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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0139.白族の認定証の威力

 用紙を行員さんに渡して戻って来た支配人さんが、クマちゃんに質問していく。


「お店はどの辺りに開かれるのでしょうか?」


「中央通りにある宿屋さんの裏手でキュ。パン屋さんとお肉屋さんが近くにあるでキュ」


「ああ、あの元気な女将さんの所ですね。確か露天商の方が退いたと……」

「そうでキュ。クレセント不動産で紹介して貰ったのキュ」


「そうでしたか。クレセントさんなら安心ですね。城の近くの不動産屋での事は本当に申し訳ございません。同じ土の国の者としてお詫び申し上げます」


「い、いいのキュ。支配人さんの所為じゃないキュ」


「ですが、不動産屋とは国の代わりに土地を売買する代理機関です。いわば城の官吏と変わらない様なものなのです。それが横暴な態度を取るとは信じられません。きっと、王たちの不興を買う事でしょう……」

 

 実は既に宰相様達が激怒していますとは言えない。銀行も国の事業で同じような立場だから、余計に憤りを感じているのかもしれない。


「申し訳ございません。少し感情的になってしまいました。資金の方でお困りでしたら、認定証をお持ちなので審査なしで即日、融資が可能ですよ」


「モキャッ⁉ 審査なしでキュか? これってそんなに凄い物なのキュ⁉」

「はい。喉から手が出る程に欲しいと思っている方もいます。――失礼、少々席を外します」

 

 行員さんに呼ばれて部屋から出て行く支配人さんを見送り、クマちゃんに向き直る。


「えへへ、驚きました? それを持つという事は厳しい審査を潜り抜け、白族が仕えるに値する人物という証明になり、絶大な社会的信頼を得る事ができます。それにより、支配人さんがおっしゃったような銀行の融資や高位な方々への面会などが可能になります。クマちゃんは庶民ですけど、それすらも障害にはなりません」

 

 驚きで口をパクパクするクマちゃんをニンマリと見つめる。ふっふっふ、驚いているぞ~。例え王族だとしても、優れた人間性や将来性などを感じられなければ白族は絶対に仕えない。だが、その中でも特に厳しい目を持つミルンさんが、クマちゃんには太鼓判を押したのだ。


 見る人が見れば分かるが、クマちゃんの認定証は特別仕様になっている。通常はミルンさんのサインやハンコなど無いのだ。どれだけ期待されているか分かろうというものである。


「い、いつ、審査されたキュ? 何の覚えもないキュ」

「僕とヴァンちゃんが報告書を出しました」

「いつの間にでキュ⁉」


「地下のお花を見せて貰って直ぐに。それほどの可能性をクマちゃんに感じたんです。青い薔薇の時も追加で報告しておきましたよ。僕とヴァンちゃんは調査員を務められるように教育も受けているので問題なしです。あっ、勝手にやった事を怒っていますか?」

 

 クマちゃんがブンブンと首を横に振る。


「感謝しかないでキュ。ニコちゃん、ありがとキュ~」

 

 抱き付いて頭をグリグリと押し付けて来る。可愛い~。ナデナデ。


「失礼します。おや、これは可愛らしい光景だ」

「ハッ、見られてたでキュ! 恥ずかしいキューーー!」

 

 支配人さんと一緒に無言でクマちゃんを愛でる。顔を手で覆って恥ずかしがっている姿も良いですな。暫く愛でた後に、クマちゃんを撫でて落ち着かせる。よしよし。


「こちらがクマ様の通帳となります。ご確認下さい」

「――大丈夫でキュ。初通帳、嬉しいキュ」


「当行が初とは嬉しい限りです。話は変わりますが、釣銭や売上はどのようにされますか? よろしければ当行のサービスをご案内致します」


「お願いしまキュ」


「はい。釣銭は毎朝、決まった時間にお届けする事が出来ます。毎日ではなくても良いという場合は、こちらの用紙に日付や枚数をご記入して頂き、毎週金曜日の十二時迄にご提出下さい。専門の行員がお届けに上がります。よくある例と致しましては、釣銭をお渡しし、売上をお預かりするという流れですね。クマ様はいかが致しましょう?」


「開店の日付がまだ決まっていないでキュ。でも、店舗がないキュから、毎日釣銭を貰って売上を運んで貰えると安心キュ。少額でも大丈夫でキュか?」


「はい、問題ございません。あの辺り一帯の店舗も同じように当行をご利用頂いておりますので、一緒にお持ちしますね」

 

 確かに一店舗だけ少額を届けたりして貰うのは気がひけるけど、周りに配るついでのような感じだったらサービスも受けやすい。といっても、クマちゃんは大口顧客になると思うけど。


「開店日が決まったらお知らせに来まキュ。窓口に来ればいいでキュか?」

「私が直接ご対応致しますよ。居ない場合は副支配人がご対応致します」

「そ、そうでキュか。ありがとうでキュ」

 

 偉い人ばかりでクマちゃんの顔が引き攣る。僕としては現場の事もよく分かっていて、決定権を持っている人が対応してくれる方がスピーディーで良いと思うけど。でも、時々現場泣かせのお偉いさんも居るからなぁ。でも、この人は細かく把握しているみたいだから安心だ。


「それでは今後も当行をよろしくお願い致します。本日はお越し頂き、誠にありがとうございました」

 

 ありがとうございますと僕達も深々と頭を下げる。兵士さんを大分お待たせしてしまった。急がなければ。



「すみません、お待たせしました」


「いえいえ、私が勝手にしている事なのでお気になさらず。次はどこに向かわれますか?」


「お城の売店に行きたいでキュ」

「城ですか。そろそろ交替の時間なので一緒に行きましょう」

 

 あれ? 兵士さんの人数が増えている。この時間はこの人数なのかな? 安全度が増すからいいか。それよりも気になる事を質問だ。


「クマちゃんは一人で来た時、どうやって移動したんですか? 馬車に乗ってですか?」


「モキュ? 魔法道を出て歩いていたら、兵士さんが門まで連れて行ってくれたでキュ。その後も巡回の兵士さんがタイミング良く来てくれたり、優しい女の人が現れたりして、クマの行きたい所まで連れて行ってくれたでキュ。皆、扉も開けてくれたから本当に助かったでキュ。その点では運が良かったのキュ。ありがたいキュ」

 

 本当に運が良かっただけなのだろうか? 何だか土の国の人は近寄って来ようとする人が多いし、視線が熱をはらんでいる気がする。う~ん……。


クマちゃん、期待されていますね~。

知らぬ間に事が着々と運ばれていました。ニコ&ヴァンちゃん、グッジョブです。


次話は、お土産を買います。


お読み頂きありがとうございました。

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