモモ様の服の裾を引っ張って誘導する。それ、逃げろ~。



 石畳の道を歩いて行く。絵画や陶器や刺繍などを扱う店が暫く並び、道を逸れると服を扱う店が多く並んでいる。


「ここの国の服は僕達が普段着ている物とは違いますね。色も鮮やかです」


「そうだね。私は見慣れてしまって違和感はないのだけれど、他国の人は派手で驚くみたいだね」


「モモ様は地味?」

 

 ヴァンちゃんが不思議そうにモモ様の服をペタペタと触っている。確かに色は派手じゃないけど、光沢がありサラサラした肌触りは非常にお高そうだ。刺繍も綺麗だし。


「そうだね。私に原色は似合わないから着ないね。淡い色の方が好きだしね」

 

 白に近いほどの薄い紫色の生地で、袖はゆったりとしていて丈は足首近くまである。肩から腰辺りまでと裾に草花が刺繍されていて、その下にズボンを履いている。靴も同じ布で出来ているのか刺繍が施されていた。


「でも、モモが着たらどれでも目立ちそうだけどね」

「ふふふ。シン様こそ目立つ容姿だから大変そう」

 

 何だろう……。笑い合っているのに激しい火花が散っている気がする。


「僕はわざわざ隠さないよ。カハルが僕の容姿を大好きだと言ってくれたからね」

「カハル? シン様の恋人?」

「違うよ、僕の娘。というか様付きで呼ぶのを止めてくれる?」

「敬意を表していただけだよ。シンは娘が居たの? 年下かと思っていたよ」


「僕は四十八だけど、モモは何歳なの?」

「私は三十二歳だよ。外見が若すぎじゃない? もしかして魔力が強いの?」

「そうだよ。今はこの外見で止めてある」

 

 モモ様が「どれだけ強いのさ……」と呟いている。魔力が強いとそんな事も出来ちゃうの? じゃあ、カハルちゃんが大きくなったり小さくなったりするのも、やっぱり魔力の影響なんだ。ヴァンちゃんもぽむっと手を叩いているので、僕と同じように理由が分かってスッキリしたのだろう。


「ねぇ、もしかして自由自在に変えられるの?」

「ご想像にお任せするよ。そこのお菓子を見てもいい?」

「……どうぞ。でも、その先のお店の方が甘すぎなくてお薦めだよ」

 

 モモ様が疲れた様に目元を手で覆っている。

遠慮し過ぎて相手を悲しませちゃう事もありますね。

勇気を出して席を譲った時とかも、「いえいえ、すぐですから」と遠慮する心優しき人。

この人、良い人なんだなぁと思うと同時に、恥ずかしいなぁや断られてシュンとしてしまう自分も居るんですよね。すぐでもいいから遠慮せず座ってね、良い人! その後にまた自分座りますんで(笑)。


モモが段々とシンに押されてきている(笑)。何か似てますね、この二人。


次話は、お菓子を選びます。


お読み頂きありがとうございました。


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