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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0148.朱の一族

「君達は気にしないでお食べ。それは熱々のうちに食べた方が美味しいよ。ねぇ、シン様?」

 

 無視することにしたのか、クマちゃんにスープを飲ませてあげている。気まずい……。黙々と食べながら少し悲しくなる。折角の楽しい休日の筈なのに、何故こんな事になっているのだろう?


「……あの、僕はこんなギスギスしたのは嫌です。誤解し合っているだけかもしれませんし、ちゃんとお話しましょう?」


「ニコちゃん……。ごめんね、僕が台無しにしちゃったね。ヴァンちゃんとクマちゃんもごめんね」

 

 モモ様がふわりと笑って僕を抱き締める。


「君は良い子だね。私にも謝罪させて。皆、ごめんね。私には色々と良くない噂があってね。ねぇ、シン様は結界を張れる? 周りに聞かれたくないんだよ」

 

 頷いてシン様が指をパチンと鳴らす。


「喋っても大丈夫だよ」


「ありがとう。噂の代表的な物を教えるね。一つ目は世紀の女たらしという物だよ。今では更に尾ひれがついて男も見境なくだなんて言われているよ。二つ目は悪辣で血も涙もない処刑人だってさ。後は気に入ったものは何としてでも手に入れるとか、人を攫って閉じ込めているとか散々だよ。シン様が聞いたのもこんな所でしょう?」

 

 頷いて嫌そうに口を開く。


「噂が真実かもしれないし嘘かもしれない。でも、僕にはどちらでも関係ないんだよ。この子達を守れればそれでいい。楽しく過ごせるように悪影響になりそうなものは排除する。それだけだよ。……失敗して僕が嫌な気分にさせちゃったけどね」

 

 ヴァンちゃんとクマちゃんが落ち込むシン様にベタッと抱き着く。


「……許してくれるの?」


「ん。親心が少し暴走しただけ。大事に想ってもらえて嬉しい。でも、俺達もシン様が大事。相談受付中」


「そうでキュ。絶賛うけちゅけうでキュ」

 

 クマちゃんが噛んでしまった恥ずかしさで、シン様の服に埋もれる。


「ふふふ、可愛い」

「そうでしょう。うちの子達は本当に可愛いよ。クマちゃん、頭をグリグリされるとくすぐったいよ」

 

 クマちゃんのお蔭で場が和んだ。これでお互いに話しやすくなったのではないだろうか。


「噂はわざとそのままにしているものもあるし、一部だけが事実のものもあるよ。私は人嫌いだから、自分からわざわざ誰かを近くに招き入れるなんてしないよ。この外見の所為か誤解を受けやすいけれどね。実際は一人でのんびりと本を読んだり、散歩したり食べ歩くのが好きだよ」


「あれ、でも僕達を相席にしてくれましたよね?」


「だって、困っている子は助けてあげないと。私はこれでも宰相だよ。民は大事にしないとね。それに人を見る目には自信があるよ」

 

 茶目っ気たっぷりのウィンクに周りの人達がざわめく。何だか中身と外見のギャップが凄い人だ。見た目は遊び人な感じで、退廃的な感じと色気が凄い。鈍い僕ですら色気があると思う位だから、他の人なんて間近で微笑まれたら一溜りもないだろう。


「処刑人というのは何処から来ているんだい?」

「現王になる際に後継者争いが激しかったのは知っている?」


「ああ、確か兄と争ったと聞いたね。父親が優秀な方に継がせるって言ったのでしょう?」


「そう。でも実際の所は、前王は兄に継がせたい。周りの者達は現王に継がせたいと思っていてね」

 

 そういえば聞いた事があるな。お兄さんの方は浪費家で女癖も悪くて、政務もまともにこなせないけど王様が溺愛していて、弟は物凄く優秀だけど言動が王族らしくないって。でも、民の人気が高いらしい。


「私は幼い頃から現王と仲良くさせて貰っているから宰相を頼まれちゃったけど、私の一族は王を陰から守るのが仕事でね。跡目争いの時も散々、命を狙って来る者達を捕らえたし、即位後にも王族や貴族なんて関係なく悪い奴等を一掃したから、方々の恨みを買っているね。今でも時々、襲って来る者がいるよ。――ふふふ。政務で強張った体を解すのにちょうど良い運動になっているけどね」

 

 シン様が嫌そうな顔をしながらも納得したようだ。噂というものは嘘が非常に多いから、きちんと事実確認が必要だと改めて感じる。さっき、わざと残しているものがあると言っていたのは、油断させたり、自分は手強いのだと相手に思わせる為なのだろう。


 それにしても、ここまで話してくれるとは。もしかして、シン様の正体を知っているのだろうか?


(あけ)の一族?」


「おや、ヴァンちゃん、よく知っているね。当然か……。君達は白族だものね。この前、ミルンに王の護衛の為に白族の子を貸してと打診したら断わられてしまったよ。朱の一族がいる土地に白族が必要な訳がないでしょうって。でも、調査員の子がその前に来ていたから、まだまだこの国は危険だと思われたのかもしれないね」

 

 調査員に気付いたのか……。流石は朱の一族だ。今まで白族の調査員が見付かってしまった事は一度もないのに。


「みんな気付いた?」

「ううん、私だけだよ。といっても残像で判断したに過ぎないけどね。是非とも私の一族に勧誘したいよ。間近で見たらこんなに可愛いしね」

 

 嬉しそうに抱き締められる。シン様の目が恐ろしいので止めて下さい。


「ヴァンちゃん、モモが強いって分かって嬉しいのは分かるけど落ち着いて。机に乗り出し過ぎだよ。ほら、こっちおいで」

 

 ヴァンちゃんが無意識に、にじり寄っている。きっと、手合わせして貰いたいのだろう。シン様がひょいっと持ち上げて膝に座り直させている。


散々な噂です。シンが警戒してピリピリするのも当然ですが、少し失敗しちゃいましたね。

ちゃんと分かってくれる子達で一安心です。

ヴァンちゃんは強い人が好きですね~。無意識で近寄って行きます。


次話は、川べりをプラプラします。


お読み頂きありがとうございました。


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