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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0145.ほら、付いて来た

「さて、そろそろ行こうか。フェイ、お薦めの場所に連れて行ってくれる?」


「はい、畏まりました。まずは、ヴァンちゃん達が興味を持っていたフォルタルを見にいきましょうか」


「行く!」

 

 ヴァンちゃんがノリノリで椅子から飛び降りる。よっぽど嬉しいのかシッポのパタパタが止まらない。


「ふふっ。今度はヴァンちゃんがフェイに抱っこして貰うといいよ。ニコちゃん、おいで」

 

 クマちゃんと仲良く抱っこされて外に向かう。怖いけど、今度はちゃんと目を開けて見ておこう。薄っすらと黄金に光る球体に包まれたシン様が天井に向かって飛んでいく。ぶつかると思った瞬間にはマグマの中に居た。オレンジ色に輝く粘度が高そうな液体の中を突っ切って行く。

 

 フェイさんの方を見ると、赤い球体に身を包み翼の一振りであっという間に高みに登って行く。それを見たシン様もグングンとスピードを上げ、とうとうマグマの外に出る。

 

 遥か下になってしまった山を見ながら空を進んで行く。この世の終わりの景色と評される場所だけある。流れるマグマと黒い大地、大小さまざまな形の山と灰や煙。人間が一歩踏み込んだら、ものの数分で息が吸えなくなりそうだ。

 

 先を行っていたフェイさんが何かを見付けたのか戻って来る。


「シン様、先に海の方へ行きましょう。今なら面白い物が見られます」

「了解。二人共、ちゃんと掴まっていてね」

 

 一気に速度を上げ海に向かう。ビュンビュン通り過ぎる景色の中にも緑はない。植物すら育たたないとは恐ろしい限りだ。


「見えました。大地と海の境目を見ていて下さい」

 

 海に流れ込んだマグマが海水に冷やされ、真っ白な蒸気がブワッと視界を覆う。あー、見えなくなっちゃった……。


「落ち込まないで。僕が見えるようにしてあげるよ」

 

 シン様の風の魔法でみるみる蒸気が流されていく。広がった視界の中で赤々としていたマグマが海で冷やされ真っ黒に変わっていく。飽きることなく見ていて、ふと気付く。


「あれ? 土地が広がっているという事ですか?」

「一時的にはね。夜明けと共に元の大きさに戻るよ。イザルトという世界の大きさはしっかりと決まっているからね」

 

 ほへぇー。そんな決まりがあるのか。それも、創造主たるカハルちゃんが決めた事の一つなのだろうか? 一緒に居たら聞けたのになぁ。


 熱心に見入っていたクマちゃんが僕の方を向く。


「マグマがずっとダバダバ流れ出している所は、波に飲み込まれても赤々としたままでキュね」


「そうですね。よっぽど高温なんでしょうねぇ」


 微笑んで僕達の様子を見ていたフェイさんが、ふっと真剣な表情になる。


「シン様、そろそろ移動しましょう。この近くの山が噴火しそうです」

「おや、大変だ。フェイの山まで移動の魔法で行くよ」

 

 僕達がしっかり掴まったのを確認してシン様が魔法を発動する。到着した山の頂では悲しそうにフレアさんが三角座りをしている。火口に転げ落ちないか心配だ。


「……蹴り落とそうか」

 

 シン様の本気とも冗談ともつかない言葉にクマちゃんと顔を引き攣らせる。その時、背後で山が噴火し轟音が響く。その音に驚いたフレアさんが蹴り落とすまでもなくバランスを崩し、悲鳴を上げながら火口にゴロゴロと転げ落ちて行く。あ~、あんな所に座っているから……。

 

 ボチャンとマグマに落ちた瞬間、フレアさんが発光して巨大な赤竜へと変化すると、翼をバッサバッサと動かしてこちらに向かってくる。畏怖に打たれる僕達の前まで来ると、人型に変化して胸を撫で下ろしている。


「あー、びっくりした。思わず竜になっちゃったよ。あの、シン様? 冷たい目で見るのは止めて頂けないでしょうか?」


 鼻でフンと嗤い、シン様が僕達を覗き込む。


「ニコちゃん達、いいかな? こんなのが竜だと思っちゃいけないよ。本当は誇り高くて格好良い生き物なんだよ。あんな無様に転げ落ちるなんて論外だからね」

 

 畏怖は彼方に消えてしまったので、ほぉほぉと頷いていると、フレアさんが半泣きになりながらフェイさんに抱き付く。あっ、邪険に振り払われた。何だかヒョウキ様を彷彿とさせる人だ。


「お前は石が飛んでこないように見張っていろ。この方達が被害に遭わないように細心の注意を払え」


「えー、俺も一緒に行かせてよ。お薦めスポットを案内するよ。昼寝するのに良い岩とか、竜がよく集まっている場所とか――」


「それでは、フォルタルを見に行きましょう」

 

 フェイさんは言葉の途中で容赦なく背を向け、地面へと下りて行く。僕とクマちゃんがフレアさんに手を振ると、悲しげな顔は満面の笑みに変わった。何とも感情豊かなドラゴンさんだ。


「甘やかさなくていいよ。あー、ほら、付いて来た」

 

 シン様の視線を追うと、コソコソと岩に隠れながら付いて来る。隠れるのが下手でほとんど丸見えだ。いや、わざとなのかな?



ニコちゃん、今度はちゃんと目を開けてマグマの中を確認です。

マグマの中は作者の想像ですが、実際はどんな感じですかね? 目なんて開けていられない色かも?

フレアが見事に落っこちましたね~。期待を裏切らず、

フェイに雑に扱われても、めげないタフガイ(笑)です。


次話は、ドラゴンの好きな食べ物です。


お読み頂きありがとうございました。

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