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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0144.フェイさんのお宅訪問

 シン様の腕に抱っこされて空中に浮いている。恐る恐る下を見ると、マグマが川のように大地を流れ、そこら中でボコボコと弾けている。思わずシン様の服をギュッと握る。


「大丈夫だよ、絶対に離さないから。それに結界があるから、例えマグマの中に落ちても平気だよ。取り敢えずフェイの所に行こうか」

 

 羽根も無いのに空中を滑るように移動していく。風の魔法なのだろうか?


「見てごらん。あそこにある山がフェイの家だよ」

 

 ゴツゴツしているけど、プリンの様に綺麗な形の山だ。でも、火口はマグマで満たされている。あんな状態で住めるのだろうか? 疑問に思っていると、前方から人型でドラゴンの翼を生やしたフェイさんが向かって来る。


「――シン様? おや、白族の子達も一緒ですか」

「やぁ、フェイ。急にごめんね。この後は時間あるかな?」

「はい、ございます。たった今、見回りが済んだ所です。よろしければ私の家にお立ち寄り下さい」

 

 頷いたシン様が、フェイさんに僕を渡す。


「しっかり抱っこして貰えた方が安心でしょ。フェイ、よろしくね」

「はい、お任せ下さい」

 

 力強い腕に抱っこされて、フェイさんの胸に背を預けると非常に落ち着く。ヴァンちゃんとクマちゃんは興味津々でずっと下を見ているけど、怖くはないのだろうか?


「では、参りましょうか」

 

 フェイさんはにこやかに告げると、火口に向かって勢いよく飛んで行く。グングンと迫って来るマグマに毛が逆立つ。えっ、ちょっ、何をするおつもりで⁉ 


「う~~そ~~‼ うわぁぁぁぁっ⁉」


 眼前に迫る恐ろしさに目をギュッとつぶる。ドプンという音を聞いて僕は終わりを予感する。うぅ、もう駄目だ……。だが、覚悟を決めても一向に熱さがやって来ない。


「ニコちゃん、着きましたよ」

 

 フェイさんの声に薄目を開ける。僕はまだ生きているのだろうか?


「…………あれ?」

 

 マグマは無く、必要最低限の物が置かれている部屋の中だった。呆然としているとシン様達もやって来た。


「到着キュー」

「不思議空間……」

 

 ヴァンちゃんが呟いた後に天井を見ている。つられて見てみるがゴツゴツした岩があるだけだ。マグマはどこにいったのだろう?


「すみません。椅子が二脚しかございません。ベッドに座って頂いてもよろしいですか?」

 

 僕が頷くとそっと降ろされる。「お茶を入れて来ます」とフェイさんが行ってしまったので、あちこち見回してみる。


 本が好きなのか棚にぎっしりと詰まっている。床は滑らかだけど、他はゴツゴツとした岩肌のままだ。窓が無いけど外はどうなっているのだろう?


「ヴァンちゃんは目をつぶらなかった? ここって、さっきの山なの?」

「うむ。マグマの中心らしい。マグマの中を進んでいたら急にこの場所に出た」

「えっ……」

 

 徐々に溶けてしまうのではないかと想像していると、フェイさんが戻って来た。


「どうぞ」

「ありがとうございます……」

「ココアは嫌いですか?」


「いえ、違います。マグマの中にあると聞いたのですが、溶けないのでしょうか?」


「すみません、シン様からお聞き及びかと思っておりました。でしたら、先程は非常に怖がらせてしまいましたね。申し訳ありません」

 

 僕の手を取り真摯に謝ってくれるフェイさんの肩に、シン様が手を置く。


「僕の所為でもあるよ。ニコちゃん、ごめんね。僕はフェイが説明するかなと思って省いちゃったんだよ。そりゃあ、悲鳴も上げるよね」

 

 どうやらお互いに説明していると思っていたようだ。ヴァンちゃんも僕の悲鳴に合点がいったのか、ふむと頷いている。


「では、私から改めてご説明させて頂きます。ここは先程の山のマグマの中心部分に位置します。マグマの中に大きな岩の塊があるとお考え頂ければ分かり易いかと思います」


「僕達はその岩の中に居るという事ですか?」


「はい。私は火のドラゴンですから、マグマの中に空間を作る事はさほど難しい事ではございません。溶けるという事もありませんから、ご心配には及びません」

 

 ほっと胸を撫で下ろす。カハルちゃんと出会ってから僕の毎日は驚きの連続だ。頑張れ、僕の心臓。


 貰ったココアを飲みながら一息ついていると、元気な声と共に人が現れる。


「お邪魔するよーって、お客さん? 珍しいね。どうも、こんにちは。フェイの親友のフレアでーす。よろしく~」


「誰が親友だ。ニコちゃんから手を離せ」

 

 僕の手を握りブンブンと握手するフレアさんを引き剥がし、フェイさんが申し訳なさそうな顔をする。


「すみません、今すぐ追い出しますから。――出て行け」

「うわー、冷たい。じゃあ、こっちの可愛いクマちゃんを抱っこ――うぉわっ、シン様⁉」

 

 今まで目に入っていなかったのか仰け反っている。


「うちの子達にベタベタしないでくれる?」

「うっ、わっ……す、すみません!」

 

 慌てて逃げると、フェイさんを盾にしている。


「離れろ。私はこれからシン様達とインフェテラを一緒に回るから、お前の相手は出来ない」


「えっ、楽しそうじゃん! 俺も案内係するよ。いいだろ?」

 

 フェイさんが深く溜息を吐き、面倒臭いのを隠しもせずにフレアさんの襟首を掴むとポイっと空中に放り投げる。一瞬、チラッとマグマが部屋の中に見えたかと思うと、悲鳴を上げながらフレアさんが消える。


 クマちゃんが「キュッ⁉」と小さく声を上げ、僕とヴァンちゃんは居なくなった場所を凝視する。


「お騒がせしました。ニコちゃん達、ご心配には及びません。あいつも火のドラゴンですから火傷一つ負いません」

 

 何だ、ドラゴンさんだったのか……。あんな軽い感じのドラゴンさんも居るのだなぁと思いながら、ココアを飲み干す。


マグマに飛び込むとか気絶しますよ。ニコちゃん、悲鳴だけです。強いですね~。

時々ある誰かが説明したと思っているパターンですね。確認大事。

陽気、おこりんぼ、物静かなど、人間と同じように色々なドラゴンが居ます。


次話は、インフェテラの面白い物を見に行きます。


お読み頂きありがとうございました。

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